【長編・完結】この冒険者、何者?〜騎士さまと噂の冒険者は全てを見通す目と耳をお持ちです〜

BBやっこ

文字の大きさ
上 下
33 / 47

周る

しおりを挟む
店主はこちらを一瞥して、読書に戻る。こういった店にはこれで十分、許可が出た事を意味する。

棚が並び、背より高い場所にも本が並ぶ。床はコツコツと冷たく硬い石のようで一応の掃除はしてある。
埃が積もらなければ良いとばかりに角隅に埃があるが、本は綺麗だった。

人の気配は店主以外は、ないな。

寒いと感じるのは、地下だからかあ穴蔵のように細長い奥が続くせいか。
それでも、本が並ぶ様子に期待が湧き上がる。

ゆっくり本の背を目で追う。

誰かの書いた研究書
料理の作り方
植物図鑑が続く

本を書く余裕のある貴族や、冒険者に向けた本。研究者が発表の形として出した物もあった。
本の出版はかなり以前の物か。

シリーズもの、誰だか知らない名前の著者。紙の状態に注意をしつつ、一冊を出してみる。

魔導具の研究、野菜の切り方。
ちょっと、希望する内容とは違ったので戻す。

値段らしき字が時おりあるのを流し見て、本の森を奥に進む。

妖精が集っている本もあるが、魔術の本は触らないことにする。
碌なことがない。

罠であるか、怪しい魔術の類の事もある。


料理の本に突入し、コーヒーの淹れ方に使う食器類の記載。
これは珍しいな。殆どが紅茶に関する本の中で見つかった。

南のコーヒー豆を栽培する地に足を踏み入れた旅人の話か。甘い物の話もあったのでこれを買う事にする。

他に何か、読み物系統が欲しいと歩を進めればリンが姿を現していた。
少女が居ても、店主は気づかないか?

妖精がいて気配が紛れるのか、興味がないのかもな。)

本は、魔術的な物と親しみが深い。

魔力の根源とされる魔素、その属性に左右される妖精。力を蓄えた精霊の一歩手前の存在。
どちらも、魔術には関心が向くのだろう。

風があちこちに移動しているようだが、読書という興味の形ではないようだ。
楽しそうだし、読書の邪魔になってないようなので粗相がなければそのままにする。

たまに本のページがパラパラと捲れても、破損するほどではない。強化や保護の魔術がある上、盗難防止の術が敷かれているのだろう。


それらに力を貸す妖精も居て、静寂が心地よい。
(良い場所だな。)

清浄さと循環のある森のようなところ。緑はないが、本がその役割をして妖精の寝床となる。
妖精達の邪魔をしないように、ゆっくり動く。


旅行記の本を見つけ、どれかを買っていく事に決めた。
パラリパラリと、気になった本を見ていく。


この街には図書館などもあるんだったか。教会と一緒になっているかもしれないが。
そちらにも顔を出してみようかと頭の隅で記憶して、本を選ぶのに集中するのだった。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ダンジョンチケット

夏カボチャ
ファンタジー
1話5分のファンタジー。 ある少年の夏休みはふとした瞬間から次元を越える! 大切な者を守りたいそう願う少年 主人公の拓武が自分が誰なのか、そしてどうすればいいのか、力のあるものと無いもの、 その先にある真実を拓武は自分の手で掴むことが出来るのか 読んでいただければとても嬉しいです。((o(^∇^)o))

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜

白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。 舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。 王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。 「ヒナコのノートを汚したな!」 「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」 小説家になろう様でも投稿しています。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです

ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。 転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。 前世の記憶を頼りに善悪等を判断。 貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。 2人の兄と、私と、弟と母。 母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。 ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。 前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生無双の金属支配者《メタルマスター》

芍薬甘草湯
ファンタジー
 異世界【エウロパ】の少年アウルムは辺境の村の少年だったが、とある事件をきっかけに前世の記憶が蘇る。蘇った記憶とは現代日本の記憶。それと共に新しいスキル【金属支配】に目覚める。  成長したアウルムは冒険の旅へ。  そこで巻き起こる田舎者特有の非常識な勘違いと現代日本の記憶とスキルで多方面に無双するテンプレファンタジーです。 (ハーレム展開はありません、と以前は記載しましたがご指摘があり様々なご意見を伺ったところ当作品はハーレムに該当するようです。申し訳ありませんでした)  お時間ありましたら読んでやってください。  感想や誤字報告なんかも気軽に送っていただけるとありがたいです。 同作者の完結作品「転生の水神様〜使える魔法は水属性のみだが最強です〜」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/743079207/901553269 も良かったら読んでみてくださいませ。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

処理中です...