【長編・完結】この冒険者、何者?〜騎士さまと噂の冒険者は全てを見通す目と耳をお持ちです〜

BBやっこ

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道行けば

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馬車は順調に走った。

「毎日通ってりゃ、魔物が出ても問題ねえ」

頼もしい御者の隣に座っているクリスは、風が報せる魔物は…

兎型、犬型、鼠型と小型の魔物が多い。しかも魔物避けの香の効果か遠ざかって行く。
冒険者としてのクリスの出番はなく、話し相手と決まった。

“魔物とは魔に憑かれたモノ”

魔力が、凝り固まってできると考えられている。制御ができれば、それは魔法の一分野として扱われ、その源流はダンジョンと呼ばれる場所から漏れ出る。

「冒険者はその凝りを散らす役割があるのだと。」
「なんだか肩凝りみたいな話だな」

馭者は笑っているが、魔力も循環しているとするなら滞りが解消できるように刺激を与える。
(的を射ている言葉かもな。)

冒険者は嫌がりそうだが。とにかく、格好をつけたい職業なのだ。


4台ほど逆方向、町に行く馬車とすれ違う。軽く挨拶を交わして通り抜けて行った。
「この時間なら、余裕のある冒険者か流しの商人かなあ。」

慌てた様子もなく、荷物の方も詰め込んではいない。

日も登りきるこの時刻なら、移動の選択肢を決められる馬車が通るのだそうだ。
カツカツの冒険者は毎日、依頼の争奪戦を繰り広げる。

割の良い依頼、臨時で組む相手も顔見知りが多くなっていく。稼げる冒険者になるのはひと握りだ。

そう思いを馳せているクリスは、どう見ても”懐が潤っていて街に繰り出す男“だった。その職業は、貴族のお忍びか、騎士の休日か。気紛れに依頼を受ける冒険者、など酔狂な人物しかいない。

(この御方、どういう人なんだろうか?)

色んな人を見ている馭者でさえ、定まらない。商人では無さそうだとは思った。

(どうも、自身の利を優先する性格では無さそうで頼りにするには、底が分からん。)


とりあえず、味方にもなり利がある事や危険を教えてくれる。それなら、旅のお供に最適な御方だろう。
この短い道行きにも、楽しい話し相手だった。


遠くからでも見えていた街の門に近づく。出てしばらくしてからずっと見えていた壁。
それに近づいてもまだ、街中には入れなかった。

「街に入るのが、時間かかかるものな」

荷馬車が先に通されるのを見ながら、検問を待つ。

少し先にある少し飾り気のある門は、特権階級用だろう。
急ぐ事はないので、ゆったり待つものの。フウやリンが興味の向くまま、馬車の荷を見回しているようだ。

「かき混ぜないようにな?」

了解の意味で吹いた風と、触りと手首を撫でた感触がした。
何に興味を持ったのか、街で売っている物なら買おうと決めるクリスだった。
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