【長編・完結】この冒険者、何者?〜騎士さまと噂の冒険者は全てを見通す目と耳をお持ちです〜

BBやっこ

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街に行ってみた

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行くことになれば、クリスの動きは早かった。いやそう、する事もなかったのだが。

夫君が、『商会から街に行く馬車に、乗って行けば良い』と紹介してくれた。

聞くところ、この町から街へ荷物を運んでいる。ほぼ毎日だと、出仕しているようなものか。
半日もかからない上に人も馬車も通る街道は、魔物も寄り付きにくい。

魔物避けの香、冒険者の移動ついでに馬車に乗せれば問題もない。

「楽な旅ですね」
「もはや買い物に行く、だな」

夫君の言いようからして本当に移動は生活圏内らしい。
それくらい身近に思うのか、自身が商人だった時に街にある商会へ通っていたのだろうか。

「元・商人には、人が多くて商売繁盛だが。住むには騒がしいな。」

この町の暮らしは、穏やかな老夫婦2人きりの暮らしだ。独立したという子供は別の国に住んで元気に商売をしているらしい。

「血は争えんなー」
「話好きなのもあなたに似たんですものね?クリスさんお弁当ですよ」

婦人にお礼を言って受け取る。中身はパンばさみで肉と野菜が同じ厚みで入っている。
そして欲しい品と、店がいくつか書かれていた。買いそびれないようにしよう。

「街にはお店が多いですけど、待ち時間もあるから。」

甘味やお洒落な店ほどその傾向にある。婦人の上げた店は並ぶのもステータスとなるとか。

人が集まる街で店や屋台も多い。狙った有名店に行くなら予約か、迷ったら酒場を勧められていた。
夜なら、立ち飲みや雑多な店も多く男独りなら気ままに入れるだろう。

味も美味しく、珍しいものにも出会える。ハズレも楽しめるそうだが。
そう言った変なものには妖精が関わっていることが多い。

クリスと共にいる2つは、そういったものを遠ざけようとする。

“お気に入りに変なものを与えるな!”という心境らしい。カザンの通訳で分かった。

妖精とは悪戯好きもいる。態と食べさせようとするのもいると聞くが、彼女達はそういった悪戯は許さない性格のようだ。

奔放さはあれど、マイペースで真面目な性格。人の生活を知っているため、暮らし方や一緒にいる時の力の加減は慣れたものがあるらしい。

カザンのが力加減が苦手で、威圧は得意だ。皆、心強い。なあ?


「人を侍らして酒を飲ませる店もある、せいぜい毟り取られんように。」

そう送り出され、そういう店は遠慮したいと思った。
市場を慣れた庭のように歩き、クリスは商会へ向かう。約束の馬車はもう少しで出られるという。

商会の受付に挨拶と世間話をして、ゆったりと出掛けていった。


「どこの殿様だろうね?」
「騎士様にしては長閑すぎる性格かしら」

そんな評価も、風が強く吹いて飛んでしまった。
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