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はじまり

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「人形騎士への嫁入りが決まりました。」

それは報告ではなく、命令。


それを告げたのは、
継母になるのではないか?との噂のある貴族女性。

年頃になった、義理の娘になるかもしれない女をさっさと追い出したい
と言う気持ちはわかるものの。

実際にされると“腹立たしい”気持ちになるものですね。


貴族の娘として嫁入りはするものと思っていましたが。

なぜ、父からの言葉ではなく
まだ家と関係のない人なんだろう。

そんな気持ちを抑え、「わかりました。」とだけ答えました。



人形は褒め言葉ではなく、蔑みの言葉。
その麗しい顔(かんばせ)と、勲章をお持ちの貴族に

使うには不似合いのその呼び名。

婚約者に捨てられた
つまらない相手だった

と噂は、悪意に満ちた作為的なものと思われる。

それさえ垂れ流されたままの手腕は、如何程かと思うも
騎士としての腕を持ち、書類も文官並みと能力を褒める言葉も多い。


その容姿から、噂の的になりやすい方だと
私でも知っている。


そのお相手に、私ミレーナ・ブリューセが選ばれたようだ。

正直、誰が選んだのかさえわからない。
ただ、とんでもなく何かが渦巻いている気がする。


けれど、私にとれる選択肢はない。
この家で、もうする気も起こらないわ。


“捨てられた”

そういう気持ちになっても父を恨む気にはなれなかった。
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