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おまけ

コケッ

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「何故、ここでグレイテス・タングラーが呼ばれる?」

そのライアンの当然の疑問の声を聞きつつ、僕は舞台に目が釘付けだ。

因縁の男2人と対峙する彼女に。
助けに入れるだろうか?
子爵で交流のないセリム・ブレーメンが?

大した助けにならなそうだ。

「あいつら、彼女に罪を被せる気か?そんな事できるものか!証拠は多く集まってるんだぞ?」
小声だが怒りのある声にコッソリ答える。

「印象操作だよ。彼女が悪いように見える。関わりがあるのは事実。
だから、彼女がわるい」

「論理が破滅している」

「うん。その場のノリだね。けど、王子や上位貴族の前でやられえるんだよ?」
「公開処刑か?」

「気分はそうだろうね。」

彼女は顔色はすぐれないみたうだけど、胸を張っている。
礼儀正しく王子達の前に立った。


行われるのは、罪のだ。
そんな悪意を壇上でいち女学生が、1人浴びなきゃいけない。



言質を取って、冤罪と分かって作り上げる気らしい。

「屑がっ」

全くもってその通りだけど
相手も進退がかかってる。他に手段を問わないんだろう。

信用も、縁も切られてしまった下位貴族。
変に作を労した自滅であっても。


「怖いな。」無関係と知っていて引き摺り込もうとしてる


壇上に導かれたのは、彼女のみ
味方がいるのに、助けに行けない。

彼女の側に。


予想通り、彼女を巻き込んで茶番劇を繰り広げる男2人と件の男爵令嬢。

王子の公正さに疑いはない。全て集めた情報はお渡して把握済みだ。
問題はそこじゃない。

“噂が巡る”
彼女へのダメージが、彼女に不利益になる。

必死に逆転できないか考える


新たな婚約者を出して恋愛の話に持っていく?
いいや、それは相手がやっている。そのシナリオに乗るのはマイナスだ。

僕は彼女の婚約者として名乗り出たいけど。

そうじゃない、今じゃないんだ、彼女を助けられる方法は?


舞台上の彼女を見る
注目を集めたその舞台で


「煩い、このニワトリ男っ!!
男爵令嬢だって言う時は言うわよ!人をコケのする男になんて、一切の未練もないわよ!」


え。

彼女は自分で憂いを晴らした。

降りてきた彼女が僕には輝いて見える。
さすがに友人リンリーに支えられるほど消耗したみたいだけど。


「コケ・・鶏?」

「まさか鶏男ニワトリおとこなんて叫ぶと思わなかった。」

彼女を認めたように笑う、ライアンを見て
現実だったようで、この茶番劇の幕は下りた。


彼女の関与はゼロだ。ただ、その証拠がない。
関与していない証拠なんて、ナイ。


舞台に上がらざるを得ない状況で味方のラグレー侯爵令嬢も助けられず
2人の男子学生からの糾弾は意味不明なんだけど、行われた。

振り返って、あの啖呵にホレボレする。



その後で気づいた。
僕は彼女、グレイテス・タンブラーに惚れていたんだ。


彼女、馬の世話ができるし、犬も好き。
猫はどうかな。

鶏は退治したけど、卵は食べられるよね。


僕はどう告白しようか考えを巡らせた。
彼女をブレーメン家に迎え入れるには、どうしたらいいだろう?

彼女を寮へ送り届ける道すがら、そう考えていたのだった。
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