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断罪の刻 (完結)
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【イニシエの契約が執行されました。[断罪]を始めます】
【恋の女神よ
貴女ノ信仰を問います。】
変な所でカタコトな、人間味のない声が続ける。
【恋の女神よ、貴女は何をしまシたか?】
その問いも堂々と答える、
「花売りの女の子の恋を成就させたわ!」
恋の女神と呼ばれた女は、ふんぞりかえった。
見た目がいいのに中身が無さそうな女神だと残念だと思った。
【アナタの功績は、王族の結婚を結んだことです。】
ん?
国の教義になったのは、この女神と関係があるの?
そうだ、あんなに直ぐ教義を変えるなんておかしかった。
王族には反抗できないけど、急過ぎる出来事。
この女神が一枚噛んでいるのか。
驚いたが話を遮る気にはなれず、黙ってやりとりを見守る。
【力を得ましたね。乙女の信仰心です。】
女神の中でも上下関係があって、信仰心を集めている。
この恋の女神は新人(神だけど)ということ?
不穏な風が囁く…
《 愛を妨げた
人を死に至らしめた
彼女を 殺したな 》
私のこと?
ゾクゾクとする不気味な風と声だけど、私の援護だ。
「この女は結婚に憧れがないわ!恋していない女より
恋する女を優先させた方がハッピーエンドで終われるでしょう!?」
当然でしょ?と言いたげに声を上げる。
この女神、私が恋をしていないから殺したって言ってる。
モヤッとした。確かに、
彼の好意から付き合って、プロポーズされた。
答えはイエス。だって。愛しているもの。
彼を失いたくない。
…その思いを軽んじられたのだろうか?
信じられない思いで、女神を見た。
絵で見たことがある美しい姿、
黄金に波打つ髪を持つ女神。
その無邪気な微笑みは、恋する者の思いを叶え
幸せを与える。
恋してないから、私は消された?
あの命を喪失する恐怖を、輪郭だけでも覚えている。
指先が冷たくなった気がする。ガクガクと体が崩れそうだ。
泣きたくない。ここで、泣いては…
「僕の方は?」彼が話に割り込んだ。
膝をつきそうな私の体を支えてくれる。
「彼女を愛して、結婚しようとした。教会で誓おうとした時、
なぜ、知らない女と結婚することに?」
相手をすり替えられた彼の納得できない心情だった。
「知っているわ!その娘とハッピーエンドになればいいじゃない!!」
何を馬鹿なことをって言うの?
彼の表情は、“何言ってんだ、こいつ?”だ。
「そのまま結婚したって幸せよ!!」
私の方は、怒りに変わってきた。
「そんなにハッピーエンドにしたいの?そうね、お話にはなるかもしれない。
でも、当人同士の気持ちは??」
《人殺し
殺人者
私は、あんたに殺されたの!》
少し違和感のある重低音で言葉が発せられた。
…わかってない。
コイツがいなければ、私は彼と結婚していた。
なんでコイツの言う通りにしなきゃいけないの?
【ヒトの死に関わりを認定。
貴女は転生の女神との約束を反故にしました。
力を剥奪します。】
「ちょっと!待ちなさいよ!
人の死は、私が直接でしょ?私は殺していないわ」
【貴女の関与を天使たちから追記しました】
左右にいた天使。監視役なのか。
「嘘よ。」左右を見て鎮痛な面持ちの天使を見て呆然とする女
「嘘よおおおお!」
黙っていた2人の天使が叫ぶ女を連れ去った。
___静寂
「それで?」彼が虚空を睨む。
まだ、教会の雰囲気は戻っていない。
「奇跡で戻れるのかしら?」と私は独り言のように呟いた。
彼の5年
私の5歳の人生
これから?
このまま進めない。
彼を残した5年のまま。
「戻して。」
切に願う
私は彼と結婚するわ!
あの時の光が見える。
祝福の光。
これは、あの元女神のものではないわよね?
そう疑念を持ちながらも彼の腕に手を絡め
目を瞑った。
リーンゴーン
教会の鐘の音だ。
時報ではなく、祝福の音。
ステンドグラスには、植物の蔦が絡まる。
彼の生家で信仰された女神様のもの
2人を結婚式の日にもどしてもらったの?
洗い流したように、女神教が消えた世界。
彼を見れば、驚いた顔。
数人の招待客が驚いている顔だ。
鐘の音が止み、司教から問われる。
「女神に誓いますか?」
その問いに、
「いいえ、彼に誓います。」そう言って誓いのキスをした。
その後、家にお義母様と共に帰って
記憶をすり合わせた。
新婚夫婦になったが、そのことより
この違和感と噛み合っていない思考が不安だった。
歪みがある。
まず、
私と彼、記憶が残っている。
あの5年
私がいなかった5年
わたしがいた5年は思い出せる。
お義母様は、「物語を思い出すようだわ」と現実味のない記憶らしい。
彼は、採決していた書類と進んでいない計画に混乱している。
彼は5年の時間に戻ったという感覚で混乱している。
私は、元に戻ったとしっくりきている。
私の意識では、結婚式で倒れ
わたしが5歳だと思い出した。その後また結婚式になったから、
そんな記憶もあったわね、と昔のことを一瞬思い出していた
と言うのが一番近い感じかしら?
彼の混乱が一番大変らしい。
ハネムーンになるが、彼の混乱を和らげることに注力した。
彼には5年の時間を過ごし、戻ってきた認識だ。
精神的にも私が死んだと苦しんだ年月がある。
安心させるのにまだかかるだろう。
私が生きていると平穏な日々を彼と過ごしたい。
私は考える。
女神、元女神はどうなったか?
国の教義は他の女神のまま。
あの女神のいた痕跡がなくなっている。
教会もステンドグラスも別物だった。
もうこの世界にいないのだろうと想像させた。
記憶の残り方。
あの悪魔の誘いと関係性で
見つけてきた彼が、5年という
私は記憶があるけど、過去子供の頃のように遠い記憶だ。
そうだったかもという程度の。
お義母様は、本を読んでいても
不参加という立ち位置だろう。本を読んだことがある
と現実味のない記憶だ。
そこから考えて、
彼が古の魔法の代償を払ったのでは?
と思えた。
そう思い、彼と平穏な幸せを
噛み締めて生きようと思う。
私を取り戻してくれた彼に
幸せな人生を歩み直してもらうために。
本屋で探してみた
店に『悪魔の誘い』の本は見つからなかった。
私を殺した女神は消えた。
5年は彼の中にだけ残り、
新しい道を歩む。
この混乱も、収集も
人の願いが起こしている力なのかもしれない。
悪魔の誘いに感謝して、
私は、幸せな毎日を続けることに決めたのだった。
《オワリ》
【恋の女神よ
貴女ノ信仰を問います。】
変な所でカタコトな、人間味のない声が続ける。
【恋の女神よ、貴女は何をしまシたか?】
その問いも堂々と答える、
「花売りの女の子の恋を成就させたわ!」
恋の女神と呼ばれた女は、ふんぞりかえった。
見た目がいいのに中身が無さそうな女神だと残念だと思った。
【アナタの功績は、王族の結婚を結んだことです。】
ん?
国の教義になったのは、この女神と関係があるの?
そうだ、あんなに直ぐ教義を変えるなんておかしかった。
王族には反抗できないけど、急過ぎる出来事。
この女神が一枚噛んでいるのか。
驚いたが話を遮る気にはなれず、黙ってやりとりを見守る。
【力を得ましたね。乙女の信仰心です。】
女神の中でも上下関係があって、信仰心を集めている。
この恋の女神は新人(神だけど)ということ?
不穏な風が囁く…
《 愛を妨げた
人を死に至らしめた
彼女を 殺したな 》
私のこと?
ゾクゾクとする不気味な風と声だけど、私の援護だ。
「この女は結婚に憧れがないわ!恋していない女より
恋する女を優先させた方がハッピーエンドで終われるでしょう!?」
当然でしょ?と言いたげに声を上げる。
この女神、私が恋をしていないから殺したって言ってる。
モヤッとした。確かに、
彼の好意から付き合って、プロポーズされた。
答えはイエス。だって。愛しているもの。
彼を失いたくない。
…その思いを軽んじられたのだろうか?
信じられない思いで、女神を見た。
絵で見たことがある美しい姿、
黄金に波打つ髪を持つ女神。
その無邪気な微笑みは、恋する者の思いを叶え
幸せを与える。
恋してないから、私は消された?
あの命を喪失する恐怖を、輪郭だけでも覚えている。
指先が冷たくなった気がする。ガクガクと体が崩れそうだ。
泣きたくない。ここで、泣いては…
「僕の方は?」彼が話に割り込んだ。
膝をつきそうな私の体を支えてくれる。
「彼女を愛して、結婚しようとした。教会で誓おうとした時、
なぜ、知らない女と結婚することに?」
相手をすり替えられた彼の納得できない心情だった。
「知っているわ!その娘とハッピーエンドになればいいじゃない!!」
何を馬鹿なことをって言うの?
彼の表情は、“何言ってんだ、こいつ?”だ。
「そのまま結婚したって幸せよ!!」
私の方は、怒りに変わってきた。
「そんなにハッピーエンドにしたいの?そうね、お話にはなるかもしれない。
でも、当人同士の気持ちは??」
《人殺し
殺人者
私は、あんたに殺されたの!》
少し違和感のある重低音で言葉が発せられた。
…わかってない。
コイツがいなければ、私は彼と結婚していた。
なんでコイツの言う通りにしなきゃいけないの?
【ヒトの死に関わりを認定。
貴女は転生の女神との約束を反故にしました。
力を剥奪します。】
「ちょっと!待ちなさいよ!
人の死は、私が直接でしょ?私は殺していないわ」
【貴女の関与を天使たちから追記しました】
左右にいた天使。監視役なのか。
「嘘よ。」左右を見て鎮痛な面持ちの天使を見て呆然とする女
「嘘よおおおお!」
黙っていた2人の天使が叫ぶ女を連れ去った。
___静寂
「それで?」彼が虚空を睨む。
まだ、教会の雰囲気は戻っていない。
「奇跡で戻れるのかしら?」と私は独り言のように呟いた。
彼の5年
私の5歳の人生
これから?
このまま進めない。
彼を残した5年のまま。
「戻して。」
切に願う
私は彼と結婚するわ!
あの時の光が見える。
祝福の光。
これは、あの元女神のものではないわよね?
そう疑念を持ちながらも彼の腕に手を絡め
目を瞑った。
リーンゴーン
教会の鐘の音だ。
時報ではなく、祝福の音。
ステンドグラスには、植物の蔦が絡まる。
彼の生家で信仰された女神様のもの
2人を結婚式の日にもどしてもらったの?
洗い流したように、女神教が消えた世界。
彼を見れば、驚いた顔。
数人の招待客が驚いている顔だ。
鐘の音が止み、司教から問われる。
「女神に誓いますか?」
その問いに、
「いいえ、彼に誓います。」そう言って誓いのキスをした。
その後、家にお義母様と共に帰って
記憶をすり合わせた。
新婚夫婦になったが、そのことより
この違和感と噛み合っていない思考が不安だった。
歪みがある。
まず、
私と彼、記憶が残っている。
あの5年
私がいなかった5年
わたしがいた5年は思い出せる。
お義母様は、「物語を思い出すようだわ」と現実味のない記憶らしい。
彼は、採決していた書類と進んでいない計画に混乱している。
彼は5年の時間に戻ったという感覚で混乱している。
私は、元に戻ったとしっくりきている。
私の意識では、結婚式で倒れ
わたしが5歳だと思い出した。その後また結婚式になったから、
そんな記憶もあったわね、と昔のことを一瞬思い出していた
と言うのが一番近い感じかしら?
彼の混乱が一番大変らしい。
ハネムーンになるが、彼の混乱を和らげることに注力した。
彼には5年の時間を過ごし、戻ってきた認識だ。
精神的にも私が死んだと苦しんだ年月がある。
安心させるのにまだかかるだろう。
私が生きていると平穏な日々を彼と過ごしたい。
私は考える。
女神、元女神はどうなったか?
国の教義は他の女神のまま。
あの女神のいた痕跡がなくなっている。
教会もステンドグラスも別物だった。
もうこの世界にいないのだろうと想像させた。
記憶の残り方。
あの悪魔の誘いと関係性で
見つけてきた彼が、5年という
私は記憶があるけど、過去子供の頃のように遠い記憶だ。
そうだったかもという程度の。
お義母様は、本を読んでいても
不参加という立ち位置だろう。本を読んだことがある
と現実味のない記憶だ。
そこから考えて、
彼が古の魔法の代償を払ったのでは?
と思えた。
そう思い、彼と平穏な幸せを
噛み締めて生きようと思う。
私を取り戻してくれた彼に
幸せな人生を歩み直してもらうために。
本屋で探してみた
店に『悪魔の誘い』の本は見つからなかった。
私を殺した女神は消えた。
5年は彼の中にだけ残り、
新しい道を歩む。
この混乱も、収集も
人の願いが起こしている力なのかもしれない。
悪魔の誘いに感謝して、
私は、幸せな毎日を続けることに決めたのだった。
《オワリ》
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