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変化の時

後継者達の心中

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アレイ・ツヴァルは、華やかな茶会の会場で
頭痛を耐えて、ため息をついた。

それというのも“親父が女に狂ってる”
パーティでも今回もそれとなく話題に出されるほどだった。
王都での散財が目につくようになっている。

(あれでは剣も握れないだろう)
ツァルト家当主の交代を望む声も出ている。

セリュート、いやあのドレス姿をそう呼ぶのは躊躇われる。
(あれは詐欺だろう。)と悪態をつきつつ

セリの言い分を聞いておいて良かったと思う。
(あいつ、先見の明があるのか?いや、
自身の経験か。)

ヴェーネン家の取り巻く状況はおかしい
何かの策略に嵌められたように。それと戦うあいつの強さを思う。

「アレイ」呼ばれた声に振り向けば、自分の妻。目線は同じくらいにあり
剣を振るう手。

(ジュリーを守る、そのためなら親父も追い落とせる。)
そんな決意を見せず、「遅かったな?」と余裕を見せてパートナーを
エスコートするアレイだった。


サンタナは照れくさくって、セリと目線が合わせられない。

彼女の眩しさのせいだと言い訳するが、自分の成長も主張したい。
(社交もこなせるようになっているんだ!)…彼女以外には。

僕の年下のお嫁さんケイシーは、こんな僕をあきれず支えてくれる。

セリュートが女の子だとわかった時はもったいないと思って
自分よりよっぽど芯の強い後継者なのにと
羨ましかった。

今は、ケイシーとこの先やっていけると自信がある。
それでも、セリに目線が合わせられないのは、まだ成長が足りないのかなあ。
また、ケイシーに呆れられる。


カイルは辺境の一団と一線引いていた。
父上の冗談を肯定しないためで、

見つめすぎるのも気をつけている。

婚約者のメリーアンは、勘が鋭い。この気持ちに気づいている節がある。

フゥ。
父上にも困ったものだ

悪い癖。セリで遊んでいる。王都で活躍してもらているものの
早く子どもをと望むのも早急だ。
本気なのか、実の父でも分からない。


そんな様子をメリーアンが捉えている。
「第二夫人に?」と養父は考えているらしいが
当のセリにその気はない。

セリュートと、男として家を守る傑物の彼女は
交友を深めれば良い娘だし、頭も良い行動派。

彼女の手腕や振る舞いも大いに辺境の地で役割を果たしている。
優秀な子。


彼女とならうまく、楽しく過ごせるかもと思うけど
貴族のバランス上、難しいのかしら。

カイル・ジョルバンも否定的だ。本心は置いておいて。

彼女は貴族として振る舞いに堅苦しさを感じている。
ジュリーのが馴染んでいるのかもしれない。
ケイシーみたいに見た目の可愛さを生かして腹芸が得意とは言えないけど。
見た目で威厳を見せられるジュリー。

(セリは両方できても窮屈そうなのよね。)

ヴェーネン家の当主に、お目にかかったことはない。
彼女も「会ったことがない」と言う稀な貴族家で養った力強さが、私には眩しい。


そんなマイナス面より目立っているのは、セリの美しさだ。
憂い顔が女の私にも“麗しい”と感じる。

(わざとやってるんじゃないのよねえ。)
この美しさなら、婚約者など選り取り見取りでしょうに。

噂で従兄弟とっていうのはガセね。

「恋をした?」
決まった相手がいるのでしょう?誰かがわかっていないけど。

反応が可愛いのは、今油断しているからね。
いつもの冷静な顔は休憩中?

恋って女を綺麗にするものなのね。
男の格好もかっこいいけど、今のドレス姿も素敵だわ。
仕立てた店も聴いておいた。王都にある店ね。

未来の旦那様に強請ろうかしら?
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