【完結済み】当主代理ですが、実父に会った記憶がありません。

ヴェーネン家

14-2

「誰だ？」

屋敷で子爵夫婦が迎えたのに発した言葉。
ラウルト現当主が、知らない顔だと素で言った。

「お久しゅうございます。無事の帰還を心より歓迎申し上げます。」

答えになっていない。心なんて入ってないね。
サディスが当主に耳打ちで説明している。

「不要だ。出て行け。」
それで終わり。
セレイナという名の女性の肩を抱き、部屋へ行くようだ。

メイドも慣れたように案内している。

それを横目で見ていたセリの感想は、
(自由。
まあ、自分の家なのだからこんなものか。)

当主の方はサディスに任せ、バリスも料理長の仕事に戻る。
夕食は豪華になるだろう。

セリは別館の自室に戻ることにした。
『竜の翼』の２人を歓待する役目を担う。既に
ロードがべったりだけど。

飛竜を宥めてきたカナンと合流し、以前使っていた部屋で休んでもらう
何故か私も一緒だ。

屋敷内は当主の帰還にバタバタしているので
まあいっか。

先に話を確認しなければ。
当主の帰還を完遂してもらった
つまり、依頼の完了だ。

元々話していた通り、
ヴェーネン家に『竜の翼』ほど高ランクへの支払い能力はない。

それぞれの要望をなるべく、全員から叶えることで報酬とすること。
ここにいない３人にも働いてもらっているのでそういう条件だ。

依頼を出したとして、一応の流れを聞いた。

当主はエルフの隠れ里の淵の方にいたらしい。
グスタフの交渉で追いやられた場所が明かされ、(何をしたんだ？)

ロードとカナンが飛竜で迎えに行く。危険地帯を横切って。
まだ向こうは雪も深い頃だ。

シュルトとキースが王都で支援物資を送り、
貴族関係も抑えてくれ陽動に徹し

王都にいるガイサスおじさんにも通してくれたようだ。
ここまでやってくれて報酬がこれだけ？と私は思うが。

グスタフは魔の森の記録、セリの作った10年分写し。
ロードはセリ自身。
カナンは従者契約？魔力の繋がり…これは詳しく聴こう。

キースは魔導具の共同利権。あのすごく高価なやつ。
シュルトは私の身体を、「フィッティング！」ドレスの着用を随時するという。
「趣味と実用よ！」と言っていた。

※今後ロードの支払いで、セリの物が増える、作れる→貴重な素材もゲットという計算。


家としてのお礼は、泉への自由な出入り
採取は家を通してもらうが透明石と言ってる石が目当てだ。

寒さに弱い、暑さのは強い。
冬に近づくとわれていく。半透明な丸い石のよう。花瓶に入れたりする石。
毒性がわかる魔法陣を彫るとか。

ポットを作って、権利ゲット！
外交にも使える花茶の文化がある国で受け入れられたらしい。

以上のおおまかな報酬で納得してもらえた。

私が紅茶を淹れ、一息つく。

「にしても、初対面だろ？あれは…」
当主と子供の初対面だものね？

「あんなものでしょ」と冷めた口調で言う。

キース向けに熱すぎた紅茶を飲む
セリは当主の人となりを予想していた

良く言えば、貴族らしい。
魔導具に没頭する変わり者。

メモや先代当主の記録、当主を知る人にはなしを聞くが
相当オブラートに包んで説明してくれた。

正直、16年以上音沙汰ない人に何を期待すれば？
実子かどうかもわからなそうだな。と呆れている。

「連れていた女性、母親？
全然こちらを見なかったけど、余裕なさそうだったもんね。」

感動の対面にはならなかった。想定内だ。
子爵が出て行きそうなのが御の字。


「飛竜に運ばれるのキツいからな」
カナンがフォローするように言えば、

「乗ってる方が楽だ」
ロードが言い添える。

シュルトがこちらに来る予定らしい。。
ガイサスおじさんを送ってくれるとか。

追加料金いるんじゃないかな？

今度来る
飛竜の子に、背中に乗せてくれるか聞いてみようと思ったセリだった。