上 下
81 / 98
変化の時

13-3

しおりを挟む
セリを落ち着かせるため、ロードが連れ出したが
庭を歩いて気分を変えようと提案した。

それに了承したセリと一緒に温室と呼んでいる場所に行く。
広さは小屋程だが、この時期には育たない植物もここなら元気だ。

建設はカナンとロードが担い、
グスタフの知識で外の覆いを工夫した。
キースの案でクズ魔石と言われるカケラと魔導具を調整して温度を保っている。

シュルトが手配した苗もお試しにと植わり、『竜の翼』全員が関わっていた。

その行く先に、飛竜といるグスタフと会った

既に落ち着いていたセリだったが、グスタフはセリの頭を撫で、屋敷に戻って行った。
元気付けてくれたらしい。

(装えなくなっているあ)と反省しつつ、セリが照れる。

子供扱いされる機会が少ないため、落ち着いた雰囲気のグスタフから
撫でられるのはくすぐったい気持ちになる。

父性的なものを感じるのかもしれない。
父親と目される人物と年代的には同じだが、グスタフに子供はいない。

そんな触れ合いを一応、睨まず見送ったロード。
カナンが居れば、『オレにも睨むなよ。』と言わそうだが
ここにはいない。(部屋で寝てんだろ)

そっとセリの肩に手を添える
俺が望むのは家族として、保護者ではなく

男としてだ。
セリの成人まで待てる。


温室に入るとふぅとため息をつくセリ。不安も散ったらしい。
森の様相とは違い、薬草が多いが花が咲いている。

花を愛おしむセリに、俺にもその目を向けて欲しいと思った。


「俺に守らせてくれ」

恋愛経験のないセリでも
流石にプロポーズだと分かった。

感情が、熱がぶわり!と上がる。その中にあるのは
“嬉しい”だろう。

しかし、頭の方はなんと答えれば良いのか困惑する。
セリとしては受けたい。ロードを受け入れたいのだが

セリュートは断る。理由としてはいつものように当主不在を言い訳にするのだろうか?
赤面しながらも、自分の思考を軽蔑した。

どうして素直に受け取れないのか?

受け取ればここにいられない
いなくて良い。それは望んでいることだろうか?

その踏ん切りがつかない。
ここに今、私の存在がなくなれば、脆い外側さえ剥ぎ取られてなくなってしまう。

それが理解できていた。
自分の将来を考える前に、この家のことを考えてしまう。

それが答えなように感じた。

けど、ロードからの思いには言い訳を除外したい。

どう口にすれば良いだろう?と思った結果。
ちゅっとロードの頬にキスで返した。


子どものおままごとの結婚式に
花嫁がやるように。

セリの精一杯だった。


ロードの方は、返答を求めちゃいけないと思っていた。セリは貴族の家を守っているんじゃなく
使用人と領民を守っている。後を任せられる人間がいないと離れらえないだろうとわかっていた。

つい、告白めいたことを言ってしまった。進行形で見つめ合っていたが
頬に触れるキス。

その後の照れる姿に言葉はもらえずとも今はいい。
ギュッと抱きしめ

「俺がなんとかする。」

そう誓った。
俺のものだ。セリを自由にしてみせる。


その算段が動き出すのは
温かな風が吹く頃からだった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

貴方のために涙は流しません

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:41,204pt お気に入り:2,804

結婚はするけれど想い人は他にいます、あなたも?

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:85

妹に婚約者を奪われましたが今は幸せです

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:38,426pt お気に入り:2,292

もう終わりにしましょう、その愛は永遠ですから…

恋愛 / 完結 24h.ポイント:312pt お気に入り:4,048

【完結】私の婚約者はもう死んだので

恋愛 / 完結 24h.ポイント:383pt お気に入り:3,346

失くしたあなたの物語、ここにあります

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,722pt お気に入り:4

夫には愛人がいます

恋愛 / 完結 24h.ポイント:38,415pt お気に入り:298

あなたへの恋心を消し去りました

恋愛 / 完結 24h.ポイント:461pt お気に入り:2,873

処理中です...