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それぞれの思惑

『竜の翼』の3人

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「で、どうすんの?」と切り出したのはカナン。

部屋にはシュルトとロードがいた。

今回の問題はロードのもの。
とは言え、『竜の翼』にも関係してくりかもしれない。

キースとグスタフには後で言っておけば大丈夫。
ここの書庫を気に入ったらしい2人は、入り浸っている。・・概ね、いつも通りだ。

ロードの番が貴族の、後継だと言うのだから。番が見つかった時点で大事件な筈が
結構今まで通りなのは良い誤算だ。
トラブルになることのが多いっていうのが常だもんな。

相手が未成年で、友好的だからかな?
当のロードは結構無茶苦茶して付き纏っているっていうのに。精神的に大人だわ。

「セリを『竜の翼』に誘う。」

だと思った。と言う言葉を飲み込み懸念事項の確認だ。
「できんの?」と聞いた先はシュルト。

「そうねえ。セリの性格的に冒険者って合いそうだけど。」

飛竜を撫でたり、ダンジョンの話を聞きたがったりとしてたもんなー。
森に採取に行くのが日課って、貴族の習慣じゃないよな?

「貴族を抜けるって大変だよなあ。」
「まあねえ。特に後継だって言うから」

後継者問題で血を見るなんて話、ゴロゴロしてると思うけど。

「っていうか、他の家族は?」一回も見ていないし、話にも出ない。

既に居ないくて天涯孤独?と思って、オレは直接セリちゃんには聞いていない。
そこんとこシュルトなら聞き出していそうで、フォローもしっかりだろ?

フゥ。と溜息。「行方不明だそうよ。セリが生まれてすぐだったんじゃないかって。
この屋敷に帰らぬまま。14年以上。」

「は?」それは予想外。

「セリは気にしてないみたいだぞ」ロードも聞いたらしい
(え、気にしてないって。)

「あった記憶もないし、消息もずっと不明だったらしいワ。まあ貴族で家族間の愛情はないって話も聞くけど
当主不在っていうのは、…スゴいわよね。」

シュルトは言葉を濁したが、有り得ないだろ。

「絵姿でしか見てない相手に、情を持つのは大変じゃないか?」呑気なロードの言いように
頭痛がした。

「そんな貴族の家の次期当主をかっさらうのか?」

『当然だろ?セリは俺の番なんだから』って顔すんな!

「セリの立場も微妙なのよねー。」
「何が?ただ1人の後継だろ。家を継ぐ一択なんじゃねーの?」

それをセリちゃんが選択したら、ロードがここに婿入りすんのかなあ。
拠点がここになるとか?戦力には事欠かないぜ。

そんな未来をあり得るのかなあと夢想していたが、違った。

「…セリは、家を継げないかも。女の子の継承って難しいと思うわ。
貴族院に他の貴族の横槍、後ろ盾も強い物が必要だし、

婿をとるのが…」バリンッ!!!

硬質な物が壊れる音がした。
ロードの手元の氷の塊が、現れている。

「かけら、集めておいて。」グラスも割れたな。ロードの魔力が乱れた。
怒りに引っ張られての反応だが、こっちは慣れたもんだ。


「とにかく、このまま当主になるのは難しいワ。」

「貴族の面倒臭さってのは、場所を問わないんだな?」
セリちゃんの苦労が偲ばれるぜ。

使用人との仲はまあまあ。古参の人間との関わりが深い。

「真っ直ぐな性根に育ってくれたもんだよ。」
「そうねえ駆け引きっていうより、舞台度胸って感じで勇ましいわ。」

セリちゃんの評価は『竜の翼』内で上々なのだ。
オレの尻尾が気になるっぽいけど触ってこないし。

礼儀や能力の問題はなく、一緒に旅するのが面白そうだと思っている。


「俺はセリを手に入れる。」
ロードの宣言通りに、事を進めていくのを了承し

『竜の翼』の方針は決まった。





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