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変化の時

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『竜の翼』がいる生活は活気もあり
穏やかな時間もあって

セリュートとしてより、セリが充実した時間が過ごせた。

森にへードとカナンとともに出かけ
シュルトとキースとお茶をして、王都の話やこの土地にまつわる話をしたり

グスタフの研究の話をしてもらったりした。
睡眠時間を削りそうになると

ロードに寝かせつけられるなど
甘えることのできる環境に、癒されていた。

使用人とは違った距離感。
冒険者として扱われるセリとしての自分が

楽しかった。


終わりが有ると分かっていても。

サディスが苦言を呈する後で、
バリスにフォローされつつ
森に行くことは止めなかった。

静かになった森とはいえ、危険もある。

高ランクの冒険者2人を護衛にすれば観測も安全にできた。

以前の記録から
何か見えるだろうか?と期待する。

独りの見解ではなく、相談できる相手がいることで
より楽しさを感じていた。

やはり、1人では限界がある。
文通相手もいたが、専門でも詳しくもないため話は深まらない。

「相手は男か?」
ロードに問われた時は、笑って

「女の子の友達だよ」と素直に言えた。

男を装わず、女と引け目をを感じない。
そんな軽い気持ちに気付かされた。

セリは成長している。背はちょっとだけの伸びでも
体型が変わってきた。女の印も来てそろそろ、男の格好にも苦心する。

今の時期はする必要もないが、今後は?
その話になると2人の使用人から決まった答えを言われる。

「後継として」と「自分で決めろ」

サディスは冒険者になることを厭い、
バリスは勧めている。

2人がたまに言い争うからの手が出る喧嘩をしていても
結局、答えは出ない。

そう、出せないのだ。

例え私が後継として進む道を決めても
当主に認められる必要がある。それから貴族院での承認。

そのどちらも難しい

自分で決められたなら。
望みを言ったところで

そうできると
希望を持ったところで…。

奪われたら?


「セリ?」
キースに呼ばれ意識を戻す。
目の前の魔導具は調整と実験を繰り返していた。
良い線に行っている。

この魔導具の値段を考えたくはないけど
実用として十分な性能だ。

職人さん達に披露できる。

「ごめんなんだった?」

「休憩いれよう。お茶のして。」

集中できていないのがバレたのだろう
お言葉に甘えて休憩だ。


シュルトが、お菓子と手紙を持って書庫に来た。

キース宛てか。
高級そうな手紙だと横目で見てから
先にお菓子をいただいた。

お手頃でも気に入ってもらえたブレンドティーは
熱々で私はまだ飲めない。

「そろそろ、王都に帰って来いって?」

「まあ、そんなとこ」キースが手紙を読みながら答えている。

軽妙なやり取りが遠くに感じる。
(ここを去る?)

足下が崩れる感覚に、空虚で
(嫌だ。)と思う私が居た。

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