【完結済み】当主代理ですが、実父に会った記憶がありません。

ヴェーネン家

14-5

”狼と竜は番を閉じ込めて離さない“

その例に違わない話を聞かされたが、
竜人の方と番な場合、狼人と契約するとどういうことになるのか？

「どっちにしろ逃げられねーな！」
と告げられたバリスの言葉。それって別にどうしようもないのでは？

そんな不穏さもありながら私の決定は覆らない。
「ガイサスが帰ったら再び話す」と決め、解散になった。

部屋を後にしたが
またサディスとバリスが喧嘩してそう。


森のお気に入りの泉でカナンと契約をした

ちゅっと手の甲に接吻されると
騎士の誓いのようで、ふわっと巡った魔力が温かい。

すぐにロードに抱き離されたが
カナンは嬉しそうだ。

そのうち、尻尾も触らせてもらおうと目論んでいる。
耳は触った！

そんなふうに戯れていたけど
ガイサスが帰還するまで、ゆっくりしている。

当主の仕事ぶりを見ながら
討伐や調査の日々を過ごしていた。

書類は執事のサディスに頼りっぱなしになりそうで
手伝いを申し出たけど。

「身体を労わってください」と言われて断られている。
冷たい眼差しだと評判のサディスだけど、当主相手にとても助かっている。

困りごとと言えば
屋敷での居場所が減ったことか

セレイナさんは庭で茶を飲む。庭師とも仲が良くやれそうだ。
魔虫が出て来て、「あら久しぶりね！」と水魔法を打ち込み

「ここは虫が少ないわね。」とお茶を続けた猛者らしい。

その後お茶をご一緒しながら北の僻地出身という話を聞き、
自分の身は守れる人だと認識を改めた。

傅かしずかれるのに慣れているものの、与えられたもので暮らすというスタンスらしく
この辺境でもやっていけそうだ。

ほとんど家から出れない暮らしだったそうで
「ここは気候が良いわね」と嬉しそうだ。

母親としては見れないが、穏やかに過ごして欲しいと思う。


書斎は当主が立て籠るのに使われ、魔術式がボードに描かれている。

共通の話題で魔導具の話をしてみたが
専門用語が多く分かりづらい。突っ走ってしまう内容に
「勉強したことがないので」

「勉強不足かな？」得意そうに言うが、私は学校に通った事がない。

勉強の時間は仕事で取れないし、辺境を出れなかったのだ
(貴方と違って。)という言葉を飲み込む。

本に興味はある。ここのは全て読んだから。
貴族の子だったら学校に行っていただろうか？

ミシミシと自分の中から聞こえるようで俯く。

そこに

「仕事は？」温度ゼロの、サディスの声は効くだろう。
執務室に連行された。

なんとなくしょげた気分をロードに慰めてもらった。
カナンの尻尾もついた。モフモフ。

翌々日。
そろそろ、ガイサスが着く頃かと待ちわびれば
「婚約打診の手紙が来た！」と当主が言い出した。

(のんきだな)が私の感想だ。
嫁とつがされる？いらないものみたいに？
反応を返すことなく食事を続けるも

「私のも入っているのは何のためだろうね？」冗談の言葉に、
(あ、セレイナさんがうろたえた。)

重いため息が後ろで聞こえる。
「また甘言に釣られて家出する気か？仕事は？
セリ様がいるのに成人したばかりの子供が必要か？」

婚約の相手がその年齢って、乗っ取り考えてるよねえ。
サディスが怒り出すのもわかる。

そして本人は話題提供と私への餌をちらつかせて、留まらせたいと？
結果、セレイナさんを不安にさせるという墓穴！

女を当主にする気がない。
世継ぎが新しく生まれてくるまで
ここにいる必要があるとは思えなくなった。

食事を終わらせ
「部屋にいる。」と立ち去り、

セレイナさんに言い訳している様子を見て
さっさと部屋に帰った。


その後キッチンにて

「ほんとあいつ、クズだな。セリ様を傷つけている！」
サディスの執事らしからぬ声

「そこまでああだったっけか？」バリスがコップの水を出しながらきく

一杯飲み、

「置いていきやがって
子供に何も言わず、女を追っていくなんて」

苛ただしげに当主の部屋に行った。

その様子を見てバリスは考える。
やはり、当主にはサディスのお守りと鞭が必要だ。
この年月で頭の花畑が広がったらしい。

互いのためとはいえ、セリがここに居ない方が良い。
追い出すようで嫌だが
あの男は甘えが出る。


サディスが優秀なセリといたいのもわかるが

セリ自身が準備をしていた
次の場所も決めている

バリスは
何を旅立ちに贈ろうか考えてる。

(16歳か。
よくやってくれたよなあ。)

子供の巣立ちを思った。