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それぞれの思惑

執事長代理 サディス

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私に獣人の血が入っていることは
養父ガイサスは知っている。


特徴の出ていない私は、特に獣人の血が入っていると言わずにい過ごしていた。

便利なのは夜目が聞くことと、見た目以上に頑丈なことくらいで
自分でも忘れそうなくらいだ。

しかし、自身が獣人だと感じる時がある。

契約とは双方に条件を飲んだ結果だ。
それが魔力を介して行われて入れば

魔法契約となり、縛りが強くなる
それは、絆も強くなることだと耳にしていた。

獣人の本能で、主従を求めるものがある。

私の忠誠、いや尊敬と言い換えるべき相手は
養父だが、主従としたのはヴェーネン家の当主だ。

その当主の行方が分からなくなってから
もう14年過ぎた。

当主を探している最中に魔鳥に
連れられてきた赤児が14歳になっている。

セリと名がつけられ、この屋敷で使用人の手で育てられた子供。

当主の子かはわからなかった。
紋章付きの持ち物が一緒にあっただけでは決められない。

相変わらず当主は見つからず、痕跡をもつけたのも
ここ最近と言える。

これだけ長期間、音沙汰も目撃も怪しい当主の
生存を信じているのは、魔法契約による繋がりが消えていない

のが理由のひとつだった。

もう一つは、ガイサスが諦めていないことか。
先代の最期を看取った時に、後継を頼むと当主補佐となり
今までヴェーネン家を支えてきた。

思い入れもひとしおなのだろう。
その想いを支えたいと思う。

家の延命にセリ、セリュートを利用したと心を痛めている。

私にとってみればあの子も
共犯だ。

このヴェーネン家という貴族の家の骨組みを
なんとか残そうとした。それだけ。


“当主を支える”と契約は訴えている。
魔法契約は、奴隷魔法として知られているものもあるが
種族によって伝えられる、従属の意をあらわす誓いのようなもの。

その光が失っていない以上、私はこの家に仕え続ける。

養父 ガイサスもそうだろう。
そのために、セリ様に居てもらうのだ。

バリスが止めれば、養父ちちも諦めてしまうだろうか?

しかし、
まだ望みはある筈だ。


そのためにもセリ様にしっかりしていただきたいのだが。

番の認定をされるとは。
相手は高ランクの冒険者。

利用価値はあるかもしれない。


未成年で親の庇護下と諭せば、しばらくの時間は稼げるだろう。

私は番への本能は薄いらしく、行動原理が
よくわからないが

ヴェーネン家の執事として、相手の行動を諫めていけば良い。

ああ。はやく父の力になれれば良いのだが

屋敷を空けるわけには行かず、バリスも帰ってきた。
当主の場所の特定のできたと言っても

過酷な北の地だ。難航するだろう。
ハア。

色々と、ままならないものだ。
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