76 / 98
それぞれの思惑
執事長代理 サディス
しおりを挟む
私に獣人の血が入っていることは
養父ガイサスは知っている。
特徴の出ていない私は、特に獣人の血が入っていると言わずにい過ごしていた。
便利なのは夜目が聞くことと、見た目以上に頑丈なことくらいで
自分でも忘れそうなくらいだ。
しかし、自身が獣人だと感じる時がある。
契約とは双方に条件を飲んだ結果だ。
それが魔力を介して行われて入れば
魔法契約となり、縛りが強くなる
それは、絆も強くなることだと耳にしていた。
獣人の本能で、主従を求めるものがある。
私の忠誠、いや尊敬と言い換えるべき相手は
養父だが、主従としたのはヴェーネン家の当主だ。
その当主の行方が分からなくなってから
もう14年過ぎた。
当主を探している最中に魔鳥に
連れられてきた赤児が14歳になっている。
セリと名がつけられ、この屋敷で使用人の手で育てられた子供。
当主の子かはわからなかった。
紋章付きの持ち物が一緒にあっただけでは決められない。
相変わらず当主は見つからず、痕跡をもつけたのも
ここ最近と言える。
これだけ長期間、音沙汰も目撃も怪しい当主の
生存を信じているのは、魔法契約による繋がりが消えていない
のが理由のひとつだった。
もう一つは、ガイサスが諦めていないことか。
先代の最期を看取った時に、後継を頼むと当主補佐となり
今までヴェーネン家を支えてきた。
思い入れもひとしおなのだろう。
その想いを支えたいと思う。
家の延命にセリ、セリュートを利用したと心を痛めている。
私にとってみればあの子も
共犯だ。
このヴェーネン家という貴族の家の骨組みを
なんとか残そうとした。それだけ。
“当主を支える”と契約は訴えている。
魔法契約は、奴隷魔法として知られているものもあるが
種族によって伝えられる、従属の意をあらわす誓いのようなもの。
その光が失っていない以上、私はこの家に仕え続ける。
養父もそうだろう。
そのために、セリ様に居てもらうのだ。
バリスが止めれば、養父も諦めてしまうだろうか?
しかし、
まだ望みはある筈だ。
そのためにもセリ様にしっかりしていただきたいのだが。
番の認定をされるとは。
相手は高ランクの冒険者。
利用価値はあるかもしれない。
未成年で親の庇護下と諭せば、しばらくの時間は稼げるだろう。
私は番への本能は薄いらしく、行動原理が
よくわからないが
ヴェーネン家の執事として、相手の行動を諫めていけば良い。
ああ。はやく父の力になれれば良いのだが
屋敷を空けるわけには行かず、バリスも帰ってきた。
当主の場所の特定のできたと言っても
過酷な北の地だ。難航するだろう。
ハア。
色々と、ままならないものだ。
養父ガイサスは知っている。
特徴の出ていない私は、特に獣人の血が入っていると言わずにい過ごしていた。
便利なのは夜目が聞くことと、見た目以上に頑丈なことくらいで
自分でも忘れそうなくらいだ。
しかし、自身が獣人だと感じる時がある。
契約とは双方に条件を飲んだ結果だ。
それが魔力を介して行われて入れば
魔法契約となり、縛りが強くなる
それは、絆も強くなることだと耳にしていた。
獣人の本能で、主従を求めるものがある。
私の忠誠、いや尊敬と言い換えるべき相手は
養父だが、主従としたのはヴェーネン家の当主だ。
その当主の行方が分からなくなってから
もう14年過ぎた。
当主を探している最中に魔鳥に
連れられてきた赤児が14歳になっている。
セリと名がつけられ、この屋敷で使用人の手で育てられた子供。
当主の子かはわからなかった。
紋章付きの持ち物が一緒にあっただけでは決められない。
相変わらず当主は見つからず、痕跡をもつけたのも
ここ最近と言える。
これだけ長期間、音沙汰も目撃も怪しい当主の
生存を信じているのは、魔法契約による繋がりが消えていない
のが理由のひとつだった。
もう一つは、ガイサスが諦めていないことか。
先代の最期を看取った時に、後継を頼むと当主補佐となり
今までヴェーネン家を支えてきた。
思い入れもひとしおなのだろう。
その想いを支えたいと思う。
家の延命にセリ、セリュートを利用したと心を痛めている。
私にとってみればあの子も
共犯だ。
このヴェーネン家という貴族の家の骨組みを
なんとか残そうとした。それだけ。
“当主を支える”と契約は訴えている。
魔法契約は、奴隷魔法として知られているものもあるが
種族によって伝えられる、従属の意をあらわす誓いのようなもの。
その光が失っていない以上、私はこの家に仕え続ける。
養父もそうだろう。
そのために、セリ様に居てもらうのだ。
バリスが止めれば、養父も諦めてしまうだろうか?
しかし、
まだ望みはある筈だ。
そのためにもセリ様にしっかりしていただきたいのだが。
番の認定をされるとは。
相手は高ランクの冒険者。
利用価値はあるかもしれない。
未成年で親の庇護下と諭せば、しばらくの時間は稼げるだろう。
私は番への本能は薄いらしく、行動原理が
よくわからないが
ヴェーネン家の執事として、相手の行動を諫めていけば良い。
ああ。はやく父の力になれれば良いのだが
屋敷を空けるわけには行かず、バリスも帰ってきた。
当主の場所の特定のできたと言っても
過酷な北の地だ。難航するだろう。
ハア。
色々と、ままならないものだ。
2
お気に入りに追加
182
あなたにおすすめの小説
もう長くは生きられないので好きに行動したら、大好きな公爵令息に溺愛されました
Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユリアは、8歳の時に両親を亡くして以降、叔父に引き取られたものの、厄介者として虐げられて生きてきた。さらにこの世界では命を削る魔法と言われている、治癒魔法も長年強要され続けてきた。
そのせいで体はボロボロ、髪も真っ白になり、老婆の様な見た目になってしまったユリア。家の外にも出してもらえず、メイド以下の生活を強いられてきた。まさに、この世の地獄を味わっているユリアだが、“どんな時でも笑顔を忘れないで”という亡き母の言葉を胸に、どんなに辛くても笑顔を絶やすことはない。
そんな辛い生活の中、15歳になったユリアは貴族学院に入学する日を心待ちにしていた。なぜなら、昔自分を助けてくれた公爵令息、ブラックに会えるからだ。
「どうせもう私は長くは生きられない。それなら、ブラック様との思い出を作りたい」
そんな思いで、意気揚々と貴族学院の入学式に向かったユリア。そこで久しぶりに、ブラックとの再会を果たした。相変わらず自分に優しくしてくれるブラックに、ユリアはどんどん惹かれていく。
かつての友人達とも再開し、楽しい学院生活をスタートさせたかのように見えたのだが…
※虐げられてきたユリアが、幸せを掴むまでのお話しです。
ザ・王道シンデレラストーリーが書きたくて書いてみました。
よろしくお願いしますm(__)m
女嫌いな辺境伯と歴史狂いの子爵令嬢の、どうしようもなくマイペースな婚姻
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
恋愛
「友好と借金の形に、辺境伯家に嫁いでくれ」
行き遅れの私・マリーリーフに、突然婚約話が持ち上がった。
相手は女嫌いに社交嫌いな若き辺境伯。子爵令嬢の私にはまたとない好条件ではあるけど、相手の人柄が心配……と普通は思うでしょう。
でも私はそんな事より、嫁げば他に時間を取られて大好きな歴史研究に没頭できない事の方が問題!
それでも互いの領地の友好と借金の形として仕方がなく嫁いだ先で、「家の事には何も手出し・口出しするな」と言われて……。
え、「何もしなくていい」?!
じゃあ私、今まで通り、歴史研究してていいの?!
こうして始まる結婚(ただの同居)生活が、普通なわけはなく……?
どうやらプライベートな時間はずっと剣を振っていたい旦那様と、ずっと歴史に浸っていたい私。
二人が歩み寄る日は、来るのか。
得意分野が文と武でかけ離れている二人だけど、マイペース過ぎるところは、どこか似ている?
意外とお似合いなのかもしれません。笑
傷物令嬢シャルロットは辺境伯様の人質となってスローライフ
悠木真帆
恋愛
侯爵令嬢シャルロット・ラドフォルンは幼いとき王子を庇って右上半身に大やけどを負う。
残ったやけどの痕はシャルロットに暗い影を落とす。
そんなシャルロットにも他国の貴族との婚約が決まり幸せとなるはずだった。
だがーー
月あかりに照らされた婚約者との初めての夜。
やけどの痕を目にした婚約者は顔色を変えて、そのままベッドの上でシャルロットに婚約破棄を申し渡した。
それ以来、屋敷に閉じこもる生活を送っていたシャルロットに父から敵国の人質となることを命じられる。
侯爵令嬢は弟の代わりに男として生きることを決めました。
さらさ
恋愛
ある時、自分のミスで双子の弟を失ったレティシアは代わりに自分が男(クリストファー)として生きて行くと決断する。
クリストファーが生きていると信じ、探そうとするレティシアと、そんな彼女が男だと思いながらも自然と惹かれ、苦悩する男達と、可愛い男だと思って自分のものにしようと寄ってくる男達との攻防の物語です。
※作中にはBL表現も出てきます。
苦手な方はご遠慮下さいませm(_ _)m
公爵令嬢になった私は、魔法学園の学園長である義兄に溺愛されているようです。
木山楽斗
恋愛
弱小貴族で、平民同然の暮らしをしていたルリアは、両親の死によって、遠縁の公爵家であるフォリシス家に引き取られることになった。位の高い貴族に引き取られることになり、怯えるルリアだったが、フォリシス家の人々はとても良くしてくれ、そんな家族をルリアは深く愛し、尊敬するようになっていた。その中でも、義兄であるリクルド・フォリシスには、特別である。気高く強い彼に、ルリアは強い憧れを抱いていくようになっていたのだ。
時は流れ、ルリアは十六歳になっていた。彼女の暮らす国では、その年で魔法学校に通うようになっている。そこで、ルリアは、兄の学園に通いたいと願っていた。しかし、リクルドはそれを認めてくれないのだ。なんとか理由を聞き、納得したルリアだったが、そこで義妹のレティが口を挟んできた。
「お兄様は、お姉様を共学の学園に通わせたくないだけです!」
「ほう?」
これは、ルリアと義理の家族の物語。
※基本的に主人公の視点で進みますが、時々視点が変わります。視点が変わる話には、()で誰視点かを記しています。
※同じ話を別視点でしている場合があります。
勘当されたい悪役は自由に生きる
雨野
恋愛
難病に罹り、15歳で人生を終えた私。
だが気がつくと、生前読んだ漫画の貴族で悪役に転生していた!?タイトルは忘れてしまったし、ラストまで読むことは出来なかったけど…確かこのキャラは、家を勘当され追放されたんじゃなかったっけ?
でも…手足は自由に動くし、ご飯は美味しく食べられる。すうっと深呼吸することだって出来る!!追放ったって殺される訳でもなし、貴族じゃなくなっても問題ないよね?むしろ私、庶民の生活のほうが大歓迎!!
ただ…私が転生したこのキャラ、セレスタン・ラサーニュ。悪役令息、男だったよね?どこからどう見ても女の身体なんですが。上に無いはずのモノがあり、下にあるはずのアレが無いんですが!?どうなってんのよ!!?
1話目はシリアスな感じですが、最終的にはほのぼの目指します。
ずっと病弱だったが故に、目に映る全てのものが輝いて見えるセレスタン。自分が変われば世界も変わる、私は…自由だ!!!
主人公は最初のうちは卑屈だったりしますが、次第に前向きに成長します。それまで見守っていただければと!
愛され主人公のつもりですが、逆ハーレムはありません。逆ハー風味はある。男装主人公なので、側から見るとBLカップルです。
予告なく痛々しい、残酷な描写あり。
サブタイトルに◼️が付いている話はシリアスになりがち。
小説家になろうさんでも掲載しております。そっちのほうが先行公開中。後書きなんかで、ちょいちょいネタ挟んでます。よろしければご覧ください。
こちらでは僅かに加筆&話が増えてたりします。
本編完結。番外編を順次公開していきます。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!
冷酷非情の雷帝に嫁ぎます~妹の身代わりとして婚約者を押し付けられましたが、実は優しい男でした~
平山和人
恋愛
伯爵令嬢のフィーナは落ちこぼれと蔑まれながらも、希望だった魔法学校で奨学生として入学することができた。
ある日、妹のノエルが雷帝と恐れられるライトニング侯爵と婚約することになった。
ライトニング侯爵と結ばれたくないノエルは父に頼み、身代わりとしてフィーナを差し出すことにする。
保身第一な父、ワガママな妹と縁を切りたかったフィーナはこれを了承し、婚約者のもとへと嫁ぐ。
周りから恐れられているライトニング侯爵をフィーナは怖がらず、普通に妻として接する。
そんなフィーナの献身に始めは心を閉ざしていたライトニング侯爵は心を開いていく。
そしていつの間にか二人はラブラブになり、子宝にも恵まれ、ますます幸せになるのだった。
【完結】田舎育ちの令嬢は王子様を魅了する
五色ひわ
恋愛
エミリーが多勢の男子生徒を従えて学院内を歩いている。この国の王子であるディランは注視する案件だと兄のチャーリーと話しあっていた。それなのに……
数日後、チャーリーがエミリーの取り巻きに加わってしまう。何が起こっているのだろう。ディランは訳が分からず戸惑ったまま、騒動の中心へと引きづりこまれていくのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる