上 下
75 / 98
それぞれの思惑

当主代理 セリュート

しおりを挟む
最近、でもないか。

見合いの手紙が増えている。
貴族なら婚約者がいて当たり前とこの辺境の貴族でも
その枠に入るらしい。

いや辺境だからこそ、嫁入りしてくれるお嫁さんを
捕まえたいらしい。

王都の社交場で囁かれる囀りを手紙で
友人が教えてくれる。女の子だ。

私が主に手紙のやり取りをしている3人。

家の婚約者たち。

私を婚約者にと言い出す。
勢力的にありなのか疑問だったけど、

子供を1人ずつ継がせれば良いらしい。

へぇ。と思ったね。
まあ、いつもの『当主不在ですので…』を使ったけど。
私はどの家にも入らない方が良いでしょ?

そう遠回しに言ったら、優秀な人材はいつでも歓迎って。まあ褒められた?

ヴェーネン家の跡取りとしてお茶会に参加したのはデヴュー前。
男の子が1人いるとわざと目立って振る舞った。

そのおかげで、家に来た釣書は女の子だった。

それが。
子爵夫婦が広めたのだろう釣書の相手が兄やら弟になった。

まあ想定の範囲内だ。
後継と認める書類にも審議がかけられそうだ。

人を派遣してヴェーネンの次期当主に
私が、女のセリュートがなるのはいかがなものか?

と物言いがつくだろうと思った。

子爵夫婦の後ろにいる貴族や貴族院の印象も悪いだろう。
それでも四家の均衡を保つためという建前でやってきた。

それも私が、16歳までが限度だろう。

社交デビューの年齢で、大人として認められる。
当主の座に就いた後継ぎもいるにはいるが、後ろ盾があるだ。

女で当主となった人は遥か昔、戦時中にあっただけらしいと
調べた結果だ。

まあ探せばもっといるかもしれないけど、
大半が血の繋がった兄妹だったり、姉の立場の人。

私は娘、それさえ当主の認知がない。

会ったかどうかさえ、分からない。それは、致命的だ。
必ずそこを突かれるだろう。


私にだって事実はl分からない。
実子ではない可能性を、よく考えた。

そうだった場合、出て行くつもりはある。
ここにいるのは、育ててもらった恩とまだ役割があると思えたから。

この家に、次期当主ともくされる存在が必要だと思ったから。
でなけば、ここに皆居られなくなる。自身も含めて。


そう思ったから、ここにいる。
でも限界はある。

当主ができること
決定、採決、存在意義。


私にはその選択肢を与えられていない。
それが歯痒い。

なぜ自分の未来を
自分で決められないのか?

その決心も行動力も
まだ会ったことのない当主に否定されれば

意味もなく、消えてしまう。

それが悲しいのか、悔しいのかわからない。

今だけは、セリュートがこの屋敷の主人。
それが露と消えるのは来るべき日までなんだ。


それが虚しい。
泣ければまだ、マシになる気がするけど

どう泣けば良いんだろう?
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【完結】君は強いひとだから

恋愛 / 完結 24h.ポイント:9,741pt お気に入り:3,979

【完結】私の婚約者はもう死んだので

恋愛 / 完結 24h.ポイント:333pt お気に入り:3,346

趣味を極めて自由に生きろ! ただし、神々は愛し子に異世界改革をお望みです

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:36,296pt お気に入り:12,312

「聖女なんて気楽なものよ」

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:49pt お気に入り:589

信じないだろうが、愛しているのはお前だけだと貴方は言う

jun
恋愛 / 完結 24h.ポイント:340pt お気に入り:1,396

噂の悪女が妻になりました

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:7,121pt お気に入り:1,850

処理中です...