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閉ざされる屋敷

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“当主として相応しい行動を”
事あるごとに言われて

「サディスは本当に私が当主になると思っているの?」

自嘲気味に返すしかなかった。

“当主”の後継に書類上はなったものの

性別を誤魔化して通した自覚がある。

会えばバレる
もう知られている?

女が戦時の遠い昔にあっただけ。

私の身の振り方で残るのは結婚させられて、
ここに残る?

憂鬱な気分だった。


このドレスたちも。
子爵夫人に送りつけられたフリフリ甘々ドレス

嫌がらせだと思ったんだけど
夫人の趣味らしい。

相容れない。


商人ということで換金するといくらになるか
シュルトに聞いてみることにした

「お時間いただけますか?」

「アラ、何の御用カシラ?」
と柔らかく微笑むのは、お客用のものだろう。
服飾の職人さんに多い話し方で、まだ打ち解けるの遠い。

ドレスルームに案内した
私の用意したものは3着だけ。

スタンダードな形
サイズを直して着ることになるだろう

王都の商人さんの評価はいかに?

「これはまた・・可愛らしいデザイン、ね?」

フリフリでピンク、花がついていての感想にしては
優しい評価だ。

「贈りつけられた物で、着用はしていないんです。
パーツにして売れないかな、と。」

「着る予定は?」
「ないですね」

当主らしくないのと、はっきり言って好みから程遠い。

動きやすい服。メイド服とか良かったけど。
もう着れないな。


「んんー。リメイクできないカシラ?
このパーツとあの色で…」

「何かに使えそうですか?」

「ソウネ、こういう…(デザインを描いて見せてくれる)」

「シンプルで良いですね。」
「3着はできそうよ?良ければやらせてくれない?」

お茶会、突然の訪問用、その予備。
あったら助かるなあ。

「サイズが心配なのですが」
身長が伸びているのと、デザイン的に細身の部分が筋肉でキツい。

「アラ成長期だものネ?採寸して出せるドレスと
袖ならデザインを変えれば着れると思うわ。」

買い物もできない土地だ。
ドレスがないのも心許ないし頼んでしまおうか?

「どれくらいお支払いすれば?」

「んー暇つぶしだし、ドレスを何着かくれない?」

このフリフリピンクを?というのを飲み込み
使えるのか聞いてみる。

「対象の年齢を下げれば、良いドレスなのヨ?
貴女には、もうお別れするデザインね」

確かに、小さい子なら可愛く着こなしてくれそうだ。

「そういうとなら。
お願いします。多少ならリボンや素材がありますが見てみませんか?」

刺繍糸や木ボタンなど集めてあった。
気軽な買い物より、間に合わせのパーツで過ごすことのが多い辺境で

リボンやレースは、先先代の婦人のものだが
しまいっぱなしより使った方が喜ばれるだろう。


「レトロねえ」

刺繍糸を染めて使うのが趣味だったらしい。
その名残りが仕舞い込まれていた。

少々埃っぽくなっていたので窓を開けた。

風が通る表の窓
ここの景色を見ながら刺繍をして過ごしていたのかなあ。

私は残念ながら刺繍はできないが
この景色は好きだと思う。


使えるレースや気になる糸があったらしく
それを預けて、部屋を出て行った。

ところで、ロードに捕まった。
またか。


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