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『竜の翼』

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バリスの王都入りは早かった。

元冒険者の行動力と人脈、
料理長の仕入れと称して動けばそれほど目立つこともなく
警戒もされずに、屋敷のたどり着いた。

「誰だ!?」と警戒する知り合いの冒険者に

「俺だ。」と顔を見せ、その警護の様子に緊迫はないと感じ取った。


事態は思ったより、切迫していないようだと感じる。
それを目で確認するためガイサスの療養する寝室に入った。

「バリスか?」
気配で察知される。この男の胆力は現役だ。

頼もしくも思うもベッドの上だ。これまでの経緯を聞くと

襲撃者の落とした爆発物から道行く人を守ったところ
頭を打ったらしく、医者に安静を言い渡されていると。
元気だな

「ガイサス、セリュート様からの書類だ。」託された書類を確かに渡した。

「魔物の氾濫で何かあったか?

心配だと態度に出る様子が。
同じ独り身だが、よっぽどセリの父親らしいと思う。


渡した書類に
すぐサインをし、貴族院に届けるよう頼まれる。


未来の当主としてセリュートが頼もしくもあり
冒険者としての楽しそうなセリも消えて欲しくないと

わがままを言わない代わりに
俺が願うしかないだろう



『次のヴェーネン家の
当主をセリュート・ヴェーネンと認める』


これだけで、戦況をひっくり返して
他の貴族に太刀打ちできる?

今までしなかったのは、セリュートに実績がなかったのと若すぎる点だ。
ご丁寧に
貴族の推薦状までついている。

ツァルト家とトベルタ家はわかる。魔導具で交渉したのだろうが、
ジョルバン家まである!
あの腹黒親父をどう説得したんだ?

口元が緩んで、セリの成長に嬉しくなる。
帰ったら祝いの食事を豪勢に作ってやろうと決めたバリスだった。

一方、
子爵夫婦とダニエルがいない屋敷を
のびのびと過ごしていた。

氾濫の後は監視を巡回させるものの、
安定している。
少しランクの低いパーティも稼げるので、

屋敷は
宿業みたいになっている
慣れて顔馴染みが多いので大きなトラブルはない。

小さなものは小屋の屋根の破損があったが、体で払ってもらった。
木を切りだし、工具で補修だ。

(まあいっか)というできだ。

冒険者が収めてくれる一部を当てているため
私が出なくても備蓄が増えていく。少し寂しい。


保存食づくりも屋敷の使用人に特別手当てを出してやっているが
今回、バリスが抜けているので、冒険者にも依頼する。

仕事中はメイドにアプローチするなと釘をさすのが仕事だった。


この時期を過ぎれば、寒気で魔物も森の恵みも眠りにつく。
そうなれば篭るように屋敷で過ごすが
今年はじっくり魔導具の研究を進められそうだ。


なんとか、子爵夫婦の使用人たちに頑張ってもらい、王都の冬の滞在を
して欲しい。なんなら王都の屋敷も貸せる。
そこはガイサスおじさんへの説得次第だが。私はオッケーを出すよ!

ガイサスおじさんから手紙が届く。
無事の知らせと、バリスをもう少し貸して欲しい
旨が記されてあった

(今のところ大丈夫だ。)
戦力が心配かと思ったが、

冒険者の紹介?
会ったことがない人たちだ。


高ランクの『竜の翼』

竜を冠した名前に、歴戦の雰囲気を感じるが


(この時期に珍しい)
社交の時期が終わりなのと森も静かになる
冒険者業としては下火の時期。

よみすすめると、
客人として?


噂では
ダンジョン専門ときくが、問題ない冒険者パーティだと
簡単なメンバーの情報が載っていた。


冒険者ギルドでの紹介文付きだ
これは、無碍にできないので了承するしかない案件だ。

寒さで閉ざされる時期に、
初めての冒険者パーティを受け入れることになりそうだった。
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