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貴族の社交

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お茶会から帰ってきたセリは
屋敷に居ることを避けた。

子爵夫婦とは接触をしないことが一番良い、という結論だ。
セリュートが子供であることは変えられず、そして事実であり

(…非力なものだ。)

子爵の話で私は『どうしようもない、我がままな後継』になっている。

“大人の言うことを聞きかない、
人の言うことを聞けない人間が後継で良いのか?”

と洗脳する勢いで繰り返している。
使用人には押し付けて悪いが、私は会わないことにした。


しかし、
1人、抵抗しないのも腹立たしい。ということで

冒険者としてのレベル上げに精を出していた。


年齢は変えられないが
冒険者のランクには、相応の責任と信頼が生まれる。

今やれることに集中する。
自分の身を守る力も必要になってくるのだ
実際狙われたし、ね。


ランクアップの方法は。慣例というものもあるが
実力主義が基本だ。

成果をあげていれば、年齢とランクに合わなくても
評価は上が…

「またか。セリ!」

ギルドマスターに捕まって、持ち上がった体。

「保護者は?」と誰かを探すエルフ。
隠匿魔法で背後をとってきた。その不覚でセリは唸ってしまう。

このギルマスには、バレている。
セリが貴族であることも
ヴェーネン家の領域に森があること

それが
<高ランク推奨>だということも。


私が単独で森に入るのを渋る

森の人、エルフ族で
お爺ちゃんと言える年齢らしい。見た目は料理長のバリスより若く見えるのに。


見た目は細い気がするが、強者で
魔法使いでも前に出ていくタイプと予想している。

この田舎の地にいるのが珍しいくらい?いや、
森があるからこその配置か。

ヴェーネン家への宿泊を紹介の対応をてくれる。
優秀な人なんだが
セリが冒険者として来たら、お説教が長い。

・・そこは年齢相応なのかな?

「保護者はどうした?」と再度言われ
「まだ顔を見たことがない。」と返せば、

「10年も帰っていない奴を保護者とは言わん!
執事か料理長だ!」

訂正され、それに納得する。
家の事情もマルッと知られているのは、バリス(料理長)が喋ったかな。

何故こうも突っかかるのか。
冒険者は子供の夢だろう?私が登録しても問題ないはずだ。
女だから?と言う言葉を飲み込む。

以前『女の子の夢でもある危険のある仕事だが、保護者の許可はいる』
と諭された。

だが、一度帰るのは面倒な距離だ。そもそも、自己責任の冒険者稼業に
親の許可など要らんだろう。

まあ、全部が私を心配して出たセリフだった。


顔馴染みの冒険者ギルドマスターは、
連日来ている初級冒険者を気にかけているだけ。

領主は依頼を出すことがある。当然挨拶もしていてエルフなので
何かと相談した。本を貸し出すのを条件にと破格の依頼料だろう。

小さな子供の成長を慈しんでいた。


そこに甘えたい気持ちと、距離が必要だと考えをセリは持っている。

この軽口も慣れている。
商業ギルド長との面会より気が抜ける。

騒がしていたセリ。
ギルド内に、新顔を見つけた。


女性の冒険者はいるが
パーティに1人いても珍しいくらいだ。
あの佇まいは相当のレベルだと思う。

顔を知らない冒険者はいないくらい詳しいセリ。
セリュートとしての仕事でもある『戦力の把握』だ。

依頼を出す方の関係で
この地にくる冒険者、そのパーティーは頭に入っている。


どの容姿とも合わない。


獣人の女性たちだった。
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