上 下
51 / 98
貴族の社交

9-2

しおりを挟む
貿易街のある貴族の屋敷で開かれているお茶会は
大したトラブルもなく賑わっていた。

マナーを学んだばかりとは言え、貴族の子息と令嬢たちだ。
自分の家を背負っているという気概と、その可愛い傲慢さはお茶会のスパイスでしかない。

例年通りの様相ではあったが
4人の貴族子息が、お茶会から抜け出していた。

お茶会という名の自由なお見合いに疲れ果て
“交流会”と銘打ってお疲れ気味の4人が控え室に集まった。

「ちっ女なんて!」

私の予想を裏切らないアレイは社交的ながらも
武骨さが一般的な貴族には、受け付けないのだよ。
乱暴さ、粗雑さに見えてしまう損な性格だとセリュートは思った。

その横で、

「怖い」と疲れた様子のカイル。
(連れ込まれそうだったもんな?)
部屋に連れ込まれそうな危ない目に合っていた。前から狙われていたのか?
さりげなく救出しといた。

サンタナは、煤けて無言でいる。

3人とも話し相手も得られていないようだ。
私?おしゃべりを楽しんでたよ。

勉強した出身地方の話を詳しく聴いて
令嬢のドレスや髪型を褒め、王都の流行の話を聴き、聞き…
衝突を未然に回避、衝突しても話を逸らした。

・・流石に疲れたわ。

辺境に来てくれるお嫁さん探し、苦労するねえ。
自分は関係ないという態度を隠しセリュートは宣言した。
「よし、未来の嫁を占ってやろう。」

「偉そうに!」と噛みつきそうなアレイに

「私のとこは、どこの令嬢でも権力を持っていては困るんだよ。

そこのところ、アレイは自由だろ?そこまで下位じゃなきゃ。
選り取り見取りだ。」と躱す。

座り直したアレイに思い付きを話す。

「挨拶の後、最初くらい褒めろ。1個で良い。どうせ直ぐにメッキが剥げる。
強気で物申す女性、騎士の家系の女の子を探してみろ
甘言で持ち上げるのはやめとけ。」

「なんでだよ。」

「親父さん、元気か?」
ツァルト家の当主は女性と浮名を流している。
それを指摘するとぐっと黙った。

次はカイル
「顔で釣れるのは全部なしだな」

「どんな子がいるの?」

「長女以外の子で、聡明な子。腹芸できそうな子を探してみな。
特徴は、影に隠れているけど、周りを良く観察している子。たぶん君が近づけば逃げる。
目立つ男はお断りってね。」

微妙な顔をして紅茶を飲んだ。


「サンタナは誰かと話せた?」
青い顔をしてブンブンと横に振る。

「んー。会話ができる子だな
変わった趣味を持っている子に声をかけてみろ。
趣味を極めたいタイプだ。そういう子は計算できる。物事の色々をな。

性格は悪くないんだ。自分の領域のことを話せて、辺境にきてくれる思慮深い女の子を
見つけ出せ。色々考えて嫁に来てくれる。」

「お前はどうなんだ?」
なんだかんだで面倒見が良いアレイがセリュートに聴いた。

「高ランクの冒険者でも引っ掛けるかな。」



お茶会は、あらぬところで思惑を持って終了した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

そんなに聖女になりたいなら、譲ってあげますよ。私は疲れたので、やめさせてもらいます。

木山楽斗
恋愛
聖女であるシャルリナ・ラーファンは、その激務に嫌気が差していた。 朝早く起きて、日中必死に働いして、夜遅くに眠る。そんな大変な生活に、彼女は耐えられくなっていたのだ。 そんな彼女の元に、フェルムーナ・エルキアードという令嬢が訪ねて来た。彼女は、聖女になりたくて仕方ないらしい。 「そんなに聖女になりたいなら、譲ってあげると言っているんです」 「なっ……正気ですか?」 「正気ですよ」 最初は懐疑的だったフェルムーナを何とか説得して、シャルリナは無事に聖女をやめることができた。 こうして、自由の身になったシャルリナは、穏やかな生活を謳歌するのだった。 ※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」にも掲載しています。 ※下記の関連作品を読むと、より楽しめると思います。

もう長くは生きられないので好きに行動したら、大好きな公爵令息に溺愛されました

Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユリアは、8歳の時に両親を亡くして以降、叔父に引き取られたものの、厄介者として虐げられて生きてきた。さらにこの世界では命を削る魔法と言われている、治癒魔法も長年強要され続けてきた。 そのせいで体はボロボロ、髪も真っ白になり、老婆の様な見た目になってしまったユリア。家の外にも出してもらえず、メイド以下の生活を強いられてきた。まさに、この世の地獄を味わっているユリアだが、“どんな時でも笑顔を忘れないで”という亡き母の言葉を胸に、どんなに辛くても笑顔を絶やすことはない。 そんな辛い生活の中、15歳になったユリアは貴族学院に入学する日を心待ちにしていた。なぜなら、昔自分を助けてくれた公爵令息、ブラックに会えるからだ。 「どうせもう私は長くは生きられない。それなら、ブラック様との思い出を作りたい」 そんな思いで、意気揚々と貴族学院の入学式に向かったユリア。そこで久しぶりに、ブラックとの再会を果たした。相変わらず自分に優しくしてくれるブラックに、ユリアはどんどん惹かれていく。 かつての友人達とも再開し、楽しい学院生活をスタートさせたかのように見えたのだが… ※虐げられてきたユリアが、幸せを掴むまでのお話しです。 ザ・王道シンデレラストーリーが書きたくて書いてみました。 よろしくお願いしますm(__)m

女嫌いな辺境伯と歴史狂いの子爵令嬢の、どうしようもなくマイペースな婚姻

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
恋愛
「友好と借金の形に、辺境伯家に嫁いでくれ」  行き遅れの私・マリーリーフに、突然婚約話が持ち上がった。  相手は女嫌いに社交嫌いな若き辺境伯。子爵令嬢の私にはまたとない好条件ではあるけど、相手の人柄が心配……と普通は思うでしょう。  でも私はそんな事より、嫁げば他に時間を取られて大好きな歴史研究に没頭できない事の方が問題!  それでも互いの領地の友好と借金の形として仕方がなく嫁いだ先で、「家の事には何も手出し・口出しするな」と言われて……。  え、「何もしなくていい」?!  じゃあ私、今まで通り、歴史研究してていいの?!    こうして始まる結婚(ただの同居)生活が、普通なわけはなく……?  どうやらプライベートな時間はずっと剣を振っていたい旦那様と、ずっと歴史に浸っていたい私。  二人が歩み寄る日は、来るのか。  得意分野が文と武でかけ離れている二人だけど、マイペース過ぎるところは、どこか似ている?  意外とお似合いなのかもしれません。笑

傷物令嬢シャルロットは辺境伯様の人質となってスローライフ

悠木真帆
恋愛
侯爵令嬢シャルロット・ラドフォルンは幼いとき王子を庇って右上半身に大やけどを負う。 残ったやけどの痕はシャルロットに暗い影を落とす。 そんなシャルロットにも他国の貴族との婚約が決まり幸せとなるはずだった。 だがーー 月あかりに照らされた婚約者との初めての夜。 やけどの痕を目にした婚約者は顔色を変えて、そのままベッドの上でシャルロットに婚約破棄を申し渡した。 それ以来、屋敷に閉じこもる生活を送っていたシャルロットに父から敵国の人質となることを命じられる。

侯爵令嬢は弟の代わりに男として生きることを決めました。

さらさ
恋愛
ある時、自分のミスで双子の弟を失ったレティシアは代わりに自分が男(クリストファー)として生きて行くと決断する。 クリストファーが生きていると信じ、探そうとするレティシアと、そんな彼女が男だと思いながらも自然と惹かれ、苦悩する男達と、可愛い男だと思って自分のものにしようと寄ってくる男達との攻防の物語です。 ※作中にはBL表現も出てきます。 苦手な方はご遠慮下さいませm(_ _)m

公爵令嬢になった私は、魔法学園の学園長である義兄に溺愛されているようです。

木山楽斗
恋愛
弱小貴族で、平民同然の暮らしをしていたルリアは、両親の死によって、遠縁の公爵家であるフォリシス家に引き取られることになった。位の高い貴族に引き取られることになり、怯えるルリアだったが、フォリシス家の人々はとても良くしてくれ、そんな家族をルリアは深く愛し、尊敬するようになっていた。その中でも、義兄であるリクルド・フォリシスには、特別である。気高く強い彼に、ルリアは強い憧れを抱いていくようになっていたのだ。 時は流れ、ルリアは十六歳になっていた。彼女の暮らす国では、その年で魔法学校に通うようになっている。そこで、ルリアは、兄の学園に通いたいと願っていた。しかし、リクルドはそれを認めてくれないのだ。なんとか理由を聞き、納得したルリアだったが、そこで義妹のレティが口を挟んできた。 「お兄様は、お姉様を共学の学園に通わせたくないだけです!」 「ほう?」 これは、ルリアと義理の家族の物語。 ※基本的に主人公の視点で進みますが、時々視点が変わります。視点が変わる話には、()で誰視点かを記しています。 ※同じ話を別視点でしている場合があります。

勘当されたい悪役は自由に生きる

雨野
恋愛
 難病に罹り、15歳で人生を終えた私。  だが気がつくと、生前読んだ漫画の貴族で悪役に転生していた!?タイトルは忘れてしまったし、ラストまで読むことは出来なかったけど…確かこのキャラは、家を勘当され追放されたんじゃなかったっけ?  でも…手足は自由に動くし、ご飯は美味しく食べられる。すうっと深呼吸することだって出来る!!追放ったって殺される訳でもなし、貴族じゃなくなっても問題ないよね?むしろ私、庶民の生活のほうが大歓迎!!  ただ…私が転生したこのキャラ、セレスタン・ラサーニュ。悪役令息、男だったよね?どこからどう見ても女の身体なんですが。上に無いはずのモノがあり、下にあるはずのアレが無いんですが!?どうなってんのよ!!?  1話目はシリアスな感じですが、最終的にはほのぼの目指します。  ずっと病弱だったが故に、目に映る全てのものが輝いて見えるセレスタン。自分が変われば世界も変わる、私は…自由だ!!!  主人公は最初のうちは卑屈だったりしますが、次第に前向きに成長します。それまで見守っていただければと!  愛され主人公のつもりですが、逆ハーレムはありません。逆ハー風味はある。男装主人公なので、側から見るとBLカップルです。  予告なく痛々しい、残酷な描写あり。  サブタイトルに◼️が付いている話はシリアスになりがち。  小説家になろうさんでも掲載しております。そっちのほうが先行公開中。後書きなんかで、ちょいちょいネタ挟んでます。よろしければご覧ください。  こちらでは僅かに加筆&話が増えてたりします。  本編完結。番外編を順次公開していきます。  最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

冷酷非情の雷帝に嫁ぎます~妹の身代わりとして婚約者を押し付けられましたが、実は優しい男でした~

平山和人
恋愛
伯爵令嬢のフィーナは落ちこぼれと蔑まれながらも、希望だった魔法学校で奨学生として入学することができた。 ある日、妹のノエルが雷帝と恐れられるライトニング侯爵と婚約することになった。 ライトニング侯爵と結ばれたくないノエルは父に頼み、身代わりとしてフィーナを差し出すことにする。 保身第一な父、ワガママな妹と縁を切りたかったフィーナはこれを了承し、婚約者のもとへと嫁ぐ。 周りから恐れられているライトニング侯爵をフィーナは怖がらず、普通に妻として接する。 そんなフィーナの献身に始めは心を閉ざしていたライトニング侯爵は心を開いていく。 そしていつの間にか二人はラブラブになり、子宝にも恵まれ、ますます幸せになるのだった。

処理中です...