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変化

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穏やかな日々とは言いがたい
招いていない客が本館に居ついていることが原因だ。

夫人は度々、ひとりのお茶会を楽しみ
子爵はうちの使用人に文句を言うのが趣味らしい。

はやく追い出したい。

屋敷で気が置けなくなったので
日中、森に行くことが増えた。
夜、帰ってくるのであの夫婦と顔を合わせるのは少なくて済む。


屋敷では、文書や貴重品の扱いを厳重にした。
それというのも…

「サディスの引き抜き!?」

「はい。子爵代の方が熱心にお声がけしてきまして」

他の使用人や冒険者にも声をかけられたという報告だった。

これは、看過できない!
「ガイサスおじさんから連絡は?」
再度サディスに聴くも返事は来ていない。

対応に困っているのは、背後関係や関わりの問題だ。
ただお帰り願うのは簡単だ。

腕っぷしで負ける事はない。
しかし後々足を引っ張られるのは避けたい。
それには情報が欲しいのと、ガイサスおじさんがいてくれた方が良い。

子供のわがままで
なんて言われて家を貶められる可能性もある。

この地で貴族の社交なんて重要視されないが
周り回って、おじさんが動きづらくなる。

それにしても、連絡が来ないとは。
妨害されてる?

連絡手段は徹底している。
軍の経験だろうか。

これは異常事態として、
冒険者に頼んでガイサスおじさんの様子を見てきてもらうことにした。




貴族のやりようを甘くみてはいけない。

相手を甘くみては、致命傷を食らうこともあるのだ。


今は耐えるところ

頭ではわかっているものの
なかなか、もどかしい。


狩りに行き、獲物を夕食に出してもらおうと
料理長の元へ来ていた。


夫人に会ってしまった。

「アラ、お帰りなさい?かしら。」
「ええ。今帰りました。」
素っ気なく、しかし失礼のない程度に応える。


「その格好は…お外の森へ?子供が行くところではないと思うのだけど。」

それは王都の子どもでしょう?

この、“都会なら、不便なく屋敷にいれば良いのに”
と言いようが合わない。

ここは辺境だ。
魔物の脅威もある。

食に関しては、もちろん買い物もあるが
森の恵みをいただくことが常だ。


夫人はお茶の葉を持ち込みのものを使い、
ドレスを毎日変えて、飾り立てているが

この辺境で何のためになるんだろう?
貴族の矜持だろうか。

そんなものより、備蓄や研究をしたい。


「今日は、良い成果があったのですよ!」
嬉しそうに、他意なく報告する様にソレを収納鞄から取り出した。


フォレストクックの丸々とした体を見せる。
その2羽に頭はなかった。

血抜きしたからね。

「き、キャアアアァァァ!!」悲鳴を上げ
逃げ出した夫人を見送り

キッチンから覗きていたバリスに
夕食のおかずを託した。
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