【完結済み】当主代理ですが、実父に会った記憶がありません。

変化

8-1

貴族の子息たちと顔合わせをした後も
屋敷に帰れば、普段通りの生活を送る。

勉学に領地の仕事、
そして冒険者の活動。


やっと冒険者登録ができた！
登録の名前には、“セリ”。

セリュートは使わない。前々から決めていた。
私の冒険者ギルドカードだ。

冒険者のセリは、採取も町の仕事も卒なくこなし
討伐もできたため難なく、Fランクを脱した。

そこからは、森に行く冒険者
散歩や鍛錬で行く浅い場所についていくことで


常時受け付けている依頼を消化していた。
Dランクになるまでは、こんな調子だろうと見込んでいる。
武器は弓、魔法をもっと鍛えたい。

風魔法を鍛えているところで、
雷魔法の付与を試している。

職人のおじさん曰く、筋は良いらしいので
安定してできるようにしたい。
もっと安定して付与できれば、依頼も出してくれるって。

小遣い稼ぎに良いな。

変化としては貴族子息として時たまある討伐に参加があった。
専ら、お飾りの扱いだったが。
参加していることで士気を高めるんだとか。
四家で受け持っている討伐に、ヴェーネン家も入った。

小規模の討伐や調査だけど。

その規模なので冒険者として参加することにして
かなり自由に動いていた。

ヴェーネン家の現当主探しは、北の奥地北北東の方角まで足を伸ばしているらしい。
独自の文化とコミュニティになかなか進捗が思わしくなく

ガイサスおじさんが領地を開けることが多くなっていた。
手紙でのやり取りと繁忙期の帰還と、
サディスの仕事ぶりでなんとか回っている。

私、セリュートの仕事量も増えた。
外に行く方が性に合っていると分かった。

そんな日々
そろそろ社交シーズンという頃に

貴族の乗っているだろう馬車が屋敷に向かっているのを見た。
その道の先にはヴェーネン家の屋敷しかない


(来客の予定はないはず)
でなければ、私は町のギルドに行こうとしていない。

逡巡し、帰った方が良い予感がしたので、
急いで帰ることにした。

屋敷に着き、直ぐ執務室に行く。

ノックと同時に開けた執務室では、サディスが書き仕事をしている。

「客が来る予定があった？」

「いいえ。なぜです？」

「馬車が来る。見たことない装飾だった。」

マナーを咎められことなく、考えた後
「着替えていただけますか？」サディスが言う。

セリュートは、メイドを呼び急いで支度した。


玄関では

「ここがヴェーネン家の屋敷？まあまあか。」

男が尊大な態度で宣わっていた。


「初めまして、どちら様ですか？」
セリュートが声をかける。

「田舎にいるとマナーもなっていないな！」

面識がないのだ、
この場合、名乗らない方がマナー違反だ。


サディスも知らない様子。
“田舎”というくらいなら都会からの来客？

「わざわざ田舎に何のようですか？」

来た目的もわからない
下手にお帰り願うのもまずいと思って問う。

「貴方！」

女性が来た。ご夫婦だろうか。

「遅いぞ」
「すいません」とこちらを無視する形になる。

かなり無礼な態度なのだが。
ついでにエスコートしてこないのもマナーから外れてるぞ？

どういうこと？
女性が
「行き違いがあるようですね」と意味深なことを言う。

不審を抱きながらも

「お茶でも」

用意していた席に案内した。