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貴族子息の義務

それぞれの家

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ヴェーネン家のテント近くで、セリュートはふてくされていた。
夜の見張りに加わる気満々だったのに


「子供は寝なさい」の一言でなくなった

深夜は難しい事は理解しているが自分が一番若い!と言ったら
「若いなら寝ろ」と素気無く寝床に押し込まれそうだった。

片付けや見回りに行く話もでてkてすることはあったのに
自分は戦力外。
少しの不満はあったが要望を通すことにした


「アイリスと寝たい。」と子供らしく主張した
「しょーがねえな!」とオルフの仰々しい言い方と
『他からの子供のらしいところがあるじゃないか』

生温い視線を無視して温かい被毛のアイリスと女同士、寝床で休んだセリだった。



ツァルト家の当主は
家同士の会合の後、その場でそのまま酒を飲みながら
息子アイルの話と従者の報告を思い返す。

まあまあの成果を持って帰ってきたのは良い。

ジョルバン家の息子は相変わらず主張がなく、
トベルタ家は足手まといだったと
これまた例年通りの報告と、

今回初めて参加したヴェーネン家の跡取りは
大物か、取るに満たない子供か?が気になった。

当主補佐でやってきたガイサスの名は知っていた。
武芸にも人格的にも堅苦しいタイプだと印象そのままだった。
少し老けたか?
その覇気の無さに少々肩透かしだった。

森に食い込んだ場所にあるヴェーネン家の領地に旨みはない。
しかし、あのガイサスが育てたであろう戦力には興味がある。

技術力や判断能力の良い人間が育つ。
連れてきた冒険者の能力も良さそうだ。
誘いをかけてみるか。

「そのセリュートと言ったか下につけれるか?」と息子に聞けば

微妙な顔をした。
まだまだ腹芸ができない年頃か。

「冒険者のような気質だった」と報告が上がる

とくに脅威でも手元に置きたい理由もない
様子見だな

と既にジョルバン家の動向に考えが移っていた。


そのジョルバン家では
外とは言え貴族らしい食事が出された。
報告を兼ねて
専ら新顔のセリュート・ヴェーネンに話が主だ。

「貴族としては?」

「教育はツァルト家より進んでいそうです。
弓矢の腕も良く、うちの弓兵にとも劣らない判断力です。

性格は冒険者に近いものを感じました。」

ずっと観察に徹していたカイル。
攻撃力ではなく、場を掌握する指揮官として育てている
息子の報告に及第点だろうと頷く父親。

野心家な父親は、王都の社交でも発揮している。
続いて従者が

「連れてきた冒険者とも仲良さげで
取り込みは難しいかも知れません。」

まあそこは急ぐことではない。

それぞれの家の動きが、四家の均衡を崩すものか?
動きを静観することになるようだった。



「ヴェーネン家はどうだった?」

息子のサンタナに期待はしていないトベルタ家の父親。
研究のために貴族でいる。教育など興味がない。

社交も体力もない期待外れだが
頭はそう悪くない。

ガイサスは有名な武人だが魔導具のことは素人だ。
ヴェーネン家は遠い親戚筋で魔導具で一角ひとかどの成果を出した家だ。


その再興を担う家の動向は気になった。

「魔力付与された矢を使用。あれは市場で見ない
仕様で……お抱えの魔具士がいるのかと。」

その通り、セリュートが願って、馴染みの付与魔術師に頼んだものだった。
「それくらいなら我が家でもできる」
くだらないとつきそうな話ようだった。

トベルタ家の当主は眼中にないと言った態度だった。
しかし、材料費、強度、威力のあるこの矢の可能性には気づかない。

市場に普及させるには難しいが、狩りに使うには充分な装備。
一撃の威力は、身内で使い洗練されたものになっていた。

新たなヴェーネン家の跡取り、セリュートの初対面だった面々だが
目立った衝突はない

しかし
それぞれの四家は、水中下で動き出していた。
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