上 下
43 / 98
貴族子息の義務

それぞれの家

しおりを挟む
ヴェーネン家のテント近くで、セリュートはふてくされていた。
夜の見張りに加わる気満々だったのに


「子供は寝なさい」の一言でなくなった

深夜は難しい事は理解しているが自分が一番若い!と言ったら
「若いなら寝ろ」と素気無く寝床に押し込まれそうだった。

片付けや見回りに行く話もでてkてすることはあったのに
自分は戦力外。
少しの不満はあったが要望を通すことにした


「アイリスと寝たい。」と子供らしく主張した
「しょーがねえな!」とオルフの仰々しい言い方と
『他からの子供のらしいところがあるじゃないか』

生温い視線を無視して温かい被毛のアイリスと女同士、寝床で休んだセリだった。



ツァルト家の当主は
家同士の会合の後、その場でそのまま酒を飲みながら
息子アイルの話と従者の報告を思い返す。

まあまあの成果を持って帰ってきたのは良い。

ジョルバン家の息子は相変わらず主張がなく、
トベルタ家は足手まといだったと
これまた例年通りの報告と、

今回初めて参加したヴェーネン家の跡取りは
大物か、取るに満たない子供か?が気になった。

当主補佐でやってきたガイサスの名は知っていた。
武芸にも人格的にも堅苦しいタイプだと印象そのままだった。
少し老けたか?
その覇気の無さに少々肩透かしだった。

森に食い込んだ場所にあるヴェーネン家の領地に旨みはない。
しかし、あのガイサスが育てたであろう戦力には興味がある。

技術力や判断能力の良い人間が育つ。
連れてきた冒険者の能力も良さそうだ。
誘いをかけてみるか。

「そのセリュートと言ったか下につけれるか?」と息子に聞けば

微妙な顔をした。
まだまだ腹芸ができない年頃か。

「冒険者のような気質だった」と報告が上がる

とくに脅威でも手元に置きたい理由もない
様子見だな

と既にジョルバン家の動向に考えが移っていた。


そのジョルバン家では
外とは言え貴族らしい食事が出された。
報告を兼ねて
専ら新顔のセリュート・ヴェーネンに話が主だ。

「貴族としては?」

「教育はツァルト家より進んでいそうです。
弓矢の腕も良く、うちの弓兵にとも劣らない判断力です。

性格は冒険者に近いものを感じました。」

ずっと観察に徹していたカイル。
攻撃力ではなく、場を掌握する指揮官として育てている
息子の報告に及第点だろうと頷く父親。

野心家な父親は、王都の社交でも発揮している。
続いて従者が

「連れてきた冒険者とも仲良さげで
取り込みは難しいかも知れません。」

まあそこは急ぐことではない。

それぞれの家の動きが、四家の均衡を崩すものか?
動きを静観することになるようだった。



「ヴェーネン家はどうだった?」

息子のサンタナに期待はしていないトベルタ家の父親。
研究のために貴族でいる。教育など興味がない。

社交も体力もない期待外れだが
頭はそう悪くない。

ガイサスは有名な武人だが魔導具のことは素人だ。
ヴェーネン家は遠い親戚筋で魔導具で一角ひとかどの成果を出した家だ。


その再興を担う家の動向は気になった。

「魔力付与された矢を使用。あれは市場で見ない
仕様で……お抱えの魔具士がいるのかと。」

その通り、セリュートが願って、馴染みの付与魔術師に頼んだものだった。
「それくらいなら我が家でもできる」
くだらないとつきそうな話ようだった。

トベルタ家の当主は眼中にないと言った態度だった。
しかし、材料費、強度、威力のあるこの矢の可能性には気づかない。

市場に普及させるには難しいが、狩りに使うには充分な装備。
一撃の威力は、身内で使い洗練されたものになっていた。

新たなヴェーネン家の跡取り、セリュートの初対面だった面々だが
目立った衝突はない

しかし
それぞれの四家は、水中下で動き出していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

虐げられていた黒魔術師は辺境伯に溺愛される

朝露ココア
恋愛
リナルディ伯爵令嬢のクラーラ。 クラーラは白魔術の名門に生まれながらも、黒魔術を得意としていた。 そのため実家では冷遇され、いつも両親や姉から蔑まれる日々を送っている。 父の強引な婚約の取り付けにより、彼女はとある辺境伯のもとに嫁ぐことになる。 縁談相手のハルトリー辺境伯は社交界でも評判がよくない人物。 しかし、逃げ場のないクラーラは黙って縁談を受け入れるしかなかった。 実際に会った辺境伯は臆病ながらも誠実な人物で。 クラーラと日々を過ごす中で、彼は次第に成長し……そして彼にまつわる『呪い』も明らかになっていく。 「二度と君を手放すつもりはない。俺を幸せにしてくれた君を……これから先、俺が幸せにする」

勘当されたい悪役は自由に生きる

雨野
恋愛
 難病に罹り、15歳で人生を終えた私。  だが気がつくと、生前読んだ漫画の貴族で悪役に転生していた!?タイトルは忘れてしまったし、ラストまで読むことは出来なかったけど…確かこのキャラは、家を勘当され追放されたんじゃなかったっけ?  でも…手足は自由に動くし、ご飯は美味しく食べられる。すうっと深呼吸することだって出来る!!追放ったって殺される訳でもなし、貴族じゃなくなっても問題ないよね?むしろ私、庶民の生活のほうが大歓迎!!  ただ…私が転生したこのキャラ、セレスタン・ラサーニュ。悪役令息、男だったよね?どこからどう見ても女の身体なんですが。上に無いはずのモノがあり、下にあるはずのアレが無いんですが!?どうなってんのよ!!?  1話目はシリアスな感じですが、最終的にはほのぼの目指します。  ずっと病弱だったが故に、目に映る全てのものが輝いて見えるセレスタン。自分が変われば世界も変わる、私は…自由だ!!!  主人公は最初のうちは卑屈だったりしますが、次第に前向きに成長します。それまで見守っていただければと!  愛され主人公のつもりですが、逆ハーレムはありません。逆ハー風味はある。男装主人公なので、側から見るとBLカップルです。  予告なく痛々しい、残酷な描写あり。  サブタイトルに◼️が付いている話はシリアスになりがち。  小説家になろうさんでも掲載しております。そっちのほうが先行公開中。後書きなんかで、ちょいちょいネタ挟んでます。よろしければご覧ください。  こちらでは僅かに加筆&話が増えてたりします。  本編完結。番外編を順次公開していきます。  最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
実は、公爵家の隠し子だったルネリア・ラーデインは困惑していた。 なぜなら、ラーデイン公爵家の人々から溺愛されているからである。 普通に考えて、妾の子は疎まれる存在であるはずだ。それなのに、公爵家の人々は、ルネリアを受け入れて愛してくれている。 それに、彼女は疑問符を浮かべるしかなかった。一体、どうして彼らは自分を溺愛しているのか。もしかして、何か裏があるのではないだろうか。 そう思ったルネリアは、ラーデイン公爵家の人々のことを調べることにした。そこで、彼女は衝撃の真実を知ることになる。

完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています

オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。 ◇◇◇◇◇◇◇ 「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。 14回恋愛大賞奨励賞受賞しました! これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。 ありがとうございました! ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。 この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)

公爵令嬢 メアリの逆襲 ~魔の森に作った湯船が 王子 で溢れて困ってます~

薄味メロン
恋愛
 HOTランキング 1位 (2019.9.18)  お気に入り4000人突破しました。  次世代の王妃と言われていたメアリは、その日、すべての地位を奪われた。  だが、誰も知らなかった。 「荷物よし。魔力よし。決意、よし!」 「出発するわ! 目指すは源泉掛け流し!」  メアリが、追放の準備を整えていたことに。

異世界で王城生活~陛下の隣で~

恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。  グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます! ※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。 ※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

処理中です...