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ガイサス

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王都に行く予定を立てたものの
心配事があった。

私の息子サディスのことだ。

義理の息子なのだが執事として
よく仕えてくれている。

型通りに。

私は騎士だったせいか
父としても堅苦しい態度だっただろう


今も書類に向い、この領地を回していた。
当主が長期に不在というあり得ない家の状態で。

セリの専属執事としたが、
主人との距離は縮まらない。


主従として絆ができれば良いと思えたが
その目論見は外れる。

セリの行動力が広範囲であることと
サディスの保守的な思考が合わないのだろうか。

馬が合うタイプではないだろう。
セリはおとなしいようでいて、主張もしっかり言える子だ。

正しいと思った方に突き進める強さがある。
子供のうちに持つ、絶対的な自信とは

大人が見守っていないと危ういものになりかねない。
しかし、私では当主の教育を失敗している上で
口を出すのは憚られた。

森へ行くのにも
普通の親なら反対するか、伴をつけるところだろう。
しかし、

ここは辺境だ。戦う力が必要だ。


冒険者と森での行動を許したのも
彼女が必要と思ったものを支援する形だった。


確かに貴族として
教育を施す頃合いだ。


特に10歳ともなれば社交が始まる。

“四貴族の顔合わせ”
それまでに必要な教養は必須だが

まだ戸惑いがあるのかもしれない。
このセリュートを盛り立てて良いのか。

セリが
聡い子なのは知れた。なぜと考えられる。

年齢の割に大人びたのは
周りの影響で、同じ歳の子供がいないから。


辺境の地、危険な森の側に
力ない子供を置く親はいない。


ここで育てた。
王都で巻きまれないよう

剣を振るうことを生涯やってきた私にとって
守るべき子だ。
しかし今でも、セリの心まで守れてはいない。

不安を抱えている。
当主のひと言で立ち去らなければならないと
理解している点だ。


あの当主がどういう人格か。

仕事の丸投げ
興味への探求といえば聞こえが良いが

興味以外をやらない
教育を間違えたのか資質か。

補佐を置くことで回避した先代だ。
この状態で保たせていても、綻びがでている


“時期当主”がいなければ、もう潰れていた。
貴族の入れ替わりに新たな貴族がきたことだろう。

延命されたのだ


彼女を守るには
安心させるには
当主の言質が必要だ


生存の報告はある

しかし帰ってこないのは
理由があるのだろう

どうしようもない理由であって欲しいが。


何に足止めされ、使われているか?


どうであろうと
連れ帰る。

それが私ができる償いだ。



息子の方は
セリとどう付き合うのか。


あの子の生い立ち上、主君を決める事はないかもしれない。
それでもサディスにとってもセリにとっても
良い方に転じれば良いと見守りたい。

彼女がセリュート、時期当主を拒むのも仕方がないと思っている。

何にせよ、老いぼれていく前に
私が道を拓いておきたい。

明るい方へ
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