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頭の良い子とは分かったので文字を教え、図鑑を見せる。
冒険者向けの本棚の本を眺めるのが楽しみになる。

この頃の別棟には冒険者たちの招待はなく
がらんと


料理長の

和やかに過ごせていた。


ここは魔物の脅威がある地だと時折感じながらも、

狩人のまねごとをして遊んで過ごした。
罠で兎を捕り、食卓に並んだこともある。

物事が見えるようになってきた年齢

5歳。新しい若いメイドに

『可哀想に』


同情めいた声で、人を見下す。
それが心に黒く影を落とす。



知っていた。
自分には親がいない。親がいない人間は多いが
保護者もいない


『こ家の主人の子と偽っている』と噂された。

『血の繋がりもない子供がなぜいるのか?』

コソコソと不思議そうな顔を作って、囁いていた。


庭師も料理長もメイドも、うちの子になるか?
と言葉はかけない。

かけられないのだ。

この子は当主の子。この家の後継者にあたる。

当主は行方知れず

その不在は、屋敷の中を少しずつ壊していく。

新しい季節が来るたびに
ギシギシと主人のいない屋敷は、緩やかに滅びていく。


古参のものが感じていた危惧
新しく来るものが軽口を叩く、仕える者のいない空っぽの貴族家。


それにギリギリ耐えられているのは、家の者の気力だけだった。
主人のいない家を守り切る。


異質な子どもは、その危うさを感じとれていた。

「セリ」

おじちゃん!と抱きつけば軽々受け止められた。
優しく強いおじちゃんは、ここで働く執事長だ。


自分にも優しく、たまに本を読んでくれる。

その息子の執事見習いのお兄ちゃんは、あまり
子どもが好きではないようなので近づかないようにしている。


「しっかり勉強しているか?」

「うん!今ね薬草の扱い方を勉強してる」

笑顔で答える。
もう黒い感情を隠すことができていた。
それは自然とそうすべきだという判断で。

そうか何か欲しいものはないか?

勉強のものはなるべく手配してくれた。
だからお願いをする

「魔法を覚えたいの!」
子どもらしく朗らかに言う。

その明るさと元気な様子につい聞いてみた。
「冒険者になりたいのか?」

「んー。当主の子は無理だって聞いた。」

一瞬、顔が強張る

「役立つから覚えると良い。」

庭師

メイド

料理長は冒険者

執事たるものとして使える。



当主の子、誰の子かわからない、捨て子
情報があのメイド達なのが嫌だった。

ひとつの決心。
抱いていたのをおろしてもらい

はるか上を、顔を見て対峙する



「なら、ボクが当主になったら嬉しい?」

そう無邪気に聞いた目には、決意もこもっていた。
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