6 / 98
2-1
しおりを挟む
当主としての教育が始まった。
私が“セリュート”の名前を継ぐ子になる。
赤児に、“セリ”とだけ付けた名前の理由は…
当主の子供ではない可能性と、
他の道を選べる余地を残してくれたのだろうと考える。
次期当主でなければ、町に降り孤児院に入る選択肢があっただろう。
“この赤児の将来をどうするのか?”は当主と会ってからと皆、思っていたのかも知れない。
それも、ここまで当主不在が長引くと想定していなかった。
6年。
元々、産まれた男の子につける名前候補から、皆が私に『セリ様』呼びになる。
それに慣れるのは、古参の使用人は早かった。
この地の貴族の義務は“魔物の反乱時に、民を守ること。”
戦うことを求められる。
四家がそれぞれの力を合わせての防衛。
その貴族のひとつ、『ヴェーネン家』は侯爵位を賜っている。
かなり古くからこの地を守っていると書庫に記録が残っていた。
そのうち目を通そう。
6歳で私は
この家の継承権を持つ、男子として扱われることから始まった。
メイドに世話される側になり
動きづらい服装に着替え
食事のマナーのある朝食を一人でとる
周りでも、
次の当主を見込める、子がいるだけで
色々な変化が起き始めた。
他家から受け入れていた若いメイドは、他の家に紹介した。
体の良い追い出しをして
古参の者で貴族の家の体裁を整えなおす。
皆、当主がいた頃のように、キビキビとした仕事を思い出した。
私の学習は最初から、義務のためのものになる。
本が読め、字の練習も済ませており
植物の知識や料理長の話から領地の様子が思い描けた。
与えられた数字の羅列も、何に繋がっているかわかれば面白い。
勉強は夢中になってやった。
性に合っていたらしい。
貴族の子息としての教育が始まって
戦える訓練を始め身体を鍛え、当主補佐から現在の領地経営を学ぶ。
家庭教師が領外から呼ばれたが、国の歴史をさらっと教えてもらっただけで
帰ってしまった。予定より早いお帰りだったが、勉強の範囲は終わっているので構わないか。
”当主代理“
その役割りがあることで対外的な体裁が整え回り出した仕事。
長く停滞していた、貴族の役割も動き出す。
ガイサスおじさんがやっていた仕事を、当主代理がやれるように進めていく。
当主の子としての将来が築かれていった。
それには他貴族との交流も含まれる。
「セリ様。本日面会の予定が入っております。」
「そう。資料はできていますか?」
「はい。このように」
サディスが私の専属執事になった。
資料を作ったのは当主補佐(ガイサス)だ。
その内容を理解することから始める。
補佐とともに、ある貴族と
面会はするが、話を進めるのはガイサスおじさん。
それでも私がいるといないでは、違いがあるらしい。
これが最初の仕事と言えるだろう。
当主の子を演じていた。
「ワタクシめがここに足を運んだのは、誠意を見せていただけると…!」
問題のある貴族だ。
散々、釘を刺したがもう見放したいと思っていた人物。
書類を突きつけている。
その様子の変化を観察した。
「当主代理の確認の下、賠償を求める。」
話の背景は知っているが、会話には加わらない。
「こんな子供にですか!?」
補佐の権限では難しかった事も、代理だと違った手段がとれる。
それにより、強く出られるようになった。
まだ小さい私はこういった場に同席し、事案の片付け方を見ている。
他所の貴族は
相手は子供だと侮る。
おかしな支出、物による媚びは積み重なっていた。
なめられているのは分かっている。
だから、
そういう人達は、楽にひねれるとガイサスおじさんは笑った。
「スッキリしたわい」といった具合に。
学ぶことは山積みだ。
以前のように庭で駆け回る代わりに
訓練をし、
図鑑は数字の羅列になった。
“子どもらしく”はないのだろう。
それでも、決めたことをこなそうと集中して行う。
そうした日々を、この閉ざされた貴族の家で過ごしていた。
私が“セリュート”の名前を継ぐ子になる。
赤児に、“セリ”とだけ付けた名前の理由は…
当主の子供ではない可能性と、
他の道を選べる余地を残してくれたのだろうと考える。
次期当主でなければ、町に降り孤児院に入る選択肢があっただろう。
“この赤児の将来をどうするのか?”は当主と会ってからと皆、思っていたのかも知れない。
それも、ここまで当主不在が長引くと想定していなかった。
6年。
元々、産まれた男の子につける名前候補から、皆が私に『セリ様』呼びになる。
それに慣れるのは、古参の使用人は早かった。
この地の貴族の義務は“魔物の反乱時に、民を守ること。”
戦うことを求められる。
四家がそれぞれの力を合わせての防衛。
その貴族のひとつ、『ヴェーネン家』は侯爵位を賜っている。
かなり古くからこの地を守っていると書庫に記録が残っていた。
そのうち目を通そう。
6歳で私は
この家の継承権を持つ、男子として扱われることから始まった。
メイドに世話される側になり
動きづらい服装に着替え
食事のマナーのある朝食を一人でとる
周りでも、
次の当主を見込める、子がいるだけで
色々な変化が起き始めた。
他家から受け入れていた若いメイドは、他の家に紹介した。
体の良い追い出しをして
古参の者で貴族の家の体裁を整えなおす。
皆、当主がいた頃のように、キビキビとした仕事を思い出した。
私の学習は最初から、義務のためのものになる。
本が読め、字の練習も済ませており
植物の知識や料理長の話から領地の様子が思い描けた。
与えられた数字の羅列も、何に繋がっているかわかれば面白い。
勉強は夢中になってやった。
性に合っていたらしい。
貴族の子息としての教育が始まって
戦える訓練を始め身体を鍛え、当主補佐から現在の領地経営を学ぶ。
家庭教師が領外から呼ばれたが、国の歴史をさらっと教えてもらっただけで
帰ってしまった。予定より早いお帰りだったが、勉強の範囲は終わっているので構わないか。
”当主代理“
その役割りがあることで対外的な体裁が整え回り出した仕事。
長く停滞していた、貴族の役割も動き出す。
ガイサスおじさんがやっていた仕事を、当主代理がやれるように進めていく。
当主の子としての将来が築かれていった。
それには他貴族との交流も含まれる。
「セリ様。本日面会の予定が入っております。」
「そう。資料はできていますか?」
「はい。このように」
サディスが私の専属執事になった。
資料を作ったのは当主補佐(ガイサス)だ。
その内容を理解することから始める。
補佐とともに、ある貴族と
面会はするが、話を進めるのはガイサスおじさん。
それでも私がいるといないでは、違いがあるらしい。
これが最初の仕事と言えるだろう。
当主の子を演じていた。
「ワタクシめがここに足を運んだのは、誠意を見せていただけると…!」
問題のある貴族だ。
散々、釘を刺したがもう見放したいと思っていた人物。
書類を突きつけている。
その様子の変化を観察した。
「当主代理の確認の下、賠償を求める。」
話の背景は知っているが、会話には加わらない。
「こんな子供にですか!?」
補佐の権限では難しかった事も、代理だと違った手段がとれる。
それにより、強く出られるようになった。
まだ小さい私はこういった場に同席し、事案の片付け方を見ている。
他所の貴族は
相手は子供だと侮る。
おかしな支出、物による媚びは積み重なっていた。
なめられているのは分かっている。
だから、
そういう人達は、楽にひねれるとガイサスおじさんは笑った。
「スッキリしたわい」といった具合に。
学ぶことは山積みだ。
以前のように庭で駆け回る代わりに
訓練をし、
図鑑は数字の羅列になった。
“子どもらしく”はないのだろう。
それでも、決めたことをこなそうと集中して行う。
そうした日々を、この閉ざされた貴族の家で過ごしていた。
応援ありがとうございます!
2
お気に入りに追加
157
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる