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ゼルは、一人で考えずに知識人に聞きに行くことにした。
まずはギルドに『成人するために必要な事は何か?』『詳しい人物が誰か居ないか?』と、聞きに来た。

成人と認められるための条件をしっかり確かめる。
二度手間など最悪だ。

「まだ、待たせるなんて」

アンナは結婚を喜んでくれた。
オレに無理させないために、結婚しなくても大丈夫だと言ってくれた。

「でもオレ、アンナと結婚したいんだ。」

確かに成人していないと結婚も認められないんだろうな。
けど、年上の先輩冒険者から聞いた事もない掟に邪魔されたくない!!

決心を新たに受付で紹介された、年嵩のギルド員に資料室に向かう。

「サイア国で成人と認められるには、『皇女様への供物を得なければならない』が掟です。」

伝説級の物が、供物として描かれているようだった。

「S級の冒険者でも難しいじゃねーか。」
「今はないとされるものも、記載されているのさ。」

・最古の海竜の鱗
・黄金の枝に実る木の実

「“・宝石を生み出す神鳥”?」
「ははは、そう言われて奉納されっとるいう話だよ。」


結構昔の話らしい。冒険者ギルドが設立する前の資料だというから
年嵩のギルド員も記録で知っているだけだ。
「記録はあるものの、それだけが頼りで他にはわからない、かなあ。」

著者はとうの昔に亡くなってていると付け加えられる。

「なんとか、調べてくれないか?」
「まあ、私の担当だからできるだけ調べよう。」

依頼料が発生するだろうか。
業務内なのでちとりあえず請け負ってもらえたが、オレにできる事はなんだろうか。

部屋に置かれた雑然と本を見ても答えはわからない。


「他にも、…他のやつでも成人を認められていないやつっているよな?」

この町に10年以上住んでいるオレでさえ知らないんだ。

成人以外にも捧げ物を送る習慣が残っている話を詳しく聞き出す。

今のところの捧げ物は、海からや山の部族からの一員で前々からの準備と先達の協力で
納めた品らしい。皇女様への供物を捧げる、その仲介役を冒険者ギルドが担う事もしている。


・山頂に冬の間だけ咲く花の木の実
・暖かくなったら来るでかい魔魚


「こんなん冒険者ひとりじゃ、無理だな。」

その事を確認し、ギルド員に情報集めを頼んで同世代の冒険者を探す事にした。

成人の儀に参加する人数を増やせれば、試せる依頼が増えるかもしれない。

たまにチームを組んで依頼をこなす、顔見知りの冒険者に声をかけた。

「今の皇女様が結婚するまで捧げ物をして認められないと、
成人と認められないんだよ。」

「なんだそれ。金にもならんな。」
「俺は、この国の出身じゃないから関係ねーな。」

「あー、ぎりぎりセーフか。皇女様より先に成人してたら当てはまらないだろ?」
「ラッキー、オレも~。」

「え、何?おれって成人してないの」

「まあまあ、勘違いだよ。数え間違いだって」

誤魔化そうと決めたやつもいたが、ここに居ただけで3人は成人と認められていないらしい。


「まだまだいそうだな。」

昼間っからギルドに食堂で飯に酒にとしているオッサン冒険者に聞きに行った。
単独で依頼を受けて、話したことない冒険者を知っていそうだ。

あと暇そう。
「なあ、オッサン達は成人と認められるための掟って知ってるか?」

「ああ?例のか。」
「オマエが成人してないゼルか」

「結婚なんて早くからするもんじゃないぞー」

暇人の声が飛んでくる。

「オレと年が近くって、冒険者なやつ。ここら辺の出身って誰か知ってる?」

情報には対価が必要で、基本はエールを奢るが。話のタネとばかりに、今回はなくても盛り上がった。


「あいつは?」
「国が違うだろ」

「海の奴らは、もう成人してる奴が多いんじゃないか?祭りで掟通りに魔魚を獲るって話だ。」

情報は多いが、また聞きだから確認しないとな。
話に登る若い冒険者を覚える


「少し年上も声かけてみたらどうだ?」
「箔がつくからって、参加したいと言い出す者もいるかもしれんぞ」

そんな真面目に使える事も話してくれた。
オッサンどもにもそれっぽい奴がいたらオレに声をかけるよう頼んで、酒を奢る。
煩い声を後ろから浴びながら、オレはギルドの受付に寄った。


「成人の儀の供物って何があるんだ?」

オレでも出来そうな物がないか知りたい。
受付で、情報を出してくれた。近々、ギルドが関わった奉納した物のリストを見る。


そうこうしてると、顔見知りが依頼から帰ってこっちに寄ってきた。
今日は街の依頼だったんだろう。軽装だ。

こいつら外から来たから、成人の掟とはかんけーねーんだよな。


「海の中は難しいな。泳げるが、戦い方が違う。」

「木の実?これなら簡単じゃないか?」

「それ、魔物が羽毛であたためているというでかい木の実。」
「枝がない木の上で、危険な魔鳥が守ってるの?」

「難しいだろ。」

どれもが、特殊な道具や能力が必要なものばかり。
準備に年単位必要だろうか。狙える時期が過ぎたものもあった。

「買ってしまったほうが早そうだけど。」
「ズルだがそういう奴もいるんだろうな。」


「買い物して皇女様へ捧げたら、不敬だと牢屋に入れられるかもしれないですよ」

ギルドの受付担当が、申し訳なさそうな眉毛で声をかけて行った。

「どーしろっていうんだよ!」

オレは苛々を吐き出すように言った。


「魔物を倒すにも、1人じゃ無理だな。」
「そういう結論になる、か。」


“ねえ、無理しないで”
“だって死んじゃうかもしれない”

散々心配させたが。
アンナを心配させないために最大限の準備と警戒をして森に入っている。

それでも怪我はあるし、運の悪い時もある。
危ない仕事はなるべく避けて、準備も入念に。

“お願い無事に帰ってきて”

アンナが泣きながら言われるのは堪える。


これからだってオレは冒険者でいる。
迎え入れてくれるアンナがいてくれるから。


オレはどうにか、この状況を打破できる条件を捻り出そうとして頭を働かせた。
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