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4 ニッコリ

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暢気な連中に割って入った私は、ニッコリ聞てみた。
「お見合いババアって・・誰のこと?」


私は自分で言うのもなんだが優秀な事務員だ。そんな私の噂をするのもしょうがない。
けど、そのあだ名は受け入れられない。

「誰がババアよ!」
「まあ、まあ。やってる事はそれに近いじゃない。」

一緒に来ていた友人に止められた。

「未婚の乙女を捕まえて、ババア呼ばわりするなんて覚悟しているんだよねぇ?」

私に恐れをなして、暢気だった連中は散っていった。
婚約者ができて、浮かれているんだろう。格好も少し整っていたがどこか変。

流行りに物とか縁遠タイプだものね。

「ほら、今日はカツだよ」

食堂で、当初の目的の昼食をとる。

「空腹は人を怒りっぽくする。」
「そうね、例え満腹でもあれくらい言うと思うけど。」

「まあ、そんな事もある。」

否定はしない。許さぬ。どうも私のあだ名は、今のものに決まっているらしい。

「あんなダサい格好で行こうとするの、当然止めるでしょう?
敷地から出るのを見られるだけで、同じ住人と思われたくないわよ。」

「まあ、無頓着なのが多いわよね。」
「貴女はオシャレでしょ」

「んー、着回してるだけよ。こだわりってるほどのものはないわ。」

魔術士は身だしなみは優先順位的に、どのへんなんだろうか。みんな貴族なのに

「今日もひと仕事あるんでしょ?」

橋渡しの予定があるけど、私の本当の仕事は違うはず。

「ご縁ができた貴族からの寄付が増えて、予算もぶんどってきた。」
「優秀よね」

魔術士が頑張ているからだけど。

「どうやってそう取り付けるの?」
「プッシュが大事1回2回、さりげなく3回するの」

それで通ってしまうこともある。そう言った推しの強さとさりげなさがここの魔術士には足りないと思う。

「どこがその分、減っているんだろうけど」

それが、私に災難として降りかかることをこの時は想像もしていなかった。

私はひと様の縁を結んでいた。
そこから寄付につながる事もあるから、仕事と言えなくもなくなってきた自覚はある。

まあ、世の中巡るものよね。
私にも、巡ってくるものが起こったのだった。
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