上 下
1 / 9

プロローグ

しおりを挟む
久々に姉妹3人が実家で揃った。上の姉と末っ子の妹は実家暮らしだ。
私だけ、仕事先の寮で暮らしている。

ゆっくり話す機会は少ないが、顔は合わせている2人。私の参加がとても珍しかった。
昔から仕えてくれているお婆ちゃんメイドが紅茶と軽食を用意してくれた。

話題は最近の事から、主に誰が結婚したとか盛大に別れたなんて話。
『お見合い?貴族なら政略結婚でしょ』の時代も全盛期は過去の事。

私のお姉ちゃんは、親戚筋の次男と婚約中。学校卒業後に結婚予定でもう一年も立たずに人妻となる。

妹は要領が良い。勉強も人付き合いも、すんなりと謎の人脈で上手いところに収まっている。この器量で女を敵に回さない手腕。

その2人に挟まれた私は“変わり者の次女”と親戚に言われている。
仕事先に、魔塔を選び女らしい趣味や習い事というのに馴染まなかったからか。

有名でイケメンなシェフがいる店より、怪しさ溢れた古魔道具屋のが好きだからか?

姉妹仲は良いと思う。両親も娘達の希望を応援してくれた。

魔塔という男魔道士ばかりな職場でも、偏見なく送り出してくれて。
突然の魔塔訪問には驚いたけど、娘を預ける職場を見ておきたいと心配からの行動だったらしい。

無事、職場見学をして帰っていった。ちょっと恥ずかしかったとも思うが、案内についてくれたおじさんは
良いご両親だと言ってくれたので、まあ問題はない。

姉の卒のなさや、妹の可愛げある態度を見習いたいが。『吊り目がちで威圧感がある』と言われる私には難しい。というか方向性が合わないな。視線の合った妹に話題を振ってみる。

「そーいえば、あの文官な彼氏とはどうなったの?」
「前の前の彼氏のこと?結婚するイメージがわかなかったから別れたわよ。」

妹は恋人を取っ替え引っ替え、と言えなくもないが別れ方は綺麗らしい。
今のところ恨みは買っていない様子。

「もったいない、収入が安定してそうなのに。」
「そうねー、今の彼とも考え中。」

今は、恋愛結婚も多い。特に長男・長女以外は、『婚約者がいなくても良い縁があれば』と
放逐される。『16歳で未婚は行き遅れ』の時代より、学生のうちに結婚と急かされなくなった。



「余裕ですこと」

ちゃんと結婚できるんだろうなと疑いない態度と実績の妹だ。
この妹の可愛さを真似しても到底、私は追いつけないところに居るんだろう。

いいんだ。私は今魔塔での仕事にやりがいを感じている。
結婚の願望はあるが、急ぐことはない。まだ18歳だもの。

「で、アンタは?」

姉の言葉。妹の視線に私は、黙って紅茶を啜ったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

猛禽令嬢は王太子の溺愛を知らない

高遠すばる
恋愛
幼い頃、婚約者を庇って負った怪我のせいで目つきの悪い猛禽令嬢こと侯爵令嬢アリアナ・カレンデュラは、ある日、この世界は前世の自分がプレイしていた乙女ゲーム「マジカル・愛ラブユー」の世界で、自分はそのゲームの悪役令嬢だと気が付いた。 王太子であり婚約者でもあるフリードリヒ・ヴァン・アレンドロを心から愛しているアリアナは、それが破滅を呼ぶと分かっていてもヒロインをいじめることをやめられなかった。 最近ではフリードリヒとの仲もギクシャクして、目すら合わせてもらえない。 あとは断罪を待つばかりのアリアナに、フリードリヒが告げた言葉とはーー……! 積み重なった誤解が織りなす、溺愛・激重感情ラブコメディ! ※王太子の愛が重いです。

王子好きすぎ拗らせ転生悪役令嬢は、王子の溺愛に気づかない

エヌ
恋愛
私の前世の記憶によると、どうやら私は悪役令嬢ポジションにいるらしい 最後はもしかしたら全財産を失ってどこかに飛ばされるかもしれない。 でも大好きな王子には、幸せになってほしいと思う。

行き遅れにされた女騎士団長はやんごとなきお方に愛される

めもぐあい
恋愛
「ババアは、早く辞めたらいいのにな。辞めれる要素がないから無理か? ギャハハ」  ーーおーい。しっかり本人に聞こえてますからねー。今度の遠征の時、覚えてろよ!!  テレーズ・リヴィエ、31歳。騎士団の第4師団長で、テイム担当の魔物の騎士。 『テレーズを陰日向になって守る会』なる組織を、他の師団長達が作っていたらしく、お陰で恋愛経験0。  新人訓練に潜入していた、王弟のマクシムに外堀を埋められ、いつの間にか女性騎士団の団長に祭り上げられ、マクシムとは公認の仲に。  アラサー女騎士が、いつの間にかやんごとなきお方に愛されている話。

ゆるふわな可愛い系男子の旦那様は怒らせてはいけません

下菊みこと
恋愛
年下のゆるふわ可愛い系男子な旦那様と、そんな旦那様に愛されて心を癒した奥様のイチャイチャのお話。 旦那様はちょっとだけ裏表が激しいけど愛情は本物です。 ご都合主義の短いSSで、ちょっとだけざまぁもあるかも? 小説家になろう様でも投稿しています。

モブの私がなぜかヒロインを押し退けて王太子殿下に選ばれました

みゅー
恋愛
その国では婚約者候補を集め、その中から王太子殿下が自分の婚約者を選ぶ。 ケイトは自分がそんな乙女ゲームの世界に、転生してしまったことを知った。 だが、ケイトはそのゲームには登場しておらず、気にせずそのままその世界で自分の身の丈にあった普通の生活をするつもりでいた。だが、ある日宮廷から使者が訪れ、婚約者候補となってしまい…… そんなお話です。

王女殿下の秘密の恋人である騎士と結婚することになりました

鳴哉
恋愛
王女殿下の侍女と 王女殿下の騎士  の話 短いので、サクッと読んでもらえると思います。 読みやすいように、3話に分けました。 毎日1回、予約投稿します。

【完結】伯爵の愛は狂い咲く

白雨 音
恋愛
十八歳になったアリシアは、兄の友人男爵子息のエリックに告白され、婚約した。 実家の商家を手伝い、友人にも恵まれ、アリシアの人生は充実し、順風満帆だった。 だが、町のカーニバルの夜、それを脅かす出来事が起こった。 仮面の男が「見つけた、エリーズ!」と、アリシアに熱く口付けたのだ! そこから、アリシアの運命の歯車は狂い始めていく。 両親からエリックとの婚約を解消し、年の離れた伯爵に嫁ぐ様に勧められてしまう。 「結婚は愛した人とします!」と抗うアリシアだが、運命は彼女を嘲笑い、 その渦に巻き込んでいくのだった… アリシアを恋人の生まれ変わりと信じる伯爵の執愛。 異世界恋愛、短編:本編(アリシア視点)前日譚(ユーグ視点) 《完結しました》

氷のメイドが辞職を伝えたらご主人様が何度も一緒にお出かけするようになりました

まさかの
恋愛
「結婚しようかと思います」 あまり表情に出ない氷のメイドとして噂されるサラサの一言が家族団欒としていた空気をぶち壊した。 ただそれは田舎に戻って結婚相手を探すというだけのことだった。 それに安心した伯爵の奥様が伯爵家の一人息子のオックスが成人するまでの一年間は残ってほしいという頼みを受け、いつものようにオックスのお世話をするサラサ。 するとどうしてかオックスは真面目に勉強を始め、社会勉強と評してサラサと一緒に何度もお出かけをするようになった。 好みの宝石を聞かれたり、ドレスを着せられたり、さらには何度も自分の好きな料理を食べさせてもらったりしながらも、あくまでも社会勉強と言い続けるオックス。 二人の甘酸っぱい日々と夫婦になるまでの物語。

処理中です...