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解放
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「ハッ…ハッ…」
後ろからの足音はない。…まだ。
やっぱり庭だった。屋敷の方へ、森に行っては勝ち目はないし遭難する。
足がもどかしい。ちゃんと、走って!
目指すのは、食糧庫の方。そこから玄関に行く途中で馬がいて…いなかったら?
御者は、台所の奥の倉庫に食糧を運んでいた。
敵の誰かに出くわすかもしれない。でも…
止まってられない!
レナが家庭菜園みたいと言った庭だ。
今のところ誰もいないけど、後ろは振り返らない。
あの人達、追いかけて来ないの?
「ハッ…ハッ…」
ここからは静かに、素早く。馬を見つけて逃げる。
「オイ!待て!」
(来てる?!)
馬がいない。誰か乗って来てそうだと思ったのに。
屋敷に隠れる?でも追い詰められたら捕まる。
庭にいては見つかる、食糧庫まで走り角を…
(誰かいる!)
その勢いのまま、その男に体当たりをくらわした。
「つぅ…!」
装備の硬さに、タックルは失敗だったと思う。額が痛い。
「ミーラ」
名前を呼ばれ、その声に心配が入っているのを不思議に思い
男の顔を見る。
「ケイアス!」
幼馴染のアイツだった。
「おい、こっちに嬢ちゃんが…」
「確保しました。」
「おお?ご苦労。」
後ろから来ていたのは、憲兵隊だった。
「なんで…」
「新兵だって現場に行くんだぞ?」
「そうだ。ケイアス、憲兵隊に入ったって。」
足から力がぬける。
「おい、怪我は?」
「ない…けどれな、レナは?」
「先に保護できてる。無事だよ。」
「そ、う。よかった。あ、犯人は?旦那様と狩人姿の2人、
それと私を追いかけてきた3人!他はわからないけど…」
「落ち着けって、憲兵隊が入って捕縛したから。」
「そう」
緊張の糸が切れた。
私はケイアスにおぶわれ、外回りに玄関へ向かった。
探していた馬が何頭かと馬車に憲兵が、屋敷を捜索している様子が見えた。
人が出てくる…ここで気づく、
「旦那様」
そういえば名前を知らないと
「旦那さまあ?あの人、お役所の文官だぞ?」
「はあ?伯爵様じゃないの??」
「あー。ミーラ、お前は騙されている。
今回、結婚話からいって詐欺だ。」
「えミッドナイト家の手紙で、馬車にも…」
ヒヒーン。馬車が止まった。
「アナタ!」
「レジアーナ!」
偽伯爵様と抱き合う。
「奥さんだな。」
「結婚してたの!??」
「ミーラお嬢様!」
「レナ!」
私達は無事を喜び合い、屋敷から出戻りになった。
詐欺事件の協力をしたと褒賞はいただいたけど。
結婚は、頼れる背中の男とする方が良いな。
そう思いながら、馬車の揺れに任せて眠ってしまったのだった。
(続く)
後ろからの足音はない。…まだ。
やっぱり庭だった。屋敷の方へ、森に行っては勝ち目はないし遭難する。
足がもどかしい。ちゃんと、走って!
目指すのは、食糧庫の方。そこから玄関に行く途中で馬がいて…いなかったら?
御者は、台所の奥の倉庫に食糧を運んでいた。
敵の誰かに出くわすかもしれない。でも…
止まってられない!
レナが家庭菜園みたいと言った庭だ。
今のところ誰もいないけど、後ろは振り返らない。
あの人達、追いかけて来ないの?
「ハッ…ハッ…」
ここからは静かに、素早く。馬を見つけて逃げる。
「オイ!待て!」
(来てる?!)
馬がいない。誰か乗って来てそうだと思ったのに。
屋敷に隠れる?でも追い詰められたら捕まる。
庭にいては見つかる、食糧庫まで走り角を…
(誰かいる!)
その勢いのまま、その男に体当たりをくらわした。
「つぅ…!」
装備の硬さに、タックルは失敗だったと思う。額が痛い。
「ミーラ」
名前を呼ばれ、その声に心配が入っているのを不思議に思い
男の顔を見る。
「ケイアス!」
幼馴染のアイツだった。
「おい、こっちに嬢ちゃんが…」
「確保しました。」
「おお?ご苦労。」
後ろから来ていたのは、憲兵隊だった。
「なんで…」
「新兵だって現場に行くんだぞ?」
「そうだ。ケイアス、憲兵隊に入ったって。」
足から力がぬける。
「おい、怪我は?」
「ない…けどれな、レナは?」
「先に保護できてる。無事だよ。」
「そ、う。よかった。あ、犯人は?旦那様と狩人姿の2人、
それと私を追いかけてきた3人!他はわからないけど…」
「落ち着けって、憲兵隊が入って捕縛したから。」
「そう」
緊張の糸が切れた。
私はケイアスにおぶわれ、外回りに玄関へ向かった。
探していた馬が何頭かと馬車に憲兵が、屋敷を捜索している様子が見えた。
人が出てくる…ここで気づく、
「旦那様」
そういえば名前を知らないと
「旦那さまあ?あの人、お役所の文官だぞ?」
「はあ?伯爵様じゃないの??」
「あー。ミーラ、お前は騙されている。
今回、結婚話からいって詐欺だ。」
「えミッドナイト家の手紙で、馬車にも…」
ヒヒーン。馬車が止まった。
「アナタ!」
「レジアーナ!」
偽伯爵様と抱き合う。
「奥さんだな。」
「結婚してたの!??」
「ミーラお嬢様!」
「レナ!」
私達は無事を喜び合い、屋敷から出戻りになった。
詐欺事件の協力をしたと褒賞はいただいたけど。
結婚は、頼れる背中の男とする方が良いな。
そう思いながら、馬車の揺れに任せて眠ってしまったのだった。
(続く)
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