1 / 10
訪れる屋敷
しおりを挟む
結婚を夢みていた時期もあったけど。
貴族令嬢の倣いとして、私は結婚した。今日顔を合わせる人とだけど。
なんでも、祖先の約束した婚姻らしい。
「ミーラ様、馬車酔いは大丈夫ですか?」
「大丈夫よ、レナ。」
「無理なさらないでくださいね。まだかかるようですから。」
「そうね」
王都から、森を突き抜けるように走っている。立派な馬車で嫁入り先のミッドナイト家の家紋
『黒い羽が交わった』紋章が入っていた。
その豊かな内情を見せる一方で、
迎えの御者の愛想のなさとか。手紙のやり取りでの必要最低限の言葉など。
あまり良好とは思えない対応に、少しの不安はある。
調べてみたが、とにかく
わかる事が少なく社交会にもほぼ出ていないらしい。
“陰気な”と陰口を叩かれる貴族家だ。代々、森の奥の屋敷で暮らしていると聞いている。
私とレナは2人でその屋敷に向かっている。
「まるで御伽噺よね。」
これが、王子様が迎えに来たような明るい穏やかなものなら良かったけど。
私の現実は、知らない人との結婚だ。
この憂鬱な気分を止められる要素がどこかにないものか。
「ちょっと酔ってきたかしら。」
「では、御者に少し止まって休んでもらうよう言いましょう。」
コンコンっ
「ちょっと!」「ねえ、聞こえないの?」
無視しているのかしら。
舗装されていないけど、振動はそれほどない。聞こえていると思うけど。
「止まってくださらない?お嬢様が馬車酔いしてしまって…」
耳が遠いのかしら?御者は白髪の壮年の男性だった。
くるりと振り向き…
「止まりません。そう命を受けておりますから。」
そう言ったきり、まっすぐ前を見る。馬車は走り続けた。
森の奥の奥。
たったひとつ建っている、屋敷へと。
貴族令嬢の倣いとして、私は結婚した。今日顔を合わせる人とだけど。
なんでも、祖先の約束した婚姻らしい。
「ミーラ様、馬車酔いは大丈夫ですか?」
「大丈夫よ、レナ。」
「無理なさらないでくださいね。まだかかるようですから。」
「そうね」
王都から、森を突き抜けるように走っている。立派な馬車で嫁入り先のミッドナイト家の家紋
『黒い羽が交わった』紋章が入っていた。
その豊かな内情を見せる一方で、
迎えの御者の愛想のなさとか。手紙のやり取りでの必要最低限の言葉など。
あまり良好とは思えない対応に、少しの不安はある。
調べてみたが、とにかく
わかる事が少なく社交会にもほぼ出ていないらしい。
“陰気な”と陰口を叩かれる貴族家だ。代々、森の奥の屋敷で暮らしていると聞いている。
私とレナは2人でその屋敷に向かっている。
「まるで御伽噺よね。」
これが、王子様が迎えに来たような明るい穏やかなものなら良かったけど。
私の現実は、知らない人との結婚だ。
この憂鬱な気分を止められる要素がどこかにないものか。
「ちょっと酔ってきたかしら。」
「では、御者に少し止まって休んでもらうよう言いましょう。」
コンコンっ
「ちょっと!」「ねえ、聞こえないの?」
無視しているのかしら。
舗装されていないけど、振動はそれほどない。聞こえていると思うけど。
「止まってくださらない?お嬢様が馬車酔いしてしまって…」
耳が遠いのかしら?御者は白髪の壮年の男性だった。
くるりと振り向き…
「止まりません。そう命を受けておりますから。」
そう言ったきり、まっすぐ前を見る。馬車は走り続けた。
森の奥の奥。
たったひとつ建っている、屋敷へと。
1
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説
大人の隠れんぼ=妻編=
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
ある日、夫の提案で、夫婦だけで隠れんぼをすることになるのだが、何だかおかしなルールが追加され、大騒ぎの隠れんぼとなってしまう。
しかも、誰か手引きしている人がいるようで……。
*この作品は『明智さんちの旦那さんたちR』から抜粋したものです。
【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。
なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。
本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!
猛禽令嬢は王太子の溺愛を知らない
高遠すばる
恋愛
幼い頃、婚約者を庇って負った怪我のせいで目つきの悪い猛禽令嬢こと侯爵令嬢アリアナ・カレンデュラは、ある日、この世界は前世の自分がプレイしていた乙女ゲーム「マジカル・愛ラブユー」の世界で、自分はそのゲームの悪役令嬢だと気が付いた。
王太子であり婚約者でもあるフリードリヒ・ヴァン・アレンドロを心から愛しているアリアナは、それが破滅を呼ぶと分かっていてもヒロインをいじめることをやめられなかった。
最近ではフリードリヒとの仲もギクシャクして、目すら合わせてもらえない。
あとは断罪を待つばかりのアリアナに、フリードリヒが告げた言葉とはーー……!
積み重なった誤解が織りなす、溺愛・激重感情ラブコメディ!
※王太子の愛が重いです。
王子好きすぎ拗らせ転生悪役令嬢は、王子の溺愛に気づかない
エヌ
恋愛
私の前世の記憶によると、どうやら私は悪役令嬢ポジションにいるらしい
最後はもしかしたら全財産を失ってどこかに飛ばされるかもしれない。
でも大好きな王子には、幸せになってほしいと思う。
攻略対象の王子様は放置されました
白生荼汰
恋愛
……前回と違う。
お茶会で公爵令嬢の不在に、前回と前世を思い出した王子様。
今回の公爵令嬢は、どうも婚約を避けたい様子だ。
小説家になろうにも投稿してます。
ひねくれ師匠と偽りの恋人
紗雪ロカ@失格聖女コミカライズ
恋愛
「お前、これから異性の体液を摂取し続けなければ死ぬぞ」
異世界に落とされた少女ニチカは『魔女』と名乗る男の言葉に絶望する。
体液。つまり涙、唾液、血液、もしくは――いや、キスでお願いします。
そんなこんなで元の世界に戻るため、彼と契約を結び手がかりを求め旅に出ることにする。だが、この師匠と言うのが俺様というか傲慢というかドSと言うか…今日も振り回されっぱなしです。
ツッコミ系女子高生と、ひねくれ師匠のじれじれラブファンタジー
基本ラブコメですが背後に注意だったりシリアスだったりします。ご注意ください
イラスト:八色いんこ様
この話は小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿しています。
大人の隠れんぼ=旦那編=
明智 颯茄
恋愛
『大人の隠れんぼ=妻編=』の続編。
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
ある日、夫の提案で、夫婦だけで隠れんぼをすることになるのだが、何だかおかしなルールが追加され、大騒ぎの隠れんぼとなってしまう。
しかも、誰か手引きしている人がいるようで……。
*この作品は『明智さんちの旦那さんたちR』から抜粋したものです。
溺愛される妻が記憶喪失になるとこうなる
田尾風香
恋愛
***2022/6/21、書き換えました。
お茶会で紅茶を飲んだ途端に頭に痛みを感じて倒れて、次に目を覚ましたら、目の前にイケメンがいました。
「あの、どちら様でしょうか?」
「俺と君は小さい頃からずっと一緒で、幼い頃からの婚約者で、例え死んでも一緒にいようと誓い合って……!」
「旦那様、奥様に記憶がないのをいいことに、嘘を教えませんように」
溺愛される妻は、果たして記憶を取り戻すことができるのか。
ギャグを書いたことはありませんが、ギャグっぽいお話しです。会話が多め。R18ではありませんが、行為後の話がありますので、ご注意下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる