【完結】竜人と女冒険者は、ハネムーン旅行に行くようですよ!

BBやっこ

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育った街へ

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「お水、変えたの?」

窓際には、花瓶に活けた花が飾ってある。シュルトが用意してくれた花と葉は
萎れていない。

「ええ。魔法で出した水で。」

枯れないよう、部屋に来た時に水を取り替えておいた。
こんなことに水魔法?と言われてしまうが。

「楽なの。」と簡単に答える

水魔法で出した水は、魔力が多く含まれている。
“上手い使い手なら”とつくが。

魔力水と言われ、ポーション作りを作る際に必要だ。
掃除や飲料水にもできる。不味い水しか出せない者もいるが。

セリはもう一段階、お湯もつくれる。
熱々の火魔法を同時に使って淹れると紅茶も美味い。

密かな一芸でも
あまり褒められたものじゃない

『器用だし凄いけど、そんなことで魔力をつかわなくても』と思われることが多かった。

「おいしいのに。」
野外で冒険者仲間に白湯くらいなら出じていた。温かい飲み物は寒空の下では嬉しいものだ。

紅茶を嗜む冒険者が居ないのも理由の一端だ。
そして、この特技はキースにとても喜ばれることになる。

それはもう少し先の話。



「居なくなったかな?」と自室で蜥蜴の姿を探す。
窓は閉まっているので、出て行ったのならわからないけど

ロードが動いた。


氷の魔法が無詠唱で放たれ、コツンと壁か床に当たる音。
少し屈んで、指に摘んだものがジタバタ暴れている。

長い尻尾がピシピシッと抵抗心を現すように揺れる
光で鱗が煌めく

「蜥蜴だ。」指に摘んだまま観察するロードに
「そう・・ね?」

なんでここに?という疑問でいっぱいのシュルト。
実際捕まえてみても、思い当たる事もなく。

ただ嫌がっているようにクネっとして逃れようとしている蜥蜴を見る。


「どうしよっか?」
爬虫類系が平気なセリはじっくり観察した。

黒いつぶらな瞳と、青色と言っても深い紺のような部分を背中綺麗な水の色。

愛嬌のある動きは、必至にロードの指から飛び出したいんだろうけど。
離してあげるわけにはいかない。

「とりあえず、…」目についた蓋付きの籠に入れる。
動き回れる程の大きさだけど、蜥蜴に大きさでは出ていけない。

呼吸には困らないだろう
そこに入れて、階下に降りて食堂に向かった。
この子の扱いをどうするか決めるのに腰を落ち着かせる事にした。



籠の中で少し動いていたが、机の上に置いてからはその気配もない。
身を潜めているのか

蓋を開けて覗き見ると
水色の綺麗な体が見え、少し煌めいた気がした。

「そうだ、何かあげよう。」
「蜥蜴だろう何食うんだ?」

「果物?木の根っこ、鳥や蛇には食べられそうだけど」
食べ物を思い浮かべても、食べさせちゃいけないものもあるかもしれないし。

「とりあえず、水かな。」

キッチンに入り
小さな陶器のカップに魔法で水を注ぐ。

ロードが蓋を開けて、監視している間に
そっと籠の中に置く。
「ごめんね、まだそこに居てね。」


出して逃す訳にもいかないけど、狭い空間に閉じ込めるのも気が引ける。


シュルトは、カナンに声をかけて戻って来た、
グスタフと連絡が取れるか確認していたようだが…

「キースの方はしばらく帰らないし、生き物を持ってきたら連絡くるでショ。」

「そもそも、もらってこないんじゃねーの。それか送り付けられてきた?」

うおっ本当に蜥蜴!
カナンは爬虫類系は苦手だろうか。
籠の中を見た反応でそう思った。

リザード系は火を吹いたり厄介な魔物も多い。

鱗を持つ貴族の女性は苦手な人が多いらしい。冒険者だって苦手はあるが
セリは蛇やらとかも好きな方だ。

スリスリと頬擦りしてくる竜人も好きである。
実は彼にも鱗がある、どこかは教えてあげない。


(とまあ、苦手なものの話だっけ?)

なんならヌルヌルもいっぱい集まった虫の魔物も大丈夫だ。
女性陣、男性でも苦手が多い事柄でも平気である。

汚れるのは嫌だが、水魔法は汚れを落とせる。

即、洗い流し!
汚れることが多い冒険者業も魔法は便利だ。


「うおっ動いた!」
カナンのように水に流せない、苦手もあるようだけど。
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