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3.祈りを
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王都に帰ってきた私は、ある召集に応じました。
私の発言を問題視する貴族達が起こした尋問の場。
貴族院で裁かれるようです。何の罪でしょうか?
長く、周りくどい言い方ですが…
辺境で子供を拐ったならずどもの話は、
尋問に当たった兵から貴族へ
国民に広がり、英雄譚のように話が広がっているようです。
子供達も無事で、国境の兵士たちに恩賞が出るよう進言しようと
考えていたところ着いてすぐ連行され、しばらく教会に戻れずにいます。
預けられた先、貴族の屋敷での待遇は良いものなのでしょうが。
貴族の娘のような侍女のいる生活は落ち着きませんね。
何かと商人が、宝石やドレスを勧めて褒めちぎるのですが。
相手は商売でしょう。
「そのお心は教会への寄付をお願いします。」とお帰り願っています。
予算で作っていただいて、すぐ売りその一部は寄付金となります。
その仕組みでは、個人的なドレスなど必要ないのです。
欲しいとも思いません。
祈りを捧げる清貧な生活が懐かしくなります。
再度あげられた尋問の場では、
私の“呪う”という言葉を問題視している、と。
この召集の速さに、
何やらキナ臭い感じがしています。
壇上にいる貴族が朗々と私の罪というものを話し始めました。
『この少女は、“慈愛の聖女”と巷では呼ばれておりますが…』
要約すると、気に入らない、傲慢で聖女に値しない。でしょうか?
貴族の言い回しは難しいです。
『自愛の間違いでは?彼女は自分のことしか考えていな
小娘です!』
あ、今のはわかりました。
ギラギラの衣装の貴族が唾を飛ばして、言っています。
この集まりは、私を追い落としたいのでしょう。
かつての母のように。新しい聖女に自分の娘を持ち上げたい貴族達。
“聖女を輩出した家が力を得る”との風潮に
貴族間で争っている。なんて無意味なのだろう。
「何か言い分が?」と中央に座っている貴族が私に発言を促しました。
堂々と舞台に上がり告げました。
「私の罪ですか。
祈りだけではなく、行動も必要だと説きたいのです!
貴方は誰一人、あの場に居なかった。
国境の兵士と私を守るべく守護した騎士たち。
その誰にも言葉をかけず、小娘の糾弾しかしない。
貴族とは、何をする人たちなのですか?」
その問いに答えるものはなく、ざわめきと
「無礼であるぞ!」周りの貴族のたちからの雑言。
騎士に守られている私は冷静でいられました。
そして
そろそろ幕引きです。
「鎮まれ!王のおなりだ。」
「「国王様!」」
皆、頭を垂れます。王様の言葉は
「そもそも、貴族院に持ち込む案件ではないと
私は判断する。
彼女を30日の教会預かりとし、閉廷せよ。」
こうして私の糾弾会は、終わりました。
私の教会預かりという名の、古巣に帰れることになったのです。
後に一部の貴族が没落したと風の噂があったそうですが
私の知るところではありません。
そんな私は、
釈然としない夜を過ごしました。
余計に沈み込まないベッドに安心し、慣れた寝床なのに
寝付けません。
考えてしまう。
私の行動は間違っていないと思える。
けど
聖女としては?
トントン!と夜更けの訪い。
聖女様、いえ母上です。
慌てて迎え入れようとしますが、寝かしつけられるような
姿勢になりました。もう小さな子供ではないのですが。
「貴方は子供達を守りました。
良くやりましたね」
褒められたいわけではないと思っていました。
でも、肯定されたことに安堵が広がります。
誘拐をした男たちの行き着く先は、死。
私はそれを受け止められているのでしょうか?
「お母さま。」
私はすがるような目をしているでしょうか?
聖女の顔に戻り、告げられます。
「祈りなさい。人々と、自分に。」
それは聖女としてと私への言葉。
自分を見つめられるのは自分である、と。
優しく撫でられ、顔を見上げると
「私は母として誇らしい。
聖女として貴女の未来に祝福を
しっかり体と心の疲れを癒しなさい。
私の愛しい子。」
静かに眠りにつきました。
それは祈りのように穏やかです。
慈愛に満ちていた時でした。
この王国で
“慈愛の聖女様”が突然訪れた災難や試練に
傷ついた人々の心を救うのでした。
その彼女を救うのは
愛を受け取った記憶と
静かなる祈りなのです。
fin.
私の発言を問題視する貴族達が起こした尋問の場。
貴族院で裁かれるようです。何の罪でしょうか?
長く、周りくどい言い方ですが…
辺境で子供を拐ったならずどもの話は、
尋問に当たった兵から貴族へ
国民に広がり、英雄譚のように話が広がっているようです。
子供達も無事で、国境の兵士たちに恩賞が出るよう進言しようと
考えていたところ着いてすぐ連行され、しばらく教会に戻れずにいます。
預けられた先、貴族の屋敷での待遇は良いものなのでしょうが。
貴族の娘のような侍女のいる生活は落ち着きませんね。
何かと商人が、宝石やドレスを勧めて褒めちぎるのですが。
相手は商売でしょう。
「そのお心は教会への寄付をお願いします。」とお帰り願っています。
予算で作っていただいて、すぐ売りその一部は寄付金となります。
その仕組みでは、個人的なドレスなど必要ないのです。
欲しいとも思いません。
祈りを捧げる清貧な生活が懐かしくなります。
再度あげられた尋問の場では、
私の“呪う”という言葉を問題視している、と。
この召集の速さに、
何やらキナ臭い感じがしています。
壇上にいる貴族が朗々と私の罪というものを話し始めました。
『この少女は、“慈愛の聖女”と巷では呼ばれておりますが…』
要約すると、気に入らない、傲慢で聖女に値しない。でしょうか?
貴族の言い回しは難しいです。
『自愛の間違いでは?彼女は自分のことしか考えていな
小娘です!』
あ、今のはわかりました。
ギラギラの衣装の貴族が唾を飛ばして、言っています。
この集まりは、私を追い落としたいのでしょう。
かつての母のように。新しい聖女に自分の娘を持ち上げたい貴族達。
“聖女を輩出した家が力を得る”との風潮に
貴族間で争っている。なんて無意味なのだろう。
「何か言い分が?」と中央に座っている貴族が私に発言を促しました。
堂々と舞台に上がり告げました。
「私の罪ですか。
祈りだけではなく、行動も必要だと説きたいのです!
貴方は誰一人、あの場に居なかった。
国境の兵士と私を守るべく守護した騎士たち。
その誰にも言葉をかけず、小娘の糾弾しかしない。
貴族とは、何をする人たちなのですか?」
その問いに答えるものはなく、ざわめきと
「無礼であるぞ!」周りの貴族のたちからの雑言。
騎士に守られている私は冷静でいられました。
そして
そろそろ幕引きです。
「鎮まれ!王のおなりだ。」
「「国王様!」」
皆、頭を垂れます。王様の言葉は
「そもそも、貴族院に持ち込む案件ではないと
私は判断する。
彼女を30日の教会預かりとし、閉廷せよ。」
こうして私の糾弾会は、終わりました。
私の教会預かりという名の、古巣に帰れることになったのです。
後に一部の貴族が没落したと風の噂があったそうですが
私の知るところではありません。
そんな私は、
釈然としない夜を過ごしました。
余計に沈み込まないベッドに安心し、慣れた寝床なのに
寝付けません。
考えてしまう。
私の行動は間違っていないと思える。
けど
聖女としては?
トントン!と夜更けの訪い。
聖女様、いえ母上です。
慌てて迎え入れようとしますが、寝かしつけられるような
姿勢になりました。もう小さな子供ではないのですが。
「貴方は子供達を守りました。
良くやりましたね」
褒められたいわけではないと思っていました。
でも、肯定されたことに安堵が広がります。
誘拐をした男たちの行き着く先は、死。
私はそれを受け止められているのでしょうか?
「お母さま。」
私はすがるような目をしているでしょうか?
聖女の顔に戻り、告げられます。
「祈りなさい。人々と、自分に。」
それは聖女としてと私への言葉。
自分を見つめられるのは自分である、と。
優しく撫でられ、顔を見上げると
「私は母として誇らしい。
聖女として貴女の未来に祝福を
しっかり体と心の疲れを癒しなさい。
私の愛しい子。」
静かに眠りにつきました。
それは祈りのように穏やかです。
慈愛に満ちていた時でした。
この王国で
“慈愛の聖女様”が突然訪れた災難や試練に
傷ついた人々の心を救うのでした。
その彼女を救うのは
愛を受け取った記憶と
静かなる祈りなのです。
fin.
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