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嘘でも答える

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「愛してる」
娼館では、嘘を言うのが仕事。


「もちろん愛してるよな?」

いいえ、お金のための偽りの愛の時間を貴方にあげる。
その嘘に馴れてしまったけど、私は愛を信じているかしら?

私がこの娼館にいるのは、父が破産し、それを支えていた母も亡くなってしまったから。
両親との思い出もあるけど、借金も残った。

私は現実に生きるしかない。だからここに居る。
ここで嘘を吐き続けてきた。


そしてあるお客に正直、少し本気になってた。

お客との関係は、外に出れば消えてしまう幻と思え。
ここでなら夢を見る事を許されるけど、現実に娼館の女を妻にする事はない。

だって、外に妻にする・した女がいるのよ?

良くて期間限定の愛人。そこら辺を前提にうまくやりなさいな。

娼館を切り盛りするマザーはそう教えてくれた。
「それでここにも利益があったら万々歳だね!」

現実というのは、甘くもふわふわもしていない。
お金がなくて首が締まり、女を売って稼ぐの。

それは、外であっても顔見知りという事にしろという。なんともお金のやり取りでの遊び。

本気になった方が破産。
この娼館からも追い出される。

ここの環境はなかなか良いのに。

お客を迎えるのに拒否もできるし。来てくれる人は紳士的だ。

まあやる事は同じだけど。

戯れて、愛を囁き睦まじい関係を。
ここの中だけ。

そう知っていたはずなのに。
私のお客は、あの人は…

「後妻になって欲しい」

そう言ってきた。
「いいわよ」

それは、戯れで外に出て仕舞えば消える形のないものである筈だった。
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