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「お兄様がおありでしたね、他にご兄弟は?」

「おりませんわ」

「面倒見が良いですし、妹さんがいそうですわよね?」

ほほほほっと笑う周囲に察した。

またか。
いや、罠か。

『お茶会に突然呼ばれてしまって不安なの。断れないし一緒に来てくれない?』

もう友人じゃないわ。あの娘の事を聞き出そうとしている。
好奇心かしら。私を追い落とせると思っての悪戯かしら。

この仮は、倍返しで贈るとして。


(お茶会を盛り上げ、我が家に不利益を被らない話をしましょうか。)


「“ある女性の情事があったとしたら”…という劇の話でしたら、できそうですが?」

「あら、劇の話なのね。」
「私、知りませんわ、是非聞きたいです。」

「どんな刺激的な話なのかしら?」

皆、食いついた。

「劇でしたら、情事の相手は何人くらいでしょう?」

「年齢によるかしら。とんでもなく爵位が高くってお金持ちなら複数人。2人でも少ないんじゃなくて?」
「劇の話ですけど、2人いれば十分じゃないかしら?二股っていう言葉もあるくらいですし。」

概ね、1人か2人。5人と言い出す猛者も居たけど。

「8人でしたら凄いでしょうね。」

そんなことあるのかしら?と言葉が交わされる。

「きっと、デートしても次の約束はしない、けど相手の男性は付き合っていると思っている。
そんな行き違いで、喜劇のように8人とお付き合いする話なのよ。」


一回、一緒に出かけたから、付き合っていると思う男性がほとんどだ。
8人の中で、2度以上のデートをした人は居らず、恋の手紙の多かった事。

その手紙を返していたのは、筆豆だったわねと感心はしている。

「一回のデートで付き合ってるなんて思うのかしら?」

「そうですよね、でもプレゼントを添えた手紙にお礼の手紙が届けばまだ関係が続いていると
勘違いするものかも。本人次第ではありません?」


少々苦しい言いようだけど、本当に貢いだだけの男達が多い。

『浮気ではなく、スターに恋するようなもの』


「そこまで行くと、才能ですわね。」


「他にはこんな劇はどうかしら?誰かが死んだって言うお話。」

場が緊張する。


「誰が死んだのかしら?」

お茶会の参加者達は、最近亡くなったと聞いた名前を思い出しながら聞く。


“あの方は、ご高齢。”
“でも?旦那様は若い子好きって噂。”


色々な想像が掻き立てられる。

「もし不審な亡くなり方なら、調査が入りますわよ。貴族の間での事ですし。」


そうよね、貴族院っていうか調査する機関があるのですもの。
殺人、不審死は調査がされ、噂が出回る。


明確な自死に、調査に出ることはなく
その原因などわかるわけないって事も、知らないわよね。


噂という餌に食いつく令嬢達を、冷たく見ていた。
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