<長編・2万字>人形が死んでいる [本編完結済み]

BBやっこ

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その後  [終わり]

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帰る日だ。

明るい部屋の光に目が眩む

雨は止んでいる。
時間は9時をまわったか。

まだぼーっとする頭だが、座って夢で言えなかった台詞を言った。

「私の勝ちよ」呟く勝利にひと息つく。降霊術の依代には、捕まえて自分の勝ちを宣言する必要があるらしい。
「お帰りください」というようなものだろうか。しかしわかった。塩をくらわせるのは有効だ。日ごろから常備しようか考えるも、変な寝汗にひとっ風呂、浴びに行った。向かう最中に、ちらりと空間だったところを見れば、
甲冑さんは座っているが、刀はなかった。まだ手入れ中なのだろうと思う。今回は出番がなかったね?と挨拶しながら最後の風呂で身を清めた。

「ありがとうございました」「お気をつけて」

宿の人達にお見送りされ、昼前に宿を後にした。

「準備は整ったさあ帰るぞ!」
と意気揚々に、同乗者に言う。

「そーだね。どっか寄る?」
「土産と弁当を買って、ここで食事!」

「今までより旅行っぽいね」
「まーね、母さんにお土産買って行かないと。っていうか夕飯弁当にしよ?」
「おーいーねっ。ご飯炊かなくて済む。」
「つまみも買ってこー!?「はいはい」と軽い弟が運転しながら相槌を打つ。

同じ宿に泊まっていても不可侵な関係でマイペースで過ごしていたけど。送迎の運転手がいるって便利だわー。としみじみ思う。私の妄想だと怪奇現象に興味はないけど。私の仕事関係なので手が空いていたら、思い付きの旅に付き合ってくれるやさしー弟なのだ。お小遣いは出すけど。

「帰って原稿書くかあ。」

旅の思い出を描くのが作家の使命だと思う。
例え変な夢でも。


終わり
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