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3回目の夢
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もう、白い空間なんて慣れたもの。夢なんてそもそも何でもありだと思うが逆に何もないのもそれらしい。
どんとこいとばかりに待ち構えていた。自分の身体は相変わらず動かせず、視線だけが動くようだが、周りには白いボヤッとした世界が広がるばかりだ。どうせなら面白い夢を見たい。そんな余裕があり、気は大きくなっていた。が、包帯が腕に、足に緩く巻きついていた。白かっただろうものが薄い赤に染まっている。ここまでは予想通りというか前日の続きか。拍子抜けした。この帯状の物が締まる予感はなく、手を振ってしまえば地に落ちていくだろう。なんだ。これなら甲冑さんの出番もない。安心だ。そう、安心が怖い。これはホラーの展開的に危ないでしょ?と予想が当たる。ぽてんと音がなるような落下物がひとつ。ポロッともう一つ、もふんと顔にひとつ。
捕まえた
と、でも?ずいぶん可愛らしいものが降ってきたものだ。私にこんな趣味があったとは。こんなものならまあ別に…と侮るのがいけない。じわりじわりと薄ピンクの色が濃くなる。だらりと取れかけの目が恐ろしいものに見えてくる。常ならば可愛らしい白いレース付きのエプロンが赤く染まっている。ねえ、それは何の赤?
尋ねるまでもなく、血のような紅。じわじわと私を染めて行こうとする。これはまずいのでは?ねえ!甲冑さーーんと心で叫んでも止まらない。
慌てても水を吸ったスポンジから、ボタボタと水が出る。紅色の水が。こんな見かけの可愛いものにひっつかれていて滑稽だろうが私は慌てていた。「これはまずい」としか考えられない。はたき落とすとか、首をふるとかすれば良いのにべったりくっつかれたまま、顔の片側が濡れていくに任せるしかない。許容量があるはずだが、しっかり髪と目元まで紅い水が滴った。滴が口にまで垂れてくるのも相まって、雨に降られているようだと思った。血の雨は御免だ。
涙雨。
泣いているのは私か?私じゃない。私は今、人じゃない。人の形、型を持った物。泣きも喋りもしない。だから死なない。死なない、よね?
ボタボタと流れる液体は、紅色でつぅぅっと流れていく量が急激には増えないが、止まる気配はない。このまま私の液体でもなかろうに、流れる続ければどうなるのか。止めたい。早く、速く、ハヤク!
キィィインと金属が共鳴した音に、金縛りが解けたように腕が自由になる。体が動く。
襲いかかってくる短足のぬいぐるみに、私は握り込んだ何かを投げつけた。白い砂のような粒はピンクのウサギに降りかかる。大した力はないだろうけど、カタリッとゼンマイが切れたように止まった。
水に沈んだような重い感覚からザバリと身体は解放された。
そして起きる。
ふんっだ!塩を叩きつけてやった。念のためなら持っていれば良いお手軽除霊グッズが役に立った。
悪霊イコール塩が効いたらしい。しかし、やっぱ変な夢だった!こんなことなら盛り塩するんだった。まだ頭の痛い寝起きに寝返りをうったのだった。
変な夢め!と悪態を吐きながら。
どんとこいとばかりに待ち構えていた。自分の身体は相変わらず動かせず、視線だけが動くようだが、周りには白いボヤッとした世界が広がるばかりだ。どうせなら面白い夢を見たい。そんな余裕があり、気は大きくなっていた。が、包帯が腕に、足に緩く巻きついていた。白かっただろうものが薄い赤に染まっている。ここまでは予想通りというか前日の続きか。拍子抜けした。この帯状の物が締まる予感はなく、手を振ってしまえば地に落ちていくだろう。なんだ。これなら甲冑さんの出番もない。安心だ。そう、安心が怖い。これはホラーの展開的に危ないでしょ?と予想が当たる。ぽてんと音がなるような落下物がひとつ。ポロッともう一つ、もふんと顔にひとつ。
捕まえた
と、でも?ずいぶん可愛らしいものが降ってきたものだ。私にこんな趣味があったとは。こんなものならまあ別に…と侮るのがいけない。じわりじわりと薄ピンクの色が濃くなる。だらりと取れかけの目が恐ろしいものに見えてくる。常ならば可愛らしい白いレース付きのエプロンが赤く染まっている。ねえ、それは何の赤?
尋ねるまでもなく、血のような紅。じわじわと私を染めて行こうとする。これはまずいのでは?ねえ!甲冑さーーんと心で叫んでも止まらない。
慌てても水を吸ったスポンジから、ボタボタと水が出る。紅色の水が。こんな見かけの可愛いものにひっつかれていて滑稽だろうが私は慌てていた。「これはまずい」としか考えられない。はたき落とすとか、首をふるとかすれば良いのにべったりくっつかれたまま、顔の片側が濡れていくに任せるしかない。許容量があるはずだが、しっかり髪と目元まで紅い水が滴った。滴が口にまで垂れてくるのも相まって、雨に降られているようだと思った。血の雨は御免だ。
涙雨。
泣いているのは私か?私じゃない。私は今、人じゃない。人の形、型を持った物。泣きも喋りもしない。だから死なない。死なない、よね?
ボタボタと流れる液体は、紅色でつぅぅっと流れていく量が急激には増えないが、止まる気配はない。このまま私の液体でもなかろうに、流れる続ければどうなるのか。止めたい。早く、速く、ハヤク!
キィィインと金属が共鳴した音に、金縛りが解けたように腕が自由になる。体が動く。
襲いかかってくる短足のぬいぐるみに、私は握り込んだ何かを投げつけた。白い砂のような粒はピンクのウサギに降りかかる。大した力はないだろうけど、カタリッとゼンマイが切れたように止まった。
水に沈んだような重い感覚からザバリと身体は解放された。
そして起きる。
ふんっだ!塩を叩きつけてやった。念のためなら持っていれば良いお手軽除霊グッズが役に立った。
悪霊イコール塩が効いたらしい。しかし、やっぱ変な夢だった!こんなことなら盛り塩するんだった。まだ頭の痛い寝起きに寝返りをうったのだった。
変な夢め!と悪態を吐きながら。
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