12 / 16
3回目の夢
しおりを挟む
もう、白い空間なんて慣れたもの。夢なんてそもそも何でもありだと思うが逆に何もないのもそれらしい。
どんとこいとばかりに待ち構えていた。自分の身体は相変わらず動かせず、視線だけが動くようだが、周りには白いボヤッとした世界が広がるばかりだ。どうせなら面白い夢を見たい。そんな余裕があり、気は大きくなっていた。が、包帯が腕に、足に緩く巻きついていた。白かっただろうものが薄い赤に染まっている。ここまでは予想通りというか前日の続きか。拍子抜けした。この帯状の物が締まる予感はなく、手を振ってしまえば地に落ちていくだろう。なんだ。これなら甲冑さんの出番もない。安心だ。そう、安心が怖い。これはホラーの展開的に危ないでしょ?と予想が当たる。ぽてんと音がなるような落下物がひとつ。ポロッともう一つ、もふんと顔にひとつ。
捕まえた
と、でも?ずいぶん可愛らしいものが降ってきたものだ。私にこんな趣味があったとは。こんなものならまあ別に…と侮るのがいけない。じわりじわりと薄ピンクの色が濃くなる。だらりと取れかけの目が恐ろしいものに見えてくる。常ならば可愛らしい白いレース付きのエプロンが赤く染まっている。ねえ、それは何の赤?
尋ねるまでもなく、血のような紅。じわじわと私を染めて行こうとする。これはまずいのでは?ねえ!甲冑さーーんと心で叫んでも止まらない。
慌てても水を吸ったスポンジから、ボタボタと水が出る。紅色の水が。こんな見かけの可愛いものにひっつかれていて滑稽だろうが私は慌てていた。「これはまずい」としか考えられない。はたき落とすとか、首をふるとかすれば良いのにべったりくっつかれたまま、顔の片側が濡れていくに任せるしかない。許容量があるはずだが、しっかり髪と目元まで紅い水が滴った。滴が口にまで垂れてくるのも相まって、雨に降られているようだと思った。血の雨は御免だ。
涙雨。
泣いているのは私か?私じゃない。私は今、人じゃない。人の形、型を持った物。泣きも喋りもしない。だから死なない。死なない、よね?
ボタボタと流れる液体は、紅色でつぅぅっと流れていく量が急激には増えないが、止まる気配はない。このまま私の液体でもなかろうに、流れる続ければどうなるのか。止めたい。早く、速く、ハヤク!
キィィインと金属が共鳴した音に、金縛りが解けたように腕が自由になる。体が動く。
襲いかかってくる短足のぬいぐるみに、私は握り込んだ何かを投げつけた。白い砂のような粒はピンクのウサギに降りかかる。大した力はないだろうけど、カタリッとゼンマイが切れたように止まった。
水に沈んだような重い感覚からザバリと身体は解放された。
そして起きる。
ふんっだ!塩を叩きつけてやった。念のためなら持っていれば良いお手軽除霊グッズが役に立った。
悪霊イコール塩が効いたらしい。しかし、やっぱ変な夢だった!こんなことなら盛り塩するんだった。まだ頭の痛い寝起きに寝返りをうったのだった。
変な夢め!と悪態を吐きながら。
どんとこいとばかりに待ち構えていた。自分の身体は相変わらず動かせず、視線だけが動くようだが、周りには白いボヤッとした世界が広がるばかりだ。どうせなら面白い夢を見たい。そんな余裕があり、気は大きくなっていた。が、包帯が腕に、足に緩く巻きついていた。白かっただろうものが薄い赤に染まっている。ここまでは予想通りというか前日の続きか。拍子抜けした。この帯状の物が締まる予感はなく、手を振ってしまえば地に落ちていくだろう。なんだ。これなら甲冑さんの出番もない。安心だ。そう、安心が怖い。これはホラーの展開的に危ないでしょ?と予想が当たる。ぽてんと音がなるような落下物がひとつ。ポロッともう一つ、もふんと顔にひとつ。
捕まえた
と、でも?ずいぶん可愛らしいものが降ってきたものだ。私にこんな趣味があったとは。こんなものならまあ別に…と侮るのがいけない。じわりじわりと薄ピンクの色が濃くなる。だらりと取れかけの目が恐ろしいものに見えてくる。常ならば可愛らしい白いレース付きのエプロンが赤く染まっている。ねえ、それは何の赤?
尋ねるまでもなく、血のような紅。じわじわと私を染めて行こうとする。これはまずいのでは?ねえ!甲冑さーーんと心で叫んでも止まらない。
慌てても水を吸ったスポンジから、ボタボタと水が出る。紅色の水が。こんな見かけの可愛いものにひっつかれていて滑稽だろうが私は慌てていた。「これはまずい」としか考えられない。はたき落とすとか、首をふるとかすれば良いのにべったりくっつかれたまま、顔の片側が濡れていくに任せるしかない。許容量があるはずだが、しっかり髪と目元まで紅い水が滴った。滴が口にまで垂れてくるのも相まって、雨に降られているようだと思った。血の雨は御免だ。
涙雨。
泣いているのは私か?私じゃない。私は今、人じゃない。人の形、型を持った物。泣きも喋りもしない。だから死なない。死なない、よね?
ボタボタと流れる液体は、紅色でつぅぅっと流れていく量が急激には増えないが、止まる気配はない。このまま私の液体でもなかろうに、流れる続ければどうなるのか。止めたい。早く、速く、ハヤク!
キィィインと金属が共鳴した音に、金縛りが解けたように腕が自由になる。体が動く。
襲いかかってくる短足のぬいぐるみに、私は握り込んだ何かを投げつけた。白い砂のような粒はピンクのウサギに降りかかる。大した力はないだろうけど、カタリッとゼンマイが切れたように止まった。
水に沈んだような重い感覚からザバリと身体は解放された。
そして起きる。
ふんっだ!塩を叩きつけてやった。念のためなら持っていれば良いお手軽除霊グッズが役に立った。
悪霊イコール塩が効いたらしい。しかし、やっぱ変な夢だった!こんなことなら盛り塩するんだった。まだ頭の痛い寝起きに寝返りをうったのだった。
変な夢め!と悪態を吐きながら。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
百物語 厄災
嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。
小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。
逢魔ヶ刻の迷い子3
naomikoryo
ホラー
——それは、閉ざされた異世界からのSOS。
夏休みのある夜、中学3年生になった陽介・隼人・大輝・美咲・紗奈・由香の6人は、受験勉強のために訪れた図書館で再び“恐怖”に巻き込まれる。
「図書館に大事な物を忘れたから取りに行ってくる。」
陽介の何気ないメッセージから始まった異変。
深夜の図書館に響く正体不明の足音、消えていくメッセージ、そして——
「ここから出られない」と助けを求める陽介の声。
彼は、次元の違う同じ場所にいる。
現実世界と並行して存在する“もう一つの図書館”。
六人は、陽介を救うためにその謎を解き明かしていくが、やがてこの場所が“異世界と繋がる境界”であることに気付く。
七不思議の夜を乗り越えた彼らが挑む、シリーズ第3作目。
恐怖と謎が交錯する、戦慄のホラー・ミステリー。
「境界が開かれた時、もう戻れない——。」

二つの願い
釧路太郎
ホラー
久々の長期休暇を終えた旦那が仕事に行っている間に息子の様子が徐々におかしくなっていってしまう。
直接旦那に相談することも出来ず、不安は募っていくばかりではあるけれど、愛する息子を守る戦いをやめることは出来ない。
色々な人に相談してみたものの、息子の様子は一向に良くなる気配は見えない
再び出張から戻ってきた旦那と二人で見つけた霊能力者の協力を得ることは出来ず、夫婦の出した結論は……
十一人目の同窓生
羽柴田村麻呂
ホラー
20年ぶりに届いた同窓会の招待状。それは、がんの手術を終えた板橋史良の「みんなに会いたい」という願いから始まった。しかし、当日彼は現れなかった。
その後、私は奇妙な夢を見る。板橋の葬儀、泣き崩れる奥さん、誰もいないはずの同級生の席。
——そして、夢は現実となる。
3年後、再び開かれた同窓会。私は板橋の墓参りを済ませ、会場へ向かった。だが、店の店員は言った。
「お客さん、今二人で入ってきましたよ?」
10人のはずの同窓生。しかし、そこにはもうひとつの席があった……。
夢と現実が交錯し、静かに忍び寄る違和感。
目に見えない何かが、確かにそこにいた。

失政の秘密
夢見楽土
ホラー
ある飲み屋で、先輩と後輩がオカルト話に興じます。我が国の政治の裏にある恐ろしい真意とは何か。
少しでも楽しんでいただければ幸いです。
小説家になろう様にも掲載しています。
※このお話はフィクションです。
喪失~失われた現実~
星 陽月
ホラー
あらすじ
ある日、滝沢の務める会社に桐生という男が訪ねてきた。男は都立江東病院の医師だという。
都立江東病院は滝沢のかかりつけの病院であったが、桐生という名の医師に聞き覚えがなかった。
怪訝な面持ちで、男の待つ会議室に滝沢は向かった。
「それで、ご用件はなんでしょう」
挨拶もそこそこに滝沢が訊くと、
「あなたを救済にきました」
男はそう言った。
その男が現れてから以降、滝沢の身に現実離れしたことが起こり始めたのだった。
さとみは、住んでいるマンションから15分ほどの商店街にあるフラワー・ショップで働いていた。
その日も、さとみはいつものように、ベランダの鉢に咲く花たちに霧吹きで水を与えていた。 花びらや葉に水玉がうかぶ。そこまでは、いつもとなにも変わらなかった。
だが、そのとき、さとみは水玉のひとつひとつが無規律に跳ね始めていくのを眼にした。水玉はそしてしだいにひとつとなっていき、自ら明滅をくり返しながらビリヤードほどの大きさになった。そして、ひと際光耀いたと思うと、音もなく消え失せたのだった。
オーナーが外出したフラワー・ショップで、陳列された店内の様々な花たちに鼻を近づけたり指先で触れたりしながら眺めた。
と、そのとき、
「花はいいですね。心が洗われる」
すぐ横合いから声がした。
さとみが顔を向けると、ひとりの男が立っていた。その男がいつ店内入ってきたのか、隣にいたことさえ、さとみは気づかなかった。
そして男は、
「都立江東病院の医師で、桐生と申します」
そう名乗ったのだった。
滝沢とさとみ。まったく面識のないふたり。そのふたりの周りで、現実とは思えない恐ろしい出来事が起きていく。そして、ふたりは出会う。そのふたりの前に現れた桐生とは、いったい何者なのだろうか……。
ゴーストバスター幽野怜Ⅱ〜霊王討伐編〜
蜂峰 文助
ホラー
※注意!
この作品は、『ゴーストバスター幽野怜』の続編です!!
『ゴーストバスター幽野怜』⤵︎ ︎
https://www.alphapolis.co.jp/novel/376506010/134920398
上記URLもしくは、上記タグ『ゴーストバスター幽野怜シリーズ』をクリックし、順番通り読んでいただくことをオススメします。
――以下、今作あらすじ――
『ボクと美永さんの二人で――霊王を一体倒します』
ゴーストバスターである幽野怜は、命の恩人である美永姫美を蘇生した条件としてそれを提示した。
条件達成の為、動き始める怜達だったが……
ゴーストバスター『六強』内の、蘇生に反発する二名がその条件達成を拒もうとする。
彼らの目的は――美永姫美の処分。
そして……遂に、『王』が動き出す――
次の敵は『十丿霊王』の一体だ。
恩人の命を賭けた――『霊王』との闘いが始まる!
果たして……美永姫美の運命は?
『霊王討伐編』――開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる