<長編・2万字>人形が死んでいる [本編完結済み]

BBやっこ

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人が増えた

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夕方になると、新規のお客様が何組かいらしたようだ。観光時期を外した宿泊であるものの賑わってきた。これまた顔馴染みのようで近況など話している。年嵩のあるご夫婦と、面白くなさそうな表情をした小さなお嬢さん。おそらくお祖母さんが話しかけているが、「うん」やら頭を横に振るやら意思表示をしている。ご機嫌がよろしいようには見えない。何か訳ありかと察すれば、「息子夫婦は後で来るから」と宿泊手続きをしているお祖父さん。ああ、ご両親は理由あって後から来るんだね?それは心細さもありそうだと勝手に納得し、風呂に行った。独り占めは難しいかと思ったが、入ってみればご一緒する人もおらずゆったり手足を伸ばす。人の来る気配にささっと出た満足だ。
湯冷ましに独りでロビーにいるのは、団欒しているご家族の賑わいに落ち着かない。さささっと食堂に入り込み食事に集中!美味しくいただき食事を済ませて、賑わいが頂点になる前に部屋に戻ろうとした。甲冑さんが見える時はたと夢の心配をした。2回不穏な夢もみたのだ。今日は3回目。塩で清めておこうか?チラリと赤拵えの前に立つ。手を合わせて、頭を下げる。

守ってね

2度とも甲冑さんが助けてくれた。変な夢だが直接的な死を連想するものではない。その変なものを見てしまったり捕まりそうになったけど。大丈夫。夢を見ただけで死ぬことはない。

しかし、痛みも音もない世界で私は人の形を持っていても、その時は人未満の存在なのかもしれない。

人未満、人の形だけを止める、人の型を持つ
人形のように動かない、動けない私が

死なないように。
たとえ夢でも死がありませんように。

とどめを刺さされないように

見てしまった
次に捕まった
その次は?

定番的には刺される予感がしている。刀を持つ甲冑さんが味方だって信じてるよ?
赤く染まる前に、助けてくださいね。

白い空間だった。暗闇が覗いていた。血のような紅が染まっていく。
無音で、視覚だけがある感触は怪しい夢の世界。

あれは私が作った幻なのか
夢の産物は私だけの原因か

あれは夢だよね?夢は夢で終わらせる。希望も何もない、変で不穏な夢など
ただ夢だったで終われば良い。

拝み終わり、足取り軽く部屋に向かった。

しかし今日は、大人しく眠れる気配がなくこれはもう夜更かしコースだな。明日の予定はないし、朝とは言えない時間の風呂を入ることになりそうだ。夜更かしした目覚めにちょうど良い。デジタル書籍もあるし。ネットサーフィンで何か本を探すことにしよう。映画の気分になれなくても文明の利器とは、私の味方だった。
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