<長編・2万字>人形が死んでいる [本編完結済み]

BBやっこ

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ピンクの手足

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やっぱ海鮮ものは、美味しい。さすがは海が見える宿と絶賛する。泳ぐ予定もない、見るだけになる海を思い馳せながら食べていたら昼食を食べ終わっていた。もう一度何かを読もうかと地元情報の載っている雑誌を選び、ソファに座った。食休みだ。しばらく名産品やお土産のランキングを眺めていた。そのうち、後ろで「ケン、ケン、パッ」と声が聞こえる。団体さんの宿泊客のお嬢さん達だろう。この雨でも元気だなあ。小学生かな?小さな子にとっては遊べれば楽しいのか、この湿気にも負けず逞しい。少し重苦しく感じてたらしい気持ちが明るくなった。童心に返れる遊んでいる様子に、

私もあれくらい身軽に飛べるかな

「やめとけ」と言う心の声に従う。大人な私は静けさを求め、他の本を持って移動することにした。その時に、目に入ったソファに置かれたリュックが目に飛び込んでくる。遊んでいる女の子どちらかの荷物だろう。2つ置かれたその1つに、

あれ、なんだっけ?

気になる物が括りつけられている。手足がすごく長い。胴もまあまあ長いが丸い耳がつく、動物だ。何かのキャラクターだったと思い至り、頭の中でピンク色の泥棒ソングが流れる。

ちょっとだけよ?

いや、ちがう違う。結局名前が出てこない。少し大きいアクリルビーズでできたそれは、半透明な体をキラリと光らせて存在を主張していた。キーホルダーとは名ばかりの飾りとかしているソレhzピンクの動物は手足を投げ出しギラリと元肉食獣の雰囲気を醸し出す、のかもしれない。確か逃げ足が速い、スピード命のキャラクターではなかったか。

人ならざるものも人の形、型なんだな。何体も同じ型でできているのか。一時ビーズで指輪などのアクセサリー作りにハマった思い出が浮かぶ。あれも手作りかもしれないと思い至り、人が作った人型は、何らかの思いを託されるか?ピンクだから恋愛は短絡的か。人の情が絡むと物事は面倒くさくなるのが常なのだよ。その時は逃げるが勝ちだよねと語りかける。もちろん、答えはないが顔はこちらを見ている。目があるから人の思惑を感じるのかもしれない。

窓の外では、雨音はザーザーと激しい音を立てている。
ふと目にはいる赤拵えの甲冑。瞳のありそうな顔を見て、あんたも好きね?のセリフを思い出し、この人が言うわけないが、なんとなくアテレコしてしまった。笑いを噛み殺しながら部屋で帰りに寄るご当地の物を調べて過ごした。ついぞ、手足の長いピンクの固有名詞を思い出せず、忘れるのだった。
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