<長編・2万字>人形が死んでいる [本編完結済み]

BBやっこ

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避難先の宿

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「そういう夢を見た」ってのが、よくある締め言葉よ。ムクリっと布団から出て明るくなった宿の部屋で独り言を溢した。あの暗闇が出た後、夢の中でも寝たからか結構な時間になっている。そんな目覚めに「昨夜の丑の刻参りモドキといい呪われてるかな?」と思うも外の景色を見る。雨でも心持ち明るい空は、「もしやこのまま雨が上がるのでは?」と思いたくなる。既に朝食がいただける時間になっていたのに気づき、テレビを点け身支度を始めた。着替え終わり荷物の整理をしていると天気予報では、雲行きの怪しいことになっている。警報と注意報で埋められた日本地図の部分は、この地を示しているのだ。

あれ、これって大丈夫?

そう少し嫌な予感と不安を抱えながら、「お腹が減ってるからね」と朝食に向かった。朝食をゆっくり食べていると、人が増えている気配がして見れば、入り口に集まっていた。食事を食べ終わりチラッと玄関を覗くと、何組かの家族が宿泊の手続きをしているようだ。宿の人にそれとなく聞くと、河川の増水で自主避難してきた人らしい。皆さん慣れているようで、宿の人とも親しそうだ。そこに緊張感はなく和気藹々としてる。ただ、人口密度が上がった。甲冑さんも埋もれているようで、よく見えないね。そういえば「昨夜は夢でありがとう」と心の中で手を合わせて感謝する。通り過ぎた先には、小学生くらいの子どもたちも数人おり、避難という名目を持ったお泊まり会になる様相だ。これはもう、団体さんが来たという認識になった。賑やかな道を、置いてある荷物を避けながら進む。これは、明日は早々に宿を出ようかなと頭をよぎったが、宿の女将さんに呼び止められて思考が思考が中断した。そうと言うのも、この辺に大雨の警報が出てはいないが、川上の降水量が多いため河川の水位が高くなっている。場所によっては危険も考えられるので、慣れていない観光客の私を心配してくれたらしい。帰りを明日ではなく明後日へ?何かに足止めされているようでちょっと怖い。映画の影響もなくはないが、これは…。延長を考えることにした。予定の調整はやれなくもない。ちょうど家で休む日も込みで予定に空白を設けていた。余裕でだいじょう…いや少し準備しておくかと思い直す。団体さんで受付が混雑しているので、昼にもう1泊するか決めると伝え、女将さんと別れた。

お土産も明日、帰る日に買おうと思っていたが、”先に買っておいて帰りに渡してくれるサービ“があると売店の人に言われて今日買い物を済ませる気になった。忘れず土産を持って帰らないとね。忘れれば郵送かな?そうなれば苦く笑うわ。この賑わったロビーの雰囲気で座ってのんびりする気はないので、しばらく部屋にいようと移動する。とりあえず部屋で詳しくニュースを見ようと電源をオン。ローカルな地元密着な番組は、現状を伝えてくれ、ネットでより詳しく下調べもしよう。その結果、もう一泊していくことにした。念には念を。地元の人の動きを真似た方が安全策だ。海は綺麗だが、怖い部分があるのが水というものだと決心した。

宿に学割を利用したまま、継続で宿泊できるか聞いてみよう。手続きしたらまた風呂に入るか。なごり惜しむように風呂に入ろうと考えていたが、もう一泊なら予定よりのんびりと昼食の後に入ろう。諸々の計画を変更した。明後日の帰宅を実家に報告したのだった。

延長で明後日の帰宅が決定。次は、買う予定の土産を先に買いに売店に寄った。まんじゅうは買いで、チョコレート系も気になる。海の近くなんだから海鮮物をスルメも追加?いや直売所を通って帰ろう。酒のあてになるものを実家のお土産に探すとしよう。自分用と配る用の品を考える。駅によって夕飯用の弁当を買うのはどうだろう。ご当地アイスは食べたいと思った。

昼食には少し早い時間にロビーに来れば、賑やかな声が響いた。振り向けば2人仲良しらしい女の子がはしゃいでいる。おお若さだとちょっと耳に痛い声を聞かなかったことにして、そんなキャピキャピな女の子達から離れ少し遠回りに歩いてから食堂に行こう。こう食っちゃ寝は楽しいが、体重に響くのは辛い。気づいた時に動くくらいしないと運動習慣などないに等しい私は特に。運動神経はそれほど悪くないつもりだが。そうこうして、昼食の海鮮麺を堪能した。
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