<長編・2万字>人形が死んでいる [本編完結済み]

BBやっこ

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雨もよう

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今日は雨。そう決まり、身支度し終わった私は朝食に食堂へ向かった。バイキング式の朝食はこじんまりしている感じだが、定番のものは網羅されている。

必ず、最後にヨーグルトを食べよう。

そう決め、和食寄りのモーニングをよそった。ご飯、合わせの味噌汁、鯖の焼き魚がこんがり黒色よりだが美味しそうだ。そして納豆!藁に入ったのが物珍しい。ここらへんで作っているものらしい。藁を剥けば、納豆が出てきた。この藁で人形でも作れそうだ。藁人形な。
誰か呪うか?と顔を思い浮かべるも、『人を呪わば穴二つ』。そんなリスキーなことはお勧めできないよ。誰に助言するでもなくモクモクとご飯を平らげた。

ちょうど、掃除をしていたらしい宿の人と話しをした。甲冑をちらり時にしつつおじさんの話を聞く。「いや~今日は雨で残念だけど、散歩するにはいろいろあってね。」花の道、展望台という名の小山、名所もありたしかに1万歩コースになりそうな充実ぶり。外に行く気があるならね。私は宿でゴロゴロしたい。その本心を隠しつつ話を愛想よく聞いた。テレビでいっとったが、少し雨が上がるらしい。近場なら神社くらいかなあ」お?神社。そんな有名というか情報にのっているような所があっただろうか。「そこなあ。出るらしいんだわ」
んん?雲行きが怪しくなってきた。

林の中にある神社。その木には釘。五寸釘が、藁人形と共に。悪戯だろうと取り合わないものの、次元では有名な丑の刻参りスポットらしく、地元の学生には肝試しに使われるんだとか。「木の根が張っていて足元が悪いから行くなら気をつけなよ?」というお言葉をいただき、今日の納豆の藁を思い出す。五寸釘って何処で売ってるんだろうとも。足りないのは、呪う相手だなと行く気はない神社を想像してみた。

さて、甲冑さん。話好きだったおじさんが見ていないのを確認し、武者に拝む。
お願いは『祟りませんように』といったところだろうか。挨拶を済ませふと気づいた。釘を打つ音。カーン、カーンと少しズレたような夢での音。後ろから聞こえていた?真正面の武者の甲冑に問いかけたくなった。


後ろに、居た?

藁人形、五寸釘と金槌に白装束。頭に蝋燭も装備だったか。女性?男性でも良いのかもしれないが、見られては駄目だ。見てはにない。しかし、邪魔はした。ひやっとする。後ろに立たれてたのが怖い。目は後ろにないが、呪いは失敗した?それとの縁を武者が、斬ってくれたのだろう。藁人形とともに生き残ってはいない。呪いとともに死んでくれ。実体のない物を土に埋めれる訳はない。なので、意識に埋めておいた。

観光名所にお墓がある。武者の墓もあるだろうか。死を迎えた身体、意識で生きてるものは人の形で牙をむくものなんだろうか。


ウロウロと宿の中は探索し終わった。置かれている置物や花を見て、休憩とばかりに
庭に向いたソファに座り外を眺める。どこも雨。しばらく見ていたが、外のちょっとした社に室内からで悪いが軽く手を合わせ、雨に濡れる緑を見る。変な夢が怖いとは思わない。夢は夢。系譜がみえても関連性を感じても危機などではない。それでも神頼みとばかりに祈りたくなるくらいには奇妙だった。呪いも死も日常じゃない。
認めない。その方が良いだろう。しかし、呪いの形は人なのか人の形なのか?ぼーと考え、飽きたので部屋に帰った。

昼はカップ麺を啜る。これぞ贅沢。実家暮らしの充実した食事は一品追加されることはあっても、インスタントで済ますことうちでは少なく、外食か出前になる。食べそびれる賞味期限が迫るインスタントラーメンその他も、旅先で食べると特別感がある。朝食と夕食がしっかりしているから昼食くらいシンプルにススっている。運動量のが心配だ。

腹ごなしにウロウロ。食後の運動と暇つぶしになりそうな雑誌、本を物色。玄関に人の気配。挨拶し合う様子はお客さんだ。この雨の中、泊まりに来たらしい。

お嬢さんのいる、3人で泊まるのかな。その子の持っているリュックに懐かしいものを見た。包帯男をデフォルメしたような人形。ブゥーどぅーにんぎょう。流行ったなあ。ピンクだから恋愛運かな?お土産品にもよくある色によって定番のピンクは可愛らしいお嬢さんにも選ばれましたかあ。かくいう私のも拾ったやつだが。呪術的なものチクチクしなおしたあれは何処に行ったのか。

新たな宿泊客に軽く会釈して、部屋に戻った。
日が暮れた時間も雨のまま。ずっと暗かった今日という日に、まだまだ雨は尽きない。夕食の前に気持ちがざわつくのを落ち着かせるため風呂に行く。何回も行けるのは、良い。独り占めの浴槽に1人浮かび、チャポンと風呂場に響く音を聞く。不安に似た何かに明るい人工の灯火が和らげてくれる。火ではない電気なわけだが、安心させる効果が光にあるんだな。1人で風呂に入るのは怖くない。それより、人影のが怖いのさ。すれ違った錯覚の影を恐れていてどうするのか。頃合いを見て風呂から上がった。
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