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V 舗装された道

1人2役

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ヴァルトが王都に着くまで会えないことを知り少しガッカリしたセリは、
まだロードの膝の上に座っていた。

そこで、寛いでいる。
自分の居場所なのだと誇示するようになっていた。
拒まれず、邪険にされず、迎え入れられる。

それに嬉しいと思っていた。
子供扱いだけでないと感じてきても。

こういった甘やかされる経験がなく、
憧れていたと気づいた。
自分の思い描いていた関係性とズレるものだが

とても嬉しい。

ここでなら、成長できるかもしれない。
待っていてくれる。

迎えにきてくれるかも

セリには、憧れているシーンがあった。
自分に呼びかけ、その腕に迎え入れてくれる人影。

子供を迎えにくる大人。
そんな他ではありふれた事を羨望していた。

自分にはなかったから。
セリは、浮かれている自分を止められなかった。
それも、咎められる事はないのだ。

安寧とか安心のひと時だった。

そのうち、シュルトが合流し、
部屋飲みにうつることにした。


要警戒相手の情報を共有した後、
呑みに移行する。

『竜の翼』での打ち合わせは、飲み会の形をとる。
さっそくカクテルを試すが、ミックスジュースと言えるものだった。

シュルトの「お酒は王都についてからネ」からこうなる。これもカクテルだが…

残念なような
楽しみのような。

「拠点で呑もうぜ」と慰めをカナンから貰う。

その言葉に、確実に自分がそこに居ると決定されていることに気づく。
安堵のような感覚がした。

それをバレないように、酒の入っていないカクテルを飲む。
「美味しい。」と顔を綻ばせる。

ロードが顔を背けて「かわいい」と言っている。

キースも味見とばかりにカクテルを飲む。

紅茶の入ったカクテルというのもあると聞き、
「その時は、熱い紅茶の時点で頂戴よ?」とキースの言葉が続いた。
(ぶれないな)とセリは思った。

大人組は強い酒を飲んで黄金色の液体を味わっている。

喉にくるようだ。

仄かな酒の香りが上品だ。飲んでみたい。
シュルトがささっとツマミを作って出し、
ロードがチーズをセリの口に運んだ。

リラックスしたと見て、カナンが話を切り出す。
「提案がある」ロードというよりセリに向き直る。
場所はいつもの膝の上だ。

「王都での冒険者のセリとロードの番を分けたい。」

要領を得ないので続きを聞く

『竜の翼』のメンバーとしてと、
【竜の花嫁】を隠れ蓑にと考えている。

利点は
セリとして行動ができること、【竜の花嫁】として狙いが逸れること。

セリが狙われるのを減らせる狙いだ
全く狙われないには無理だ。
『竜の翼』の新人は狙い目だ。

それでも減らせればその分罠も張れる!」

囮役ができる、役立てそうだ
せは、嬉々とする。反対に、

ロードは渋り顔。囮がお気に召さないようだ。

「【竜の花嫁】は、顔も容姿も隠すことになる」
「変だと思う」
フードでも怪しく見えるのにとセリが意見を言えば

「そうでもないのヨネー」とシュルトから説明が足される。

「竜の花嫁って本を知ってる?」
「聞いたことはない。」と伝えた。

「竜人の花嫁になった人が書いた本でね。

竜生態や竜人の習性に対して
誤解を解くために書いた手記なの。

その竜人は、番に服を着せるのが趣味で
番のために収集家で宝飾品や衣装を買い上げて。
買い方がすごいのよ。

お金はどこからかと言えば、狩の成果から。
総じて強いのは、ちからと執着ってところね。

番を見せびらかせたい
自分だけが見たい

で分かれるらしいのヨ


「ロードは半々くらいか?」
閉じ込めたいが飾り立てたいのだが

セリはわからず首を傾げた。

「王都で流行った有名な出版物なのよ」

貴族の女性に
竜人の花嫁になったならと流行し、
舞台にもなる有名な話だ。

セリには王都の流行は縁がなく知らないのも無理ない。
(読んでみたいな)と興味は持ったのだった。

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