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V 舗装された道

強化魔法

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「シュルトだって、やれるだろ?」
何の話かとロードに顔を向ければ、

風魔法と身体強化で走り回るやつ。
森でやってたなあ。

「ええ、ええ?やりましたとも!
その後動けなかったワ。」お怒りなシュルト。

「アンタたち3人の体力馬鹿とあのスピードで、
森を一周よ?なんの罰なのよ!」

あ~。規格外の人達と走らされれば魔法をかけても動けなくなるか。

同じ魔法がかかっていれば、元の体力差も出てくる。
多少魔力の使い方でラクになるとは聞くけど。

…ちょっとやってみたいな。

身体強化はやったことがある。
子供の力と体力で、大人について行くのはツライものがあった。
自分にかけながら、動き回っていたものだ。

魔法の攻撃を覚える前に、使っていた馴染みある魔力。
獣人ならだいたい使えると教えてもらい、実践で使っていた。

その時も
風魔法を同時に使い続けるのは無理だった。

一回、両方を一瞬だけ重ね掛けして跳んだことはある。
“飛んだ”と言えるほど距離を稼げたものだ。

爽快だった。
着地が痛かったけど。

魔力を帯びつつ、風を纏う状態を維持する難しさ
魔力消費量も多く、意識も飛びかけた記憶が掘り起こされた。

身体強化の魔法で脚力、風魔法でスピードを上げる。
それを続け、制御するのは難しい。

慣れも必要だ。
止まる、避ける、それを連続する。

大抵、木に衝突する。
地面より木の上のが楽な体格だった。

自分の魔力量ではまだ無理でも、
コツを掴んでおけば、風を纏った状態を維持できるようになるかも。

やってみたい。
機会があったら願い出よう。

そう決めて手の中にある魔石に集中することにした。
後、5つくらいならそう時間はいらない。

会話のやり取りを聞きながらやれば、
充填し終わり、シュルトに渡す。

受け取ったシュルトが、
「んー。そんなに違和感ないわネ?」

と顔を覗き込む。
今朝もらった魔道具の効力のことだろう。

ロードが捕捉した話によると、
「存在感を無くすでもなく、思い出しにくくする効果だ。
俺らはもうセリの顔を覚えているから、感じないだろうな。」

体格なんかの輪郭しか思い出せない印象に残らないようにする魔道具。
使い勝手が特殊だ。逃走用に使えると思った。

そして…
「忘れられて、置いてかれることはない?」

ぽそりと心配していたことが漏れた。

驚いた2人に見られ、失言だったと思った途端…
ロードに抱きつかれてギュム・ギュム締められる。

それをひっぺがしてくれた、シュルトに礼を言った。
「けほっ」と喉に入った空咳をしたが、落ち着きを取り戻す。

顔を上げれば
ロードが狼狽ている様子にびっくりし、
セリは釣られて、オロオロしてしまった。

(何か不味いことを言っただろうか?)

シュルトが『落ち着きなサイ』と言うように、セリの頭をポンポンと撫でる。
セリが少し落ち着いた様子を確認して、
「置いてかないわヨォ~」ギュッと優しく抱きしめた。

少し呆れと、悲しそうな感情が伝わり
何故そう思うのかセリは、わからなかった。

とにかく、この黒い魔石のプレートは
使っている実感の湧かない魔道具なんだなと結論付けた。
その値段を聞くまで、お守りみたいに気分的なもの、と

認識はしばらく、変わらなかったのだった。


ロードはと言うと、セリの言葉にショックを受けていた。
(そんなに、俺が信用できないか?)

どうすれば良いか戸惑うこと自体、ほぼないロードが
狼狽ている。“直感では解決できない”とわかっても打開にはならない。

シュルトが((変なの物見てしまった!))な顔をしたのも無理なかった。
普段、飄々とした態度のロードなのに、狼狽るって!?
ロードの中、セリの存在の大きさを実感した。

既に、セリとの良好な関係が、ロードを支える一つになっている。

こちらの反応を気にしている余裕のないくらい動揺したロードを横目に、
(これは緊急案件ネ)

『竜の翼』最大の危機の予兆を感じたシュルトだった。
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