上 下
124 / 200
IV 新たな道行き

襲撃 -2

しおりを挟む
襲撃が終わらない!?

ビックバード達は遠巻きになったものの、翼の音と
不穏な風が巻き起こる。

リーダーを討伐した群れを、どう退ければいいのか?
船上は、騒然とする。

このまま船を進めて逃げ切れるか?
後方からの攻撃に耐えられるのか?

指揮する者が判断できなかった。
不安が広がりどんどん混沌となる

セリは、雷属性の銛を手にする。先端の守りに必要な武器だと判断し、魔力を込める。
ヴァルトが飛び立った。

銛を乗員に戻し、追いかける。

ヴァルトが船内を飛ぶ。
乗客の避難している船内は人でごった返しになっていた。
人の波を上から避けるが、戸惑いや悲鳴の声が上がる。


狙いをつけられたのは、商人風の男。
その懐に抱えた鞄。

驚きと慌てた声を上げ、ヴァルトを振り払おうとする。
ゴロリ
床に、丸い魔道具らしきものが転がり落ちた。

セリは慎重に近づく。
魔道具はまだ、何らかの機能を果たしている。
この大きさはB、いやA級の魔石だ。

見知らぬ魔道具を壊すのも、止めるのも危険だと判断する。
入っている魔力量や、機能がわからない。

魔力を抑え込むことにした。

セリは、水の魔力を操り
魔道具を『ウォーターボール』で包んだ。

魔石が、纏わせた水の魔力を震わせている。
これを抑えるべきだ

二重、三重に水のベールを纏わせてみる。
魔力に干渉しないよう、慎重に操った。

振動が収まる。何らかの力を遮断できただろうか?

外の甲板から人々の歓声が上がった。
魔物が退いたのだろう。


ヴァルトが、男の開いた鞄をセリの足元へ持ち帰る。

腕に止めたヴァルトを見れば、
嫌がっているようにフルフルと首を振る。

“コレは嫌な物体だ”と言っているようだった。
荷物から発している強い臭いが、セリでもわかった。

商人風の男は既に、近くに居た乗客に捕まった。この後、コレのことを聴取されるだろう。

ヴァルトに、『エアウォッシュ』してやり、
カバンが発する臭いに、足で蓋を閉じた。

手にはまだ、この“怪しい魔道具”を持っている。
セリは、ヴァルトを遣いに飛ばした。

ロードとキースが来るのを待った。
手に持つ魔道具を慎重に扱う方が良い。

両手で持ち、魔力の巡りに集中した。

外から乗組員が知らせた話によると、残りのビックバードは巣に帰ったらしい。
「安心してください!脅威は去りました。」

乗客にも安堵の空気が流れる。
「お怪我をされた方は…」治療に移るらしい。


“怪しい魔道具”を持って少し移動しようとすれば、
乗客に囲まれた。

「あんた!冒険者だろう?
護衛をしてくれないか!この船にいる間だけでいい!」

「何を言う。こっちが先だ!即金で払えるぞ」
「いいえ!私の警護をして…」

近い!
いつもなら即、断って逃げるが、今は魔力を使って集中していた。
詰め寄られ、逃げ場がない。


ヒヤッ
温度が下がる。

「通せ」

ロードが来てくれた。
乗客は左右に避けた。良い危機意識だと思う。

セリの手中にあった魔道具を凍らせる。

完全に、止まったらしいソレを掴み取り、
逆の手で、ロードはセリの頭を撫でる。

「良くやった!」
その言葉に顔を赤くしたセリだった。


キースと合流するため船の後方に移動する。
乗組員や護衛に礼を言われながら、たどり着いた。

貴族らしき乗客とキース。
「回復魔法をかけてくれ!金なら払う。」

キースは、それを無視している。

回復魔法は、重症の乗組員にかけた。
「後は魔力を温存する」と他の誰にも使わなかった。

それを聴かずに詰め寄る乗客を相手にしない。
後は、乗組員がどうにかするだろうと連れて行かれるのを待った。

3人で集まる。
「ふーん。これ?」

キースが、凍った球体を手に持つ。
止まっている魔道具をクルクル回して観察する。

「音だね?」

鳥の魔物を警戒させ、攻撃対象になった原因。
故意に起こされた襲撃だとわかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】竜人と女冒険者は、ハネムーン旅行に行くようですよ!

BBやっこ
ファンタジー
冒険者で、『竜の翼』リーダーの竜人ロードは、番を見つける。冒険者をしていたセリを王都の拠点で篭り過ごす。A級で目立つため、面倒な依頼を受けるよう煩いので番とハネムーンに行く!その旅に、メンバーも参加したりしなかったり。冒険者の仕事も少し受けつつ、旅に出る! 観光予定です

【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!

まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。 そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。 その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する! 底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる! 第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。

めんどくさがり屋の異世界転生〜自由に生きる〜

ゆずゆ
ファンタジー
※ 話の前半を間違えて消してしまいました 誠に申し訳ございません。 —————————————————   前世100歳にして幸せに生涯を遂げた女性がいた。 名前は山梨 花。 他人に話したことはなかったが、もし亡くなったら剣と魔法の世界に転生したいなと夢見ていた。もちろん前世の記憶持ちのままで。 動くがめんどくさい時は、魔法で移動したいなとか、 転移魔法とか使えたらもっと寝れるのに、 休みの前の日に時間止めたいなと考えていた。 それは物心ついた時から生涯を終えるまで。 このお話はめんどくさがり屋で夢見がちな女性が夢の異世界転生をして生きていくお話。 ————————————————— 最後まで読んでくださりありがとうございました!!  

精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~

ファンタジー
かわいい精霊さんと送る、スローライフ。 異世界に送り込まれたおっさんは、精霊さんと手を取り、スローライフをおくる。 夢は優しい国づくり。 『くに、つくりますか?』 『あめのぬぼこ、ぐるぐる』 『みぎまわりか、ひだりまわりか。それがもんだいなの』 いや、それはもう過ぎてますから。

拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、ひょんなことで死亡した僕、シアンは異世界にいつの間にか転生していた。 とは言え、赤子からではなくある程度成長した肉体だったので、のんびり過ごすために自給自足の生活をしていたのだが、そんな生活の最中で、あるメイドゴーレムを拾った。 …‥‥でもね、なんだろうこのメイド、チートすぎるというか、スペックがヤヴァイ。 「これもご主人様のためなのデス」「いや、やり過ぎだからね!?」 これは、そんな大変な毎日を送る羽目になってしまった後悔の話でもある‥‥‥いやまぁ、別に良いんだけどね(諦め) 小説家になろう様でも投稿しています。感想・ご指摘も受け付けますので、どうぞお楽しみに。

異世界でお金を使わないといけません。

りんご飴
ファンタジー
石川 舞華、22歳。  事故で人生を終えたマイカは、地球リスペクトな神様にスカウトされて、異世界で生きるように言われる。  異世界でのマイカの役割は、50年前の転生者が溜め込んだ埋蔵金を、ジャンジャン使うことだった。  高級品に一切興味はないのに、突然、有り余るお金を手にいれちゃったよ。  ありがた迷惑な『強運』で、何度も命の危険を乗り越えます。  右も左も分からない異世界で、家やら、訳あり奴隷やらをどんどん購入。  旅行に行ったり、貴族に接触しちゃったり、チートなアイテムを手に入れたりしながら、異世界の経済や流通に足を突っ込みます。  のんびりほのぼの、時々危険な異世界事情を、ブルジョア満載な生活で、何とか楽しく生きていきます。 お金は稼ぐより使いたい。人の金ならなおさらジャンジャン使いたい。そんな作者の願望が込められたお話です。 しばらくは 月、木 更新でいこうと思います。 小説家になろうさんにもお邪魔しています。

無属性魔術師、最強パーティの一員でしたが去りました。

ぽてさら
ファンタジー
 ヴェルダレア帝国に所属する最強冒険者パーティ『永遠の色調《カラーズ・ネスト》』は強者が揃った世界的にも有名なパーティで、その名を知らぬ者はいないとも言われるほど。ある事情により心に傷を負ってしまった無属性魔術師エーヤ・クリアノートがそのパーティを去っておよそ三年。エーヤは【エリディアル王国】を拠点として暮らしていた。  それからダンジョン探索を避けていたが、ある日相棒である契約精霊リルからダンジョン探索を提案される。渋々ダンジョンを探索しているとたった一人で魔物を相手にしている美少女と出会う。『盾の守護者』だと名乗る少女にはある目的があって―――。  個の色を持たない「無」属性魔術師。されど「万能の力」と定義し無限の可能性を創造するその魔術は彼だけにしか扱えない。実力者でありながら凡人だと自称する青年は唯一無二の無属性の力と仲間の想いを胸に再び戦場へと身を投げ出す。  青年が扱うのは無属性魔術と『罪』の力。それらを用いて目指すのは『七大迷宮』の真の踏破。

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく

霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。 だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。 どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。 でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!

処理中です...