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IV 新たな道行き

⑥ 鳥除けの矢

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「魚ほぐしみを油漬けにしておいて、
ライスに入れる!これがまたうまいんだあ
マヨネエズって珍しい調味料が、あってな!!」

船長ゴートから美味しかった記憶のある料理の話を聞き、
満足に料理を楽しんだ。

「食後のお茶が飲みたい」というキースに
ハーブティを淹れ、船長にも出した。

セリも飲んでいるが、ロードの膝の上だ。

くしゃみをしたせいだろうか
と少し冷たくなった足が温まっていく。

毛布に包まれ、人肌に接している事も要因だ。

船長の話は東の国にも及んだ。
主に食べ物だったが、船で行くのに持ってこいだ!

行くことになったら、乗せてってやるぞ!!
と売り込みもあった。

セリはリップサービスだと思い聞いていた。
冒険者を乗せれば、護衛はいらない。

帰りは荷物を積んで帰ればいい。
なんなら、迎えに来て荷物と共にまた帰る。

そこを狙っていると思っていた。

ゴートが船長として考えたのはそこではその点ではなかった。
セリの能力、水の魔法。

アレは、ただの水魔法ではないと見抜く。
船乗りに水魔法を使うやつは多い。
海や魚との相性が良いのだ。その数多く視てていたから
気づいた。

この娘は、
水に愛されている。

そんな寵愛を受ける人間に便宜をはかりたいと思うのは、
船乗りの共通の心理だろう。

ただ、
ゴートが関わりたいと願うのは、船乗りの信仰心にも近い感情だった。

水や海を感謝、畏怖し、信仰する。
船乗りでいる間、引退しても持ち続けるだろう矜恃だった。

海に生かされているのだから、と。


友好的に談話していた。

敵意を察知する。

ロードとヴァルトが反応した。

それを訝しげにセリは見たが、続けて何が原因かわかる。

鳥の魔物

風の魔法を使って滑空する翼を広げた影が見えた。

偵察のように高いところから船を見ているようだ。
釣果を狙っているんだろうか。

「そろそろ、弓を投げる箇所か。」

考える動作で船長が言う。

弓を投げる?射るんじゃないのか。
そこに、
小柄な男が、先端に何か付いた矢を持ってきた。

「ここが笛のように鳴るんだ。」と説明してくれる。

モリを投げる要領で投げ、ここら辺を狩の縄張りに
放って、牽制するのが決まりらしい。

ただ、投げるのでは高さも距離も稼げない。
弓の射手が居れば、

セリが矢を放つことになった。


キリキリと弓矢を弾く音
風の魔力付与された肩掛けが、呼吸するように魔力を放出する

風を防ぐ。
穏やかに、凪ぐように…

“雑念を捨てろ
弓の射る先にあるものは
獲物ではなく、当たる場所だ。”


師匠から言われた言葉を心の中で繰り返し
刮目して矢を射った

シュバっと言う音共に

空を裂く軌道
風が唸るように弓が鳴る


音と魔力からキースが、ヴァルトを守り、

ロードが矢の軌道を見守る。


トンっ
船の後尾に刺さった。

オオオオォォ!
船乗りの歓声と共に、


鳥の魔物は遠ざかって行ったのだった。



その後も、船乗りたちの祝宴が続き、
水の祝福を受けた子の恩恵に感謝した。

そして、
港街に到着するのだった。



訂正)ローブから“肩掛け”に変更しました。
 スカーフのような軽い布で魔術式の模様が刺繍されているイメージです。
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