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IV 新たな道行き

④ 釣りと水魔法

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船は事もなく、川をゆっくり流れて行った。

見張りとは名ばかりに、日向ぼっこをしている様子に見えるが、
気は配っていた。それでも長閑さは拭えなかった。

セリは物珍し気に船の上の景色を見ていた。
船が作り出す波紋、そよ風が通り過ぎる。

静かな朝の森を遠目に観察していた。

上りの船がこれば船が避けるために軌道を修正する。

上りの船に譲るのがルールのようだ。
その船は、前の部分の波が高く、何かが先導しているようだった。
姿は見えないが、川の魔物と言われているものだろうか?

何頭いるのだろう。
魚群がいたらあんな感じになるんだろうか?とじっと見ていた。


「よお船旅を楽しんでるか?」
大きな声で、話しかけられる。船長のゴートだ。

セリに向かってだった。

ロードとは、契約した冒険者のリーダーとして話した。
今回は、乗せた客として話す雰囲気を感じたので、
当たり障りなく、楽しんでいて物珍しいと返しておく。

ロードの目つきが鋭くなったが、男が近づいた警戒だった。

機嫌が少々悪くなるが、宥める役のカナンがいないので
顔に出ていた。

セリは少し、疑問に思うだけだったが
船長の方は、顔が動揺にひきつる。

獣人では、魚人族との関係が深いが、独占欲はそれほどない。
独自の文化が形成されているが、コレはない

獣人の中で竜と狼の独占欲の話は、語り草な程なのだ。

ゴートは、力関係を捉えセリに突っかからない事を再度、周知させることにした。
船長命令を使い、“船が沈むと思え”と忠告付ける決まった。


そして、
船の説明をして仲良くなる
敵対意識はない事、友好関係を築きたいとロードの方にアピールが必要だと。

話せば、この子は温厚なようだ。
と胸を撫で下ろした。同時に、


もう少し探りを入れるか。となる。情報は大事だ。
船長でありもあり、商人故の性かもしれない。

「3人なのか?他にメンバーは」

「後3人留守番。それと…」視線を向ければ、
風が動く
「ヴァルトも。」そう言ってフォレストオウルを撫でた。

それは、冒険者の佇まいで。
若手の冒険者として扱うことに決めた。

「魚でも食うか!」
と聞けば、素直に目を輝かせるのが年相応のようで。

若いやつには、世話を焼きたくなる。
妬かれたくはないがと、射殺されそうな庇護者の目に冷や汗だ。

無実だ!下心はないぞ、子どもにな!!と目で言い訳し、
話を進めた。

「もちろん、釣るぞ!」

気合が入ったのか。フォレストオイルが羽を広げる。

「淡白で食べやすい魚が釣れるぞ!」とヴァルトに声をかけている。

このなだらかな地点は、魚を狙う場所らしい。
広いため、すれ違えるという理由もあるためらしい。

そんな説明を聞いていれば、船員たちが釣りを始めた。
投げる場所がわかっているように、狙っている。


「水魔法での探知を使っている」と聞けば、
セリが乗り気になった。

これが後に、空気中の水を使った探知もできるようになる、きっかけだった。


魚影を見るようにと教えられ、
もっと精密に集中する。なんの魚か特徴が分かる。

セリが魚の特徴と、名前を覚えればだが。

釣り人に魚の場所を知らせれば、
おもしろいように獲れる取れる。


海と交わってきた地点に、居た!

セリは、大物を水魔法の球体に閉じ込め獲得した。


その光景に、歓声が上がり

船乗り達は
セリの魔法に魅了され、信奉されたといっても過言ではない状態
になったのだった。
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