108 / 200
III 貿易都市
① お出掛け
しおりを挟む
日もすっかり登り、暖かな日差しが眩しく光る。
早朝の荷物の出入りが落ち着き、街はのんびりした時間帯だ。
「それでは行きましょうか。お嬢様?」
お嬢様と馬車に乗った2人が向かうのは、老舗のチョコレート店。
お嬢様に手を差し出し、乗り込んだ1人と護衛の男が宿を後にした。
「似合い過ぎて怖いな。」という評価を得て、宿で別れた2人に
ロードだけがついていく事にした。
セリは、シュルトに財布を渡され、「好きに買ってきなさいな。」
太っ腹なことを言われ、「2人をよろしくね!」と念を入れられる。
今回の保護者はロードではないのか?
当のロードは、ウィッグを被り目立たない格好というのをしている。
彼の色は、目を惹くしトレードマークだ。それを隠せばなんとかなるそうだ。
このメンバーなら、
財布を持ち、支払いをするなら、従僕風に変身したセリが適任だろう。
セリの服は、キースの物を借りた。
丈が長めのカッチリしたジャケット。サイズは問題ない。
髪は短く見えるようにまとめているのみだ。
物腰が丁寧で、冒険者とは思われないだろう。
堂々としたキースは、
「ボクにかかればこれくらい着こなせる!」とシャツはフリルがつくものの、
パンツ姿の美しい人になった。
髪がロングなだけでも、冒険者とは思われない気がする。
クルクル巻かれた栗毛色。
シュルトのオシャレ着を借り、
上品でボーイッシュな動きのお嬢様が出来上がった。
こうも簡単に変装できたのは、『竜の翼』のメンバーそれぞれに、
変装とまでいかないが目立たない格好が用意してあるからだ。
名のある冒険者パーティとなると有力者に、絡まれることが多いのか。
よく考えなくても、皆、目立つ容姿だった。
シュルトはお洒落だし、キースは色合いと体格で冒険者に絡まれそう。
グスタフとカナンは、体格が良い。
冒険者だと知れるだろう。
ロードはと言うと。
色も目立つけど、動きでわかるかな。ただの街人には見えない。
特徴はあるものの、格好を変えれば、街に溶け込めるんだろう多少は。
そう考えていたセリは自分自身を分かっていない。
性別不明な中性的な顔立ちと服装が、
道行く人の視線を集めるのを意識していないセリだった。
ただ、服装を変えればガラリと印象を変えられる背格好だと分かっている。
店は、混んでいた。
ロードに馬車を探してもらいつつ
店の前でこのまま待つか、どこかに移動するか?相談している数分の間。
「持ち帰れるものにしよう。」と決めた。
このお嬢様と従僕に、
声をかけられることは懸念していなかった。
「お嬢様?俺らが送ってやろうか?」
護衛にきていた冒険者か?
暇そうな人たちだ。
「結構です。
予定がございますので。」従僕風にお断りした。
妥当な役回りだろう。
獣人らしき男が、
「あんたが来れば、お嬢様も来るよな?」
咄嗟に、手首を狙った手を避けたのだが、爪が掠って肌を傷つけた。
(あ…)
じわっと皮膚から血が滲む。
ゾクリッ
突然に、場の気温が下がった感じがした。
早朝の荷物の出入りが落ち着き、街はのんびりした時間帯だ。
「それでは行きましょうか。お嬢様?」
お嬢様と馬車に乗った2人が向かうのは、老舗のチョコレート店。
お嬢様に手を差し出し、乗り込んだ1人と護衛の男が宿を後にした。
「似合い過ぎて怖いな。」という評価を得て、宿で別れた2人に
ロードだけがついていく事にした。
セリは、シュルトに財布を渡され、「好きに買ってきなさいな。」
太っ腹なことを言われ、「2人をよろしくね!」と念を入れられる。
今回の保護者はロードではないのか?
当のロードは、ウィッグを被り目立たない格好というのをしている。
彼の色は、目を惹くしトレードマークだ。それを隠せばなんとかなるそうだ。
このメンバーなら、
財布を持ち、支払いをするなら、従僕風に変身したセリが適任だろう。
セリの服は、キースの物を借りた。
丈が長めのカッチリしたジャケット。サイズは問題ない。
髪は短く見えるようにまとめているのみだ。
物腰が丁寧で、冒険者とは思われないだろう。
堂々としたキースは、
「ボクにかかればこれくらい着こなせる!」とシャツはフリルがつくものの、
パンツ姿の美しい人になった。
髪がロングなだけでも、冒険者とは思われない気がする。
クルクル巻かれた栗毛色。
シュルトのオシャレ着を借り、
上品でボーイッシュな動きのお嬢様が出来上がった。
こうも簡単に変装できたのは、『竜の翼』のメンバーそれぞれに、
変装とまでいかないが目立たない格好が用意してあるからだ。
名のある冒険者パーティとなると有力者に、絡まれることが多いのか。
よく考えなくても、皆、目立つ容姿だった。
シュルトはお洒落だし、キースは色合いと体格で冒険者に絡まれそう。
グスタフとカナンは、体格が良い。
冒険者だと知れるだろう。
ロードはと言うと。
色も目立つけど、動きでわかるかな。ただの街人には見えない。
特徴はあるものの、格好を変えれば、街に溶け込めるんだろう多少は。
そう考えていたセリは自分自身を分かっていない。
性別不明な中性的な顔立ちと服装が、
道行く人の視線を集めるのを意識していないセリだった。
ただ、服装を変えればガラリと印象を変えられる背格好だと分かっている。
店は、混んでいた。
ロードに馬車を探してもらいつつ
店の前でこのまま待つか、どこかに移動するか?相談している数分の間。
「持ち帰れるものにしよう。」と決めた。
このお嬢様と従僕に、
声をかけられることは懸念していなかった。
「お嬢様?俺らが送ってやろうか?」
護衛にきていた冒険者か?
暇そうな人たちだ。
「結構です。
予定がございますので。」従僕風にお断りした。
妥当な役回りだろう。
獣人らしき男が、
「あんたが来れば、お嬢様も来るよな?」
咄嗟に、手首を狙った手を避けたのだが、爪が掠って肌を傷つけた。
(あ…)
じわっと皮膚から血が滲む。
ゾクリッ
突然に、場の気温が下がった感じがした。
1
お気に入りに追加
647
あなたにおすすめの小説
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!
白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
時岡継美
ファンタジー
初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。
侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。
しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?
他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。
誤字脱字報告ありがとうございます!
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
[完結]間違えた国王〜のお陰で幸せライフ送れます。
キャロル
恋愛
国の駒として隣国の王と婚姻する事にになったマリアンヌ王女、王族に生まれたからにはいつかはこんな日が来ると覚悟はしていたが、その相手は獣人……番至上主義の…あの獣人……待てよ、これは逆にラッキーかもしれない。
離宮でスローライフ送れるのでは?うまく行けば…離縁、
窮屈な身分から解放され自由な生活目指して突き進む、美貌と能力だけチートなトンデモ王女の物語
はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる