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III 貿易都市
① お出掛け
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日もすっかり登り、暖かな日差しが眩しく光る。
早朝の荷物の出入りが落ち着き、街はのんびりした時間帯だ。
「それでは行きましょうか。お嬢様?」
お嬢様と馬車に乗った2人が向かうのは、老舗のチョコレート店。
お嬢様に手を差し出し、乗り込んだ1人と護衛の男が宿を後にした。
「似合い過ぎて怖いな。」という評価を得て、宿で別れた2人に
ロードだけがついていく事にした。
セリは、シュルトに財布を渡され、「好きに買ってきなさいな。」
太っ腹なことを言われ、「2人をよろしくね!」と念を入れられる。
今回の保護者はロードではないのか?
当のロードは、ウィッグを被り目立たない格好というのをしている。
彼の色は、目を惹くしトレードマークだ。それを隠せばなんとかなるそうだ。
このメンバーなら、
財布を持ち、支払いをするなら、従僕風に変身したセリが適任だろう。
セリの服は、キースの物を借りた。
丈が長めのカッチリしたジャケット。サイズは問題ない。
髪は短く見えるようにまとめているのみだ。
物腰が丁寧で、冒険者とは思われないだろう。
堂々としたキースは、
「ボクにかかればこれくらい着こなせる!」とシャツはフリルがつくものの、
パンツ姿の美しい人になった。
髪がロングなだけでも、冒険者とは思われない気がする。
クルクル巻かれた栗毛色。
シュルトのオシャレ着を借り、
上品でボーイッシュな動きのお嬢様が出来上がった。
こうも簡単に変装できたのは、『竜の翼』のメンバーそれぞれに、
変装とまでいかないが目立たない格好が用意してあるからだ。
名のある冒険者パーティとなると有力者に、絡まれることが多いのか。
よく考えなくても、皆、目立つ容姿だった。
シュルトはお洒落だし、キースは色合いと体格で冒険者に絡まれそう。
グスタフとカナンは、体格が良い。
冒険者だと知れるだろう。
ロードはと言うと。
色も目立つけど、動きでわかるかな。ただの街人には見えない。
特徴はあるものの、格好を変えれば、街に溶け込めるんだろう多少は。
そう考えていたセリは自分自身を分かっていない。
性別不明な中性的な顔立ちと服装が、
道行く人の視線を集めるのを意識していないセリだった。
ただ、服装を変えればガラリと印象を変えられる背格好だと分かっている。
店は、混んでいた。
ロードに馬車を探してもらいつつ
店の前でこのまま待つか、どこかに移動するか?相談している数分の間。
「持ち帰れるものにしよう。」と決めた。
このお嬢様と従僕に、
声をかけられることは懸念していなかった。
「お嬢様?俺らが送ってやろうか?」
護衛にきていた冒険者か?
暇そうな人たちだ。
「結構です。
予定がございますので。」従僕風にお断りした。
妥当な役回りだろう。
獣人らしき男が、
「あんたが来れば、お嬢様も来るよな?」
咄嗟に、手首を狙った手を避けたのだが、爪が掠って肌を傷つけた。
(あ…)
じわっと皮膚から血が滲む。
ゾクリッ
突然に、場の気温が下がった感じがした。
早朝の荷物の出入りが落ち着き、街はのんびりした時間帯だ。
「それでは行きましょうか。お嬢様?」
お嬢様と馬車に乗った2人が向かうのは、老舗のチョコレート店。
お嬢様に手を差し出し、乗り込んだ1人と護衛の男が宿を後にした。
「似合い過ぎて怖いな。」という評価を得て、宿で別れた2人に
ロードだけがついていく事にした。
セリは、シュルトに財布を渡され、「好きに買ってきなさいな。」
太っ腹なことを言われ、「2人をよろしくね!」と念を入れられる。
今回の保護者はロードではないのか?
当のロードは、ウィッグを被り目立たない格好というのをしている。
彼の色は、目を惹くしトレードマークだ。それを隠せばなんとかなるそうだ。
このメンバーなら、
財布を持ち、支払いをするなら、従僕風に変身したセリが適任だろう。
セリの服は、キースの物を借りた。
丈が長めのカッチリしたジャケット。サイズは問題ない。
髪は短く見えるようにまとめているのみだ。
物腰が丁寧で、冒険者とは思われないだろう。
堂々としたキースは、
「ボクにかかればこれくらい着こなせる!」とシャツはフリルがつくものの、
パンツ姿の美しい人になった。
髪がロングなだけでも、冒険者とは思われない気がする。
クルクル巻かれた栗毛色。
シュルトのオシャレ着を借り、
上品でボーイッシュな動きのお嬢様が出来上がった。
こうも簡単に変装できたのは、『竜の翼』のメンバーそれぞれに、
変装とまでいかないが目立たない格好が用意してあるからだ。
名のある冒険者パーティとなると有力者に、絡まれることが多いのか。
よく考えなくても、皆、目立つ容姿だった。
シュルトはお洒落だし、キースは色合いと体格で冒険者に絡まれそう。
グスタフとカナンは、体格が良い。
冒険者だと知れるだろう。
ロードはと言うと。
色も目立つけど、動きでわかるかな。ただの街人には見えない。
特徴はあるものの、格好を変えれば、街に溶け込めるんだろう多少は。
そう考えていたセリは自分自身を分かっていない。
性別不明な中性的な顔立ちと服装が、
道行く人の視線を集めるのを意識していないセリだった。
ただ、服装を変えればガラリと印象を変えられる背格好だと分かっている。
店は、混んでいた。
ロードに馬車を探してもらいつつ
店の前でこのまま待つか、どこかに移動するか?相談している数分の間。
「持ち帰れるものにしよう。」と決めた。
このお嬢様と従僕に、
声をかけられることは懸念していなかった。
「お嬢様?俺らが送ってやろうか?」
護衛にきていた冒険者か?
暇そうな人たちだ。
「結構です。
予定がございますので。」従僕風にお断りした。
妥当な役回りだろう。
獣人らしき男が、
「あんたが来れば、お嬢様も来るよな?」
咄嗟に、手首を狙った手を避けたのだが、爪が掠って肌を傷つけた。
(あ…)
じわっと皮膚から血が滲む。
ゾクリッ
突然に、場の気温が下がった感じがした。
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