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III 貿易都市

甘い物

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「フゥ
凄い熱視線ね。」

シュルトが暑かったわと言うように呟いた。

同意する。
うん。ちょっと引いた。

このメンバーならしょうがないと思えるけど。
セリは同席の3人を見た。

1番目を惹くのはキース
貴族の子息だと思われているのだろう。
どこの方?素敵!と色めき立っている女の子が多く居た。

優雅な所作のシュルトはホゥとため息と共に、
オシャレな姿はお手本にしたいといったとこれているだろうか。

意外だったのが、ロードへの視線だ。

んー。あの視線は…

『憧れの騎士様』だろうか?
じっとロードを見る。
視線が合うが、観察する。

恵まれた体躯、氷のような艶やかな髪
にこりと笑えば雪解けのように
冷淡な雰囲気から甘やかに変わるのは、

“王子様スマイル”

そんな言葉で表現されるのだろうか?

仲の良いギルドの受付嬢のげんを思い出した。
女の子の憧れとは!
流行りの小説の話や話題を聞いていた日々を思い出す。

懐かしさを感じるより前に、情報量に呆れたが
目の前の標的に、意識を切り替えた。

ケーキより先にきた、

チョコレート。


果物が入ったチョコレートと、
チョコ色ではなく、赤や黄色の艶やかなチョコ。

目新しいという理由で選んでみた。

老舗のチョコレートで有名な店
この貿易の街は
古今東西から物が集まる。

新作
新たな技法
流行の先端

その荒波を物ともせず生き残った店は
伝統と新進気鋭をうまく取り入れて、生き残っている。

上質なチョコを活かす技術、魔道具も取り入れた品質の保持。

果物とチョコの甘さが相乗効果を引き出す
鮮やかな色の中にミルクの入った柔らかい色のチョコ
黄色のチョコは黄色色のチョコ。リモーネのチョコは酸味を感じた。

甘さを落ち着かせるように
紅茶を口に含んだ。

至福。

ホゥ
溜息をつけば、クスっと反応した先には、

ロードの甘い顔だった。

ちょっと胸焼けしそう。
紅茶の2杯目に手を出した。

引き続き、ケーキを食べる。
元々ケーキは出していなかったが、他の店と提携して
時期と数を限定して出しているらしい。

セリはフルーツのタルトを選んだ。
港に集まって来た新鮮な果物。
この時期に採れる果物は、見たことのないもので
色も原色に近い。
南のものだと思われた。

出回らない果物を味わってみたい
どんな味か想像つかずに、口に入れた。

星のような形にフォークを刺すともちりと手応えあり。
柔らかい甘さ。次は、酸っぱい!とルビー色の果物の酸味。
ほんのり甘い生地とクリーム。

果汁が溢れる小さな粒のこれは、紅茶の香り付けに飲んだことのあるものだ
と気づいた。

もとの実の形もわからないものの
華やかなタルトは消えていった。

満足と他の皿を見れば、3つ頼んでいたキースの皿の上から消えるケーキ。
評するなら、甘いものは別腹。

腹におさめた後は

持ち帰りのチョコレートを選んで頼むキースが、
「こっからここ」

数個にしてもう一回来よう。頼めばいい。

って言ってたが、その試しの数も容赦ない。

買い方が、貴族的だ。

ケース買い!??
大量に買うから、後で遣いを出す。

うん。貴族的。
少々呆れながらもチョコが気になる。

買い物を切り上げ、冒険者ギルドへ顔を出すため向かった。
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