【完結済み】番(つがい)と言われましたが、冒険者として精進してます。

BBやっこ

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III 貿易都市

貴族街の店

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門番の立つ場所

ささっと通れた。
貴族のお忍びと思われたのだ。

知らない顔には、詰問をされるので有名なのだが、
門番もお貴族様の機嫌を損ないたくはない。
キースのおかげで最短の時間で通れたのだった。

そんな最短だったと知っているのは、辻馬車を操っている馭者だけで
この壮年と言えそうな男も、乗せた客はお貴族様だと思っている。

長年、人を乗せている者の目はその人物達の格好と人柄を観る。
リラックスした観光の雰囲気、冒険者の格好だが高貴さを隠しきれていない。

和やかな雰囲気で問題ない客と判断し、いつもより
丁寧にゆっくり馬車を走らせた。

そのお陰か、中から高貴な方特有の文句はなく、目的地まで着けたのだった。

「ありがとね」
そう言って上品に舞台にでも出そうな印象の男が、代金を支払う。
坊ちゃん達は、既に老舗のカフェに気が入っているようだ。


目立つ客を乗せたな。話題にのぼりそうな気持ちの良い珍しい上客。
馭者の記憶に残る、道行きになったのだった。

ーーーチョコレートの店

老舗らしく重厚でシンプルな様相だった。
奥はカフェになっていて、おやつ時で席は埋まっている。

その奥から。
女性からの視線がヒシヒシと感じられた。
入って来た4人全員が値踏みされている。

10代後半の2人は
背が高く、細身の身体は羨ましい身体付きで、
1人は、肩にかからない程度に切り揃えられた髪が繊細で麗しく、
目元がキリッとした美形だった。

その横にいる子は1番若いようで、
表情に乏しい凛とした雰囲気で、真面目な性格が滲み出ている。
人を簡単には信じないと言いたげな強気が見えるが、
甘いチョコレートに瞳を輝かせているギャプが可愛い。


その2人を見守るように氷のような色合いの男。
近寄り難く思える身のこなしの守護者だが、
見つめる先は柔らかく、とろけそうだ。

少し後から入って来たのは、舞台役者だと言われても納得の
オシャレで気品のある男だった。

全員が街着ではなく、
旅人、冒険者だろう。


店内は、
『お近づきになれないか?』と探るような目線だった。


店の男は、その4人にテラス席を勧めた。
陽気もよく、日焼けを気にするお嬢様方には勧めなかったのだが、
店の雰囲気を感じ取った結論だった。

これだけ注目されていれば、落ち着いて過ごしていただけないだろう。
他のお客様方にも遠慮していただくための提案を受けてもらったのだった。



温かい日差しに誘われるように、テラス席に着いた。

テラスに移動すれば、目線が切れる。
さりげなく見ているといった体であっても、
冒険者として分かってしまうので居心地が悪い。


それを気にしない!気にかける価値もないと、
魔道具で決められた温度を保てるというガラスケースの前、

セリとキースは並べえられたチョコレートを見て
購入の目星をつけた。

最終的にどれを購入するか話を詰めている。

大量に買うつもりではいるので、後日注文、取りに来ること。
その参考に今日、何個か食べようと決まった。

それプラス、ケーキを頼む。

目線から逃れ
頼んだ紅茶が来て、ホッとひと息つけたのだった。
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