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III 貿易都市
スルー
しおりを挟む貴族を思わせる上等な服装だが、貴族ではないと分かった。
所作がなってないのだ。
貴族なら外に出す前に、徹底的に教育される。
そのカケラも見られない。
商人の娘だと確信した。
ただ、発言は貴族のようだと言えるかもしれない。
「私の物になりなさい!」
お茶をしているセリとキースのところに、挨拶も名乗りもない乱入者。
堂々した発言につい、セリは本音が溢した。
「気持ち悪い」
「生理的に受け付けない」
キースは見る価値もないと視界から、消したいようだ。
セリは、行動にも言動にも呆れ、
勧誘するならせめて手順を弁えろよ。と目で伝えた。
喫茶スペースで本格的な商談をする人たちはいないが、勧誘や
アピールをすることはある。
それでも場に相応しいマナーというものがあるのは、
自明な筈なのに。
いい年した商人の関係者が、ありえないな。
取引相手というよりカモ決定だ。と2人の思考が被っていた。
雰囲気をぶち壊した人物を無視して、
次はどんなケーキを狙うか話を再開するのは、2人にとって当然の流れだった。
怒りと恥を感じているのか、
真っ赤にした女の子を喫茶の給仕をしていた紳士が退場させた。
楽く会話を続ける。
「材料だね。色んなとこから素材がくるから、組み合わせの幅が多くて!
シェフも良いのがいる。フルーツタルトは絶対食べる!」
「美味しそう。…チョコレートが食べたい」
「いいねー。買っといて、そこでケーキを食べるか。」
「日持ちするものも買っとく?クッキーとか。手軽にできないもの」
「材料を買っておいて、生地を焼けば?酒漬けの果物とか!」
「スコーンやクッキーならいけるかも。」
「焼くなら協力するよ?」
魔法で両手の平を前に突き出し、かざすようにファイアーの構えをした。
「じっくり焼ける?」
「・・・たぶん?」
甘味は街で揃えるに限る。
お茶には甘いもの!と心がひとつになっていた2人。
そのためなら、調理をする!
やれるだけやろうという気概のセリと、
シュルトに手伝わせる!と決めているキースだった。
そんな喫茶室の給仕をしきる壮年の男は、成り行きを見ていた。
すぐに騒動は終わってしまったが。
冒険者だと思われる2人。ただ、貴族の出身であるのは間違いないだろう。
動きや対応が、気持ちの良い鷹揚さがある。
給仕をする立場でもスムーズさを感じられるやりやすさ。
そしてあの対応。
傅かれるのを慣れた立場だ。
礼儀知らずのレディに退出いただき。
甘いものをサービスにお出しした。
感謝を伝えてきた若いお二人に愛行を崩したくなったが
顔を引き締め、
お連れ様と部屋に戻って行ったのを見送ったのだった。
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