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Ⅱ-d 森と平原

夜の見張り

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スッと目を開ける
交代の刻だ。

「起きれたな」横に居たロードに、よしよしとばかりに頭を撫でられる。

バサっとテントの入り口があいた。
「セリちゃーん、お~起きてんじゃん。」カナンが呼びに来てくれた。

寝ていたので、少しぼーっとする。

その様子を2人に笑われてしまった。
ロードには、甘い顔ばかり向けられる。

くすぐったい気持ちだった。
まあ、子供扱いなのだろう。

交代にテントの外へ出る。

平原は底冷えがする
冷たい風が通り過ぎた。

空気も冷え冷えとしていて、森とは違った
広い空の星を見る。

森のように遮るものがない平原は、
空が高いように感じる。

少し寂しさを感じた。
ぽつんと取り残されたようで。

弱く光る星を見ようと目を細める。

どれくらい飛べば、星に届くんだろうか。
太陽みたいに、近づけば熱いだろうか?星のが掴みやすそうだ。

…と見慣れない景色を見ていれば

「寒くないか?」とくっついてくるロード(毛布付き)。
人肌の接点は、小さい子ほどの熱量はないものの
なんとなくの肌感が優しい。

「ありがとう。」

魔道具の様子を確認してから、見えるところに座った。

この魔道具で、魔物除けや結界の役割をするらしい。

団体での旅で重宝する、高級な結界の魔道具だが
魔物を撃退する力はない。
見張りは必須だ。

各段に楽だけど。

神経質にならずに済む。


「肩、使ってくれないか?」
珍しく後ろに座らず、
横に座ったロードにそう言われ、

(…まあ、いっか)とちょこんと頭をもたれさせる。

固さのある腕に、座りの良い位置へ頭を置く。

異変も気配もなく、キャンプの近くの炎から遠ざかる程、闇が続いている。

星の光はあっても、闇の正体はわからない。
月は、雲に隠れたのか何処だろうか。


うとっと来た眠気をやり過ごし、あたりを警戒する。


静かだ。

起きている魔物でも、この静寂を守っているのだろうか。

遠吠えが聞こえた。
「あっちだ。かなり遠くだな」

貿易都市の方角から西だ。

「後2日で、宿が取れるな。ベッドで寝られるぞ」
「テントも快適だった」

嘘じゃなく、快適なテントだ。
寒くないし、守りも強固。

「俺とカナンが居て、狭かっただろ?」とロードは笑うが、

「孤児院だと上掛けの中に入ってくる子がいたから。」

寝れないと行ってきたり、黙って入り込んだりと結局、何人かで寝ることになる。
潰さないように、結構気を使ってた。

「男か?」と聞かれたので、
「女の子たち。男女分かれているから。」

「…そうか」という小さいな言葉が空気に溶けたように消えた。


居心地の良い場所に慣れないようにしないと。
交代の刻まで、自分の今後について考えに耽った。
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