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II-a 王都に向う旅

デート

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妓館に近づいているな。

ここら辺は近づかない。
自分が寄れば、絡まれる。かなりの高確率で。

酔っ払いや荒れた人間、冒険者もいるが
女や子どもが近づく場所じゃない。

女性でも仕事の人か、その筋の人
がいるくらいだろう。それも護衛付きで。

そんな危ない地域が近いので、少々警戒している。

ロードの顔を伺うと
特に緊張もなく、機嫌の良さそうな表情かお

歩き慣れているのか。
当然か。高レベルの冒険者で腕は立つし、この体格だ

面倒ごとも問題なく払えるのだろう。

ビクビク1人で動く必要がないんだ。
自分と違って。


卑屈になるな
ふぅ息を吐く。


自分の持っているもので戦うこと。
無い物ねだりも後悔も使えないなら必要ないものだ。

気持ちを切り替えて
はじめてきた場所を観察する


ジロジロ見られてるなあ。
貴族のお忍び風の格好では浮くか。

絡まれる前によくもらう視線だ。浴びたくないが反応しないように
通り過ぎる。

少し歩くのが速いが、今は助かる。
視線を切るように入り込んだ路地を少し進んで、

「ここだ」悪戯っ子のような顔で言われた。
酒場の裏口と思われる場所。

「よう!」と入って行くロードの横で店を見渡す。

倉庫を改装した店というには手狭な場所。
上品なバーカウンターと机と椅子の席が2つ。

奥に一室くらいありそうな
そして、お酒の保管箱。

確かに、隠れ家的なバー。

「酒も良いけど、飯も旨いんだ。」と笑う男に
席へ案内されて、椅子に座るよう促された。

バーカウンターの席に隣同士で座る。

…そういえば、
デートの定番ってバーもあったな。
そうか。デートか。

ムードのある灯り
近い距離に、嬉しそうな男が隣にいる。


誰かの日常ってこういうものか。
いや、今は自分の時間だ。


“セリ”と呼ばれる自分がここにいる。

そのことに不思議な感覚があるが、
お腹減ったなと現実的な欲求が頭にもたげた。

「軽い、飲みやすいのを頼む」
食前酒だろう。酒は普段飲まないがアルコールに耐性はある。

早い段階で赤くなるが、酔いはそのもっと後。
酔い潰れるフリができる。酒の梯子を断るのに便利。

普段なら、嫌いではないが頼まないものだ。

酒屋で出される酒はどんなものか。
興味がある。ここのマスターはひと言も発さず、流れるような動きでお酒を作り出す。

カチャ…カチャ……とガラスの当たる音が心地よく空間を作る

綺麗なブルーと明るいイエローのカクテルが出された。
「俺たちのこれからに…」

軽く持ち上げて、「「乾杯」」

爽やかな味と甘めでアルコール度が控えめ。
とても飲みやすい酒。

ほぅと美味しさにひと息つけば
口に合うようで良かったと言いそうな目がこちらに向いている。


わかった。この気まずさが、“デート”だ。

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